まちこのGB 《第1章の9,10》 新人よりも定年がしっくりくる男
【1-9】 新人よりも定年がしっくりくる男
真知子は朝霞の弱点を熟知した上で、対策を考えていた。
ポイントは二つ、高さそのものを克服するのか、もしくは手汗をいかに抑えるかだ。
朝霞は今頃、バンドのメンバーと練習に打ち込んでいるはずだ。ならば自分もそれに見合う努力をするのみだ。
誰もいないオフィスで一人、真知子がネットサーフィンをしていると耳慣れぬ声がした。
「お疲れさん」
顔を上げると老齢の男性が親しげに笑いかけてきた。
男は珍しげに社内を見回すと、真知子