会場探し1
サマリ
会場探しの開始時期は2時点ある
会場費は数万円から数百万円までの幅がある
会場はアクセス優先で検討する
1. 会場探しの背景
多くの会社さんは、株主総会の開催場所(会場)を事前に確保する。株主さんに株主総会の会場にお越しいただいて、対面で開催するためだ。この対面開催方式のことを実開催(リアル開催)という。
株主総会を実開催する会社さんは依然として多い。東京証券取引所の調査によると、開催方法を実開催のみとする会社さんは、81.7%だ(※1)。今では、株主総会をオンラインで開催するバーチャル株主総会の実施が可能となったものの、ハードルは多い。株主さん本人以外の者による参加や、通信途絶を理由とする株主総会決議取消訴訟のリスクがゼロにならないといった法的な懸念のほか、配信費用や配信設定などの実務的な負担が存在する。信託銀行によると、ZoomやYouTubeなどを使用し、自社で配信を行うことによって、配信費用などの負担をできるだけ削減する会社さんもいるとのことだが、まだ少数派のようである。
こうした背景を踏まえて、今回は、株主総会の会場探しのポイント(前半)3点を書く。
2. 会場探しの開始時期
3月頃からと、6月頃からだ。これらの時期は多くの会社さんの定時株主総会の開催時期と関係する。12月決算の会社さんは3月に、3月決算の会社さんは6月に、定時株主総会を開催する。
ここで抑えておくべき重要なポイントは、会場側に予約ルールがあることだ。ホテルや貸会議室は、一度、株主総会のような定例行事やイベントが行われると、前年の会場利用者を優先する。前年(来年に会場を使用したいなら、今年)に定例行事等で利用されていないかは、会場探しのときに必ず確認すべきである。もし、他の会社さんが前年に利用している場合、その会場を確保することの優先順位を落とすか、前年利用者が次年も利用するか期限を定めて確認してほしいと会場側に申し入れておくか、いずれかの対応を行うのが懸命である。
3. 社内予算の確認
会場の質は社内予算で決まる。潤沢な資金があり、会場の品格や雰囲気を重んじる会社さんは、会場費に数百万円を費やすことがある。他方、会場にこだわらず、株主さんと対話することに重きを置く会社さんは、会場費を数万円から数十万円までに抑えることもある。
会場費を予算化する上での考慮事項は、次の3点である。
(1) 株主さんの出席率
多くの株主さんは会場に来ない。信託銀行の肌感覚によると、2020年頃までは総株主数の1%から4%程度、新型コロナウイルスが流行した後は総株主数の0.4%から0.5%程度にとどまり、流行前の水準には戻っていないとのこと。総株主数が2,000名ほどの会社さんの場合、出席者は10名ほどになる計算だ。
(2) 株主総会の開催時間
60分に収めることは十分に可能である。会社さんでコントロールできるパートが大部分を占めるからだ。信託銀行が会社さんから得たアンケート回答によると、平均開催時間は40分から50分程度とのこと。また、信託銀行の肌感覚によると、開催時間のうち、事業報告や決議事項の説明など会社さんが話すパートに80%から90%、株主さんとの質疑応答パートに10%から20%が費やされる。開催前の準備時間と、開催後の撤収時間に、バッファを見て3時間程度と見積もっておけば、概ね問題ない。
(3) 会場の雰囲気
株主さんが抱く印象に影響を与える。どのような印象を株主さんに持ってもらいたいか、経営陣に事前に確認しておこう。会場に対する経営陣の好みもあるので、併せて確認することをお勧めする。
4. 会場の場所
アクセスの良好な場所を優先的に検討するのがよい。会場への案内や会場受付を担当する中で寄せられる苦情の多くが「会場のわかりにくさ」と「最寄り駅からの遠さ」だからだ。
これらのうち、「最寄り駅からの遠さ」には2つの問題が含まれる。距離的な問題と、心理的な問題である。
距離的な問題は健脚の方が3分で行けるところが、そうでない方には2倍の6分かかるとする。後者の方から「開催時刻にちょうど間に合うように最寄り駅に付いて、招集通知には3分で到着できると書いてあったのに、6分かかってやっと到着できる距離だったじゃないか、開催時刻に間に合わなかったことの責任をどのように取るのか」と言われる。会場側が用意してくれる、最寄り駅から会場までの案内図は文字どおり受け取ってはいけないことがあるという良い教訓である。
心理的な問題は雨天時に顕在化する。単に雨に濡れたくないのだ。最寄り駅と会場とが地下通路で直結しているか、最寄り駅から会場までの間に雨に濡れないところがあるか、といった視点で会場を探すのもあり得る選択肢である。
参考資料
※1 東京証券取引所 上場部「2024年3月期決算会社の 定時株主総会の動向について」
次回は、株主総会の会場探しのポイント(後半)3点を書く。
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