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「魅惑の心理」マガジンvol.179(パンダ先生の政治家の失敗から学ぶ、日常と家庭の行動経済学)

政府は国民のためにと経済施策を発表するのだが、どうも「これは効いたぞ!」「大変助かりました」と国民からの声をほとんど聞いたことがない。発表するたびにむしろ批判を浴びる。強引に実施しても国民は喜ぶどころか、不快に思うケースが多い。このずれはなんなのか。当然、自分の票欲しさに特定の業界を支援したり、政界の重鎮たちのリクエストに応えていかなくてはいけないから、視点は国民ではなくて、予算は政界や特定の一部が喜ぶものになりがちだ。残された少ない予算を国民全体のために使おうとするので、必然的にお金がない。当然といえば当然の流れかもしれない。

 しかし、それにしても何かがずれている。このずれは「フォールス・コンセンサス効果」という心理効果と、行動経済でよく語られる「コントロールの誤謬」というもので説明がつく。フォールス・コンセンサスは「自分が思ったことは、多くの人も合意してくれるだろうから正しい」と思い込む現象である。政治家たちの価値観で作った施策で、国民の多くが喜んでくれると錯覚してしまうのである。また、コントロールの誤謬は、自分が実際に及ぼせる以上に、他者に絶大な影響を与えコントロールできると思う錯覚である。私が見ていると、政治家、官僚、専門家たちはこうしたトラップに簡単に陥る。人のトップに立つ人間は経済学だけではなく、行動経済学と心理学を学ぶほうがよいのではないか。

私たちも行動経済学を学んで、そうしたトラップに負けないように経済活動を理解していきたい。経済学というと「難しいもの」と思われているかもしれないが、実は「貯金」「買い物」「給料」などのかなり身近なものも扱う。経済学で語られる人は完璧で間違いや思い違いをしないが、実際のリアル世界ではそんなことはない。雰囲気に流されて間違った買い物もするし、計画的に貯金もなかなかできないのが人間である。ジャケットに惹かれて買うジャケ買いなどは行動経済では説明がつく。ご意見番の出川氏が「これがリアルだから」といつも言うように、机上論ではなく業界、現場でのリアルを知らないと機能しないのである。
 
行動経済学は人の「心理」「行動パターン」を研究して導きだされた経済学である。心理学の要素が入離、完全理論とは違い面白い経済学なのだ。そこで、私たち経済初心者の人間に向けて、行動経済学の研究者であるパンダ先生の3コマ漫画を加え、行動経済学を簡潔に簡単にスパっと解説してもらおうと思う。

では早速、身近なところから考えてみよう。みなさんの日頃の行動について振り返ってみてほしい。みなさんはランチや友人と行くカフェなど、ついつい同じ店に行ってしまわないだろうか? 世の中にはたくさんの店があるというのに、なぜそんな行動をとってしまうのか知っているだろうか?

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