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世界史漫才01:古代オリエント編

 微苦:どうも、微苦笑問題です。
 苦:時代順ということで、今回は古代オリエントです。
 微:えっ、人形というか、なんとかドールの話するの?
 苦:それは東京に本社があるオリエント工業!! 高校生相手にそんな話するわけねえだろ! しかも創業は1977年だからな。古代のエジプトからイランにかけての最初の文明ができた頃の話です。
 微:妙に詳しそうだけど、薄目で見といてやるわ。
 苦:なんだよ、その上から目線は。まあ、日本やアメリカではオリエントとまとめてますが、ヨーロッパではアッシリア学とエジプト学に分けられています。楔形文字とヒエログリフ対応ですね。略奪文化財は大英博物館でもルーヴル美術館でもエジプトの間とアッシリアの間に分けられています。
 微:なんで日本はまとめてオリエントなんだ?
 苦:新参者で協力しないと存在を認められない、また「イスラーム以前」とイメージしやすかったんだと思います。まあ欧米の大学ではユダヤ教絡みでヘブライ学として独立させているところもあります。
 微:まあ日本の場合、かつて皇族がトップだったから口出しできなかったわな。
 苦:京都にも角田先生が君臨した古代学協会もありましたしね。まあ、ややこしいです。ですが、人類の文明の発生に関わるだけでなく、北アフリカ、ササン朝ペルシアに及ぶイランや古代地中海世界にも関連しますんで、オリエントという大きい括りは便利だと思います。
 微:日本会議というか自民党みたいなもんだな。
 苦:別に虚偽意識としてのイデオロギー団体でも選挙互助会でもありません。研究者と道楽者の集団です。
 微:それでオリエント工業なのか、納得!
 苦:そこから離れろよ、もういい加減! しかし、空間的にも広い上に時間軸も4000年くらいありますから大変です。シュメール人に始まって色んな民族や語族が現れては消えていきますから。
 微:とにかく、出入りが激しいもんだから世界史選択者はここで「しくじった!」って思うよな。初めて聞くカタカナ民族が突然現れたと思ったら、すぐ滅ぼされて次の民族とか王朝とか。
 苦:いや、本当にそうです。しかも考古学的発見や古代言語の研究によって昨日までの正しい知識が誤りになりますから。
 微:新登場の民族は、きちんとメソポタミアにやってきたら名刺交換するとか、壁に「○○参上!!」とかスプレーで落書きしてくれないとな。
 苦:20世紀の暴走族というか珍走団じゃねえよ!! でも文字の話が出たんで、文字文明の定義を青銅器と文字の発明、都市の成立とすると、それに最初に当てはまるのがユーフラテス川河口近くに都市国家ウルクをつくったシュメール人です。
 微:えっ、ケムール人?
 苦:昭和の白黒テレビ時代のボケは止めてくれ。今は21世紀で令和だよ!
 微:その末裔が日本で外国語の意識高い系雑誌や本を出しているアルクを設立したんだな。
 苦:全く関係ありません。キミのボケくらい唐突すぎて、民族というか語族系統が不明です。シュメール人はユーフラテス川中流にいたんですが、下流域に移動し文明を生み出します。
 微:5000年前にも竹中平蔵みたいに、中流層を破壊し、下層に追いやって儲ける鬼畜なやつがいたんだな。いやあ、メソポタミアに淡路島がなくて良かった。
 苦:社会層の中流・下流じゃねえよ! ちなみにシュメールは自称ではなく、最初のメソポタミア統一王国となったアッカド側の呼称です。常に意識せざるを得ない存在だったと。近年は古代インダス文明との交易と文化的交流も確認されていて、それがシュメール人の移動を促進した可能性が高いです。ポランニーが言うように交易は近くではなく最も遠いところから始まった、最も遠いところにあるものが権力の威信財となったと考えれば自然です。
 微:灌漑農業説はどうなるんだ?
 苦:確かに大河下流は肥沃な土壌が堆積しているんですが、それを活用するには精密な測量技術とそれを水路といったインフラに落とし込む土木技術が不可欠です。日本の弥生初期の水田遺跡は川の中流なんですね。河口近くを干拓できるようになったのは江戸時代から。つまり築城技術の高度化を河川工事に応用できて初めて可能なんです。ですから都市国家あるいは港湾建設が土木工事や測量技術を高度化させ、それが下流域での灌漑農業に応用されたと考えるべきです。
 微:なるほど。傾斜がはっきりしているなら素人でも用水路はすぐ作れるが、利益の用水路は見えたらまずいので随意契約とか子会社名義で見えなくすると。電通やパソナみたいに。
 苦:余計な喩えはいいよ、もう! 交易重視で都市国家成立を考えると、メソポタミア文明初期はペルシア湾近くに「中枢」ができることが理解できます。
 微:AKB的に言うと「センター」だな。
 苦:意味が違うし、総選挙もありません!! メソポタミアの都市国家を統合する権力と道路網が形成されると、ユーフラテス川中流のバビロンが「中枢」になり、バビロンを首都とする古代王国も出現可能になったと。大河は農業用水というより物資輸送路と考えるべきです。そう考えると、中国の黄河文明が中流域から下流域に拡大したことも理解できます。また交易説で考えると殷王朝に参加した邑の分布が黄河中流まで、もっとつっこんで言うと洛陽西の難所までしかないのは示唆的です。
 微:話が脱線してるぞ。せめてメソポタミアに戻せよ。そんなに生産性がないと杉田水脈に攻撃されるぞ。
 苦:失礼しました。ですが麦が栽培植物化され、陶器が発明されたのは西アジアという点ではほぼ研究者は一致しています。黄河文明もメソポタミアとの関係で考える必要があると言いたかったんです。
 微:しかしメソポタミアになんで東西南北から住所不定の集団が次々とやってくるんだ? 大阪の西成区みないなもんか? それともメソポタミアのコンビニのゴミ箱には鍵がかかっていなかったのか?
 苦:全く関係ありません。コンビニも、フードロス・ゼロ運動もないし、移民食堂もありませんから。
 微:中には関東地方の市役所から渡された大阪市内行き片道切符を持った連中がいたりな。
 苦:しつこいよ! ホームレスの生活保護申請でもないし、大阪片道切符切符でもねえよ! まあ、開放的な地形で、乾燥気候に慣れた民族には移住しやすかったでしょう。それと現代の東京やバンコクなどの一極集中と同じでしょうね。突出した技術・情報・産業があるとそこに人が群がってくる。
 微:それで入国管理局の収容施設として巨大なバビルの塔が建設しようとしたけど、移民を使って建設したもんだから、言葉が通じずに途中で崩壊したと。
 苦:途中でヤハヴェが通じなくしたんだよ! 「世界システム論」的に解釈してもいいです。最初の中核としてウルクができ、メガロポリス的にウルやラガシュに拡大する。その周囲に食糧や労働力を提供する半周辺的な都市国家群が現れ、遠い周辺は戦争地帯で捕虜が奴隷を提供し、遠隔地商人がシステム外の世界から威信財をもたらす。都市国家間分業として古代の「世界経済」は栄えたと。
 微:じゃあ、なぜ王国や帝国が出てくるんだ?
 苦:古代人は神の戦争を人間が代行しているものと理解していましたから宗教が前面に出るとそうなるかもしれませんが、おそらく違うと思います。日本の「本地垂迹」のように逃げ道はありますから。
 微:姿や呼び名は違えど実体は同じだと。
 苦:おそらくは中枢から隔たった希少資源産地を掌握する欲望に駆られ、そこと中枢を結ぶ形で、つまり「点と線」の集積として領域国家に見える王国や帝国が現れたと。ローマの支配を表現した「すべての道はローマに通ず」「分割して統治せよ」も、点としての都市国家と線としての道路を前提にしていますからね。しかし、神の戦争という観念が神々の和合として表現されるとパンテオンになる。
 微:要するに蜘蛛の巣というか網タイツみたいなもんだと。
 苦:喩えは下品ですが、そんなもんでしょう。念押しをしておくと、20世紀の殲滅戦のイメージで近世までの戦争を理解してはいけません。戦争最大の利益は高価な商品たる奴隷の獲得と、それまでにあった交易システムの利潤の横取りであって、インフラ破壊や敵の殺戮が目的ではありません。特に交易については13世紀のモンゴル帝国のように各交易システムの接続や拡張を目的にしています。
 微:M&AやTOBによる企業買収による巨大化みたいなもんか?
 苦:はい、ウォルマートによるアメリカ地域経済破壊とは違います。ですからアッカド王国→バビロン第一王朝→ミタンニやヒッタイトなどのインド=ヨーロッパ語族の移動・定住→アッシリア帝国→リディア・メディア・新バビロニア・エジプト末期王朝の四分裂→アケメネス朝ペルシア帝国→アレクサンドロス帝国→ヘレニズム3国→パルティア王国とバクトリア→ササン朝ペルシア帝国と色んな民族が出ては消えていますが、最上位の民族というか語族が交替し、交易システムが洗練されていくだけと理解した方がいいですね。20世紀末にもソ連消滅は起きましたが、その住民は消滅していません。
 微:プーチンに不都合な人間は消されたけどね。
 苦:それは現在進行形です。まあ、余計な人間は処分されたでしょうけど。話を戻すと、たまに洗練したつもりが破壊作用をもたらしたアッシリアなんて例もありますが。
 微:「世界で最も残酷な民族」というあだ名はかわいそうだな。
 苦:やってることは第2次世界大戦後のソ連や中国と同じなんですけどね。アッシリアがやろうとしたことを見事に洗練したのはアケメネス朝ペルシア帝国です。「餅は餅屋」式に支配下に入った民族に最も得意なことをやらせ、輸送・流通にかかるコストを減らし、アメリカ軍のような機動的な軍隊を維持して。「帝国と自治」と呼べるような効率的支配は見事です。
 微:それをアレクサンドロスというバカな兄ちゃんが破壊したと。
 苦:ですから話は前後しますが、「海の民」侵入後、強大な世界帝国が衰退した後に、「どの権力にも服さない」トリックスター的に遠隔地交易で活躍するアラム人やフェニキア人が「世界経済的な力」を持つようになるわけです。しかし強大な政治的な力が現れると、その内部に入って勢力を温存する。それが帝国の復元力となるのです。現代ならアメリカのユダヤ系資本が良い例です。
 微:ゴールドマン・サックスみたいなもんだな。
 苦:私が一番言いたいのは、古代に生まれたもので21世紀にもその価値を失っていないものは多いというか、時空を超えた普遍性を持つものが古代に現れた事実ですね。宗教、文字もそうですが、家畜の意義はもっと強調していい。
 微:それで日本は社畜が滅んだ後、非正規社員という奴隷制の価値を再発見したんだな。
 苦:奴隷は死なせたら大損なんでこき使うけど大事にされたんだよ。21世紀日本では使い捨てるために移民まで受け入れてるだろ!!!  (ペシッ!)

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