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【絵本日記】もじくいアリクイ

ある日、アリクイとタヌキがいっしょに森のこみちをあるいていると、ふとアリクイが言った。

「ぼく、さいきん目が悪くなったみたいなんだ」

「それは、たいへん!あそこに書いてあるかんばんは読めるかい?」

タヌキはそう言って、とおくのかんばんをゆびさした。
アリクイは目をほそめながら、

「うん…ぼんやりと見えるよ。フクロウやっきょくだよね?」

「そう!あれが見えるならだいじょうぶだよ」

アリクイはホッとした顔で、なにやら口をモグモグさせながらあるきつづけた。
しばらくすると、アリクイがまた言った。

「ぼく、やっぱり目がわるくなってる気がする」

「どうして?さっき文字がちゃんと読めたじゃないか。気のせいだよ」

「だってあそこの木に書いてある、小さい文字が見えないよ」

アリクイは、もっともっと遠い木をゆびさして言った。
タヌキは目をグッと細めた。

「アリクイくん。
 ぼくもさすがにあの文字は読めないよ。
もし、気になるようであれば、タカのおいしゃさんに行ったらいいんじゃないかな?」

「そっか。そうだね。そうしてみるよ」


「ブツブツ………」

しばらくすると、アリクイはなにやらブツブツといいはじめた。

「ブツブツ………」

タヌキはよーく耳をすませてみた。

「あそこに書いてあるのは、カエルやっきょく。
 あそこに書いてあるのは、カメムシぶっけん。
 あそこに書いてあるのは、リスようふくてん。
 あぁ、どうしよう。
 なんだか気持ちわるくなってきた……」

なんと、アリクイは目に入る全ての文字を声にだし、口をモグモグさせていたのだ。
タヌキはたまらず、アリクイに言った。

「文字のたべすぎだよ!
  アリクイくん、きょうは文字のこれ以上は
  たべるのきんし!」

アリクイは目をまんまるにしながら、タヌキを見た。

「でも、タヌキくん。
  気になって、気になって。
  前を向いてたら、文字がとびこんでくるんだ」

「だったら、ずっと下をむいてたらいいよ。
  ぼくが前を見ていてあげるから、下を見てな」

タヌキはそう言って、アリクイのくびねっこをギュッとにぎり、前が見えないようにした。
しばらく歩いていると、アリクイが大きな声でさけんだ。

「タヌキくん、たいへん!!」
「どうしたの!?」

タヌキはあわてて、アリクイをのぞきこんだ。

「見て。下をむいても、文字があるよ!」

そう言ったしせんの先には、『とまれ』と書かれたふだが、地面に置かれていた。

タヌキはあきれながらアリクイを見ると、アリクイは、まんぞくげに、口をもぐもぐさせながら、文字をたべていた。

「アリクイくん。
  明日、いっしょにめいしゃさんに行こうね」

「うん!そうだね。そうするよ!」

タヌキとアリクイは、なかよく前を見てあるきだした。


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