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私がイスラム教徒を助ける理由②起業を決めて感じたのは「無駄な経験なんてない」ということ

ドバイのエミレーツ航空では結果的に10年以上勤務した。
その間日本との行き来が何度もあったとはいえ、中東の国に独身女性が10年も住んだというのは結構すごいことだなと今では思う。


時はコロナ禍。ドバイを離れ日本に帰国し、結婚した。
最初の数ヶ月間は日本での新しい生活、10年以上のフライト生活で酷使してきた体を休めるのにはぴったりだった。

でもそれまで忙しく世界を飛び回っていた私にとっては
ロックダウンという世界中が移動を自粛する世界は、数ヶ月後もすると味気がないものになってきた。

そしてじわじわと湧いてきたのが、CAという仕事を辞めて「私は何者でもない」「どこにも帰属していない」という焦燥感だった。

向いていなかった事務のお仕事

「とりあえず」と、近所の経理事務のアルバイトを始めることとなった。パソコンの前でひたすら領収書を打ち込む。それまでのCAの生活とは正反対だ。

正直私には、この仕事は全く向いていなかった。でもこの仕事が私に起業を決めさせたのだ。

事務職は全く向いてませんでした

社長は同年代の男性だった。上司ではあるけれど、周りに起業している人がいなかった私にとってはとても面白い人だった。

また領収書を打ち込むことで、一つの会社がどのように営業をして収益を得て、従業員に還元しているのか、税金を処理しているのか。
それまでただの一社会人だった私には全く知らなかった社会の流れがなんとなくわかるようになったのだ

そして転機が訪れた。

これまた「なんとなく」で始めていた個人事業の英語講師。ここで担当していた生徒さんが女性社長であり、彼女に、

「あなたは会社を起こして何かを始めるべき!」と強く勧められたのだ。

私が社長に??

今の日本では会社を始めて社長になるなんてとても簡単なことだ。
もちろんそれを軌道に乗せて、転ばないように継続するの難しいことだけれど、社長になるだけなら誰でもできる。

幸いにも結婚して夫がそれなりに固い仕事に就いている(医師)私は食い扶持に困ることもなく、(当時は)子供もいない。
経理事務所でなんとなく経営の流れも学んだ。

向いていないと思った経理事務のお仕事だけど、結果的にこの経験が自分が起業する原動力となったのだ。

世の中には無駄な経験なんて何もないんだな
と過去を振り返ると感じる。

でも起業して何するの?

起業で重要なのは、会社を起こして社会にどんな貢献をしていくのか、だ。

個人事業主として英語を教えていても、時給でもらう仕事にはアッパーがある。それでは苦しいだけだ。
固定費がかかったり店舗を持ったり、人を雇ったりするのも嫌だ。ストレスになることは避けたい。
初期投資もかけたくない。
将来的にはいつでもどこでも(外国含む)働ける仕事がいい。
何よりも、自分の今までの経験を活かせる仕事にしたい。

そんなわがままな要望だけをいくつも持っていた私には、あまり選択肢はなかった。

「そうだ、食の制限がある訪日観光者。ドバイに住んでいた経験を生かして、日本に来るムスリムを助けるための旅行会社を設立しよう」

と思いつくのにそんなに時間はかからなかった。

法人それとも個人事業?行動し続ける環境に自分を置くために

旅行会社設立にはいくつかの条件がある。

まずは日本政府が定める十分な資金力を持っていること。これはCA時代の貯金からなんとかなりそうだ。

問題だったのは国家資格を持っている人が事務所に必要だという制約だった。当然私は持っていない。

この国家資格・旅行業務取扱管理者試験
“国内“のみを取り扱える資格と、海外旅行も取り扱える“総合“という上位資格があるのだが、両試験ともに9月と10月、年に一度ずつしか行われないのだ。

この時ちょうど12月。試験を受けて合格し、事務所を開くには最低でも1年という時間がかかる。

思ったことは即行動派の私にとって、このタイムロスは痛いもののように感じた。
なんでもすぐに結果を出したい。コツコツ続けるなんて苦手だ。

そんな私が試験を受けるためだけに1年間も耐えられるのか?

でも時はちょうどコロナ禍。
インバウンドはほぼ完全にストップし、旅行会社を開いたところですぐにお客様が来るような状態ではない。

これは長い目でやっていくしかないぞ。
そのためには手続きや税金申請が面倒くさいけれど、個人事業主ではなく、法人を設立するべきだぞ、とやっと決心することができた。

売上が上がってから法人を設立する会社がほとんどだろうが、
私は自分を行動し続ける環境に置くために、逃げられないように法人を作った

これは正解だったと今では思う。

国家資格受験まで

このタイムロスと思われる時間では、とりあえず思いつく限りのことを行なった。

お客さんが呼べるような環境づくりのためにとウェブサイトを作ったり、日本のムスリムの旅行の現状を勉強しに沖縄や名古屋、ドバイに行ったりに時間を使った。

たくさんの人が話を聞いてくれた。なんの実績もない私の話に耳を傾けてくれた方達には今でも感謝しても仕切れない。

そして同時に妊娠が判明した。

誕生予定は国家資格の合格発表から3ヶ月後。
生まれてくるまでにちょうど旅行業の許認可を得て会社をスタートできるかどうかというギリギリのタイミングだった。

全てを詰め込んだ結果、国家資格は一発で合格しなければならなくなった。

旅行業務取扱管理者責任者試験は5〜10%の合格率だ(総合)

試験結果は?

私は後に引けなくなると力を発揮できる人間だ。

会社を設立した+妊娠したという状況のおかげで結果的には勉強を続けることができ、国内・総合の両方ともの試験を一発で合格することができた。

総合の方が難しくはあるが、世界中を旅していた(108カ国渡航)+英語で仕事をしていた私にとっては総合試験の方がリラックスして受けられたように思う。
(国内で合格判定が出ていたのもあるけれど)

いずれにせよ自分自身が試験に通ることで人を雇わず、自分1人の力で旅行会社を始める準備が整った。
旅行業の許認可を得られたのは、息子が生まれるたった3週間前のことだった。

この時すでに起業を決めて1年。
コロナ禍による旅への制限も少し緩くなってきている時だった。

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