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世界史漫才再構築版09:孔子編
苦:今回は儒家の祖孔子です。
微:それで今回は特別に神戸南京町から中継しています。
苦:関テレじゃないです。中国では「万世師表」、「いつの世においても師」とされています。
微:これでソクラテス、釈迦と合わせて世界三聖というか思想の枢軸時代を制覇したわけだ。
苦:その言い方、○洋大姫路っぽくて、ちょっとね。いや、やっと漢字の世界にたどり着いて、ほっとしてます。
微:漢字苦手なくせによく言うよ。
苦:いえ、読めない楔形文字やヒエログリフの世界を話す時は、どうしても疚しさがありましたから。こう見えて、良心的というか小心というか。
微:「見てきたように嘘を言う」歴史担当者の気概はどこに行った!! この軟弱者が!!
苦:なんで説教されるんだよ、全く。孔子は名は丘、子は「先生」の意味で、本名ではありません。春秋末期の前551年に魯国昌平郷辺境の陬邑で生まれました。
微:その時代の日本なんて良くて弥生時代で、もっと辺境だよ。色んな意味で。
苦:昌平とは「太平を盛んにする」という意味、邑は殷王朝の時代は国家でもありましたが、この頃は大きな集落ですね。現在は山東省曲阜市になります。
微:話変わるけど、何年か前にカラオケ行って「ドナドナ」歌ったんだ。
苦:話が飛びすぎじゃないですか?
微:そしたら画面のテロップに「♪かわいい孔子 売られてゆくよ」って誤変換が不意打ちで登場したもんで。せっかく楽しい雰囲気を破壊しようとしたのに盛り上がってしまってな、残念!
苦:しかも特別価格で刀銭二貫文だったりねって、こっちまでボケてる場合じゃないよ!! そんなことまでしなくても、飲食業界は「孔子のカツレツ」を売るくらい追い込まれてますから。
微:そうだな、世界中の孔子学院の中国人学生のフリした警官に殴られまくるよな。
苦:また全世界に、そして京都にある私大にケンカを売るようなことを。孔子はまだ葬儀集団としての原儒に飛び込み、宗教としての儒教を体系化し、学問としての儒学の土台を作りました。
微:どうやったら、葬儀屋から学問に到達するんだ?
苦:祖先崇拝をきちんとやれる人が立派な人であり、民を導く者にふさわしい人です。その徳を身につければ誰でも地域の指導者や官僚になれる学問として確立したのは朱子学、朱熹です。
微:江戸時代の武士も朱子学を幕府に反抗して勉強してたよな。
苦:「反抗」ではなく「藩校」です。オマエ、カラオケの誤変換から、今回は文字化しないとわからないボケでが暴走しようと思ってるだろ?
微:しかしなんだな、生徒全員が日本刀を持っている教室で、よく生徒による教師殺害事件が起きなかったもんだな。「こんな教師の話なんて聴けるか!!」「金返せ!!」とか罵声が飛んでな。
苦:社会的圧力で勉強したくないのに高校に誰もが行こうとする現代を混同してはいけません。学びたい、露骨に言うと藩で出世したい武士の子弟だけが通ったんですから意欲が違いすぎます。
微:マスク着用を拒否して教室から出されるやつもいたんかな?
苦:新型コロナも関係ないですから!! 話を戻すと、孔子は前479年に73才で死ぬまで、亡命生活を送りながら自分の理想とする政治を実現しようとしますが、果たせませんでした。
微:N国の立花というか、キング・カズみたいなもんだな。押しの強さと諦めの悪さが売りの。
苦:まあ、危険思想集団の親玉でもありましたしね。初期の弟子も先に亡くなり、息子鯉にも先立たれますが、前483年、69歳のとき魯に帰国し、晩年は新しい弟子の教育に心血を注ぎます。
微:相撲で言うと把瑠都みたいなもんだな。ロシアで頑張ってるそうじゃないか。
苦:弟子と言っても学問上です!! 孔子の死後、曾子・孟子といった後継者が儒家の学統を維持しますが、戦国から漢初期にかけては実のところ弱小学団でしかありませんでした。
微:創業者が死んで、精神が失われるのは儒家も大塚家具も同じだな。
苦:大塚家具の創業者は追放されただけで生きてます!! しかし前漢の武帝時代に儒教が「国教化」されてからは清朝が1912年に科挙を廃止するまで中国社会に儒学は君臨しつづけました。
微:オレとしては、孔子の原体験は中学1年の時、諸星大二郎の『孔子暗黒伝』だな。老子は出てくる、大地の精を吸って成長する視肉は出てくるわ、楚の国ではティラノザウルスが出てくる。
苦:周王室の血を引く赤(せき)はインドで釈迦に会うわ、宇宙船のコンピュータの点字を易で解読するわ、と荒唐無稽としかいいようがない。
微:でも孔子の本質が浮かんでくる恐ろしいマンガだな。
苦:50代以上の人はそうでしょうね。というか、孔子を主人公にマンガを描くという発想がぶっ飛んでます。アニメ『水戸黄門』もぶっ飛んでましたが。
微:ああ、黄門様がロボットを操縦して悪人を懲らしめるやつね。解説できる自分が情けない。
苦:さて、孔子は『史記』では下級武士の次男として生まれたとされています。
微:司馬遷が話を盛ってそれだもんな。。
苦:母は卑賤階級の巫女ですが、『史記』では「野合」で生まれた子と書かれています。ちなみに野合(やごう)とは 屋外で大勢の男女が相手構わず何人もと交わることです。
微:お前、今さらっとすごいことを言ったな。現代日本語に直すと何なんだ?
苦:そこをツッコむなよな! かわそうと思って、さらっと言ったのに、もう。
微:高校生も、オッサンも、そこが気になって気になって眠れないよう!
苦:それは「地下鉄はどうやって地下に入れたのか?」っていう地下鉄漫才だろが! 今の高校生のおじいさんしか生で聞いてないよ!
微:大阪の地下鉄は市営の頃からなぜ新大阪より北は地上を走っているのか不思議だったわ。
苦:北大阪急行ですから。この野合説については白川静の『孔子伝』(中公文庫、1992)に出てきます。未開がまだ残っていた春秋時代、その社会習俗から孔子とその学問を解釈した名著です。
微:しずかちゃんの名字は源だろ?
苦:それは「ドラえもん」の世界の話だよ! 白川先生は漢字学を一新した大学者です。まあ、諸橋『大漢和』陣営からは否定的な扱いですが。
微:万葉学の中西進とか、独学の植物学者牧野富太郎とかアカデミズム本流以外の出身は貶されるんだよな。日本の悪いところの一つ。
苦:先程も言いましたが『史記』中の「孔子世家」では父は叔梁紇、母は顔徴在とされていますが、それは儒教を国教とした手前、孔子出生のいかがわしさを消すための創作のようです。
微:下からのし上がった人間のやることだな。豊臣秀吉の日輪の子伝説やら。
苦:血筋というか、男性の気を重視する儒教ですが、実際に後代の儒家が編纂した『論語』でも父母の名の記述がありません。孔子自身は子貢に「少(わか)くして賎(いや)し」と語っています。
微:若いうちからヒーリングに走るなんて、最近の若い女性と一緒だな。
苦:「癒し」じゃねえよ! 子どもの頃から貧しくて賤しい職業にも就いた、って言ってるの! 幼くして両親を失い、孤児として育ちながらも、孔子は苦学して礼楽を修めたことになってます。
苦:しかし、どのようにして周王朝の儀礼を学んだのかは一切分かっていません。そもそも学校はありませんし、周王朝にアクセスできる身分も人脈もありませんから。
微:ユーキャンの通信教育かな?
苦:んなもんがあるわけねーだろ! どうやら孔子の言う周の儀礼は創作の可能性大です。
微:霊界を創作した丹波哲郎みたいなもんか。
苦:葬儀や服喪明けの宴会を請け負っていた原儒のしきたりをアレンジしただけ、そこで身につけた祖先供養というか魂のもてなし方を周の儀礼と強弁したと。
微:どういうことだ? 孔子は儒家ではなくて高益社、違った、公益社の創業者か?
苦:孔子と弟子たちが思想集団となるまでは、葬儀を厳かにする一方、参列者も盛り上げる宴会芸も身につけた芸能集団が原儒家に一番近い姿でしょう。
微:今でも台湾の葬式は派手な家多いよね。楽団どころかストリップダンサー呼ぶ家もあるし。
苦:斜め上ですが、参列者の数イコール故人の徳ですから。
微:それって東アジアの冊封体制というか、朝貢国の多さが皇帝の徳を示すと考えるのと同じ論理だな。
苦:そうです。だからとんでもなく遠い国から使者が来ると特筆したんです。
微:そう考えると、やたら参加者が増えた「桜を見る会」とその前夜祭というのは儒教的には正しいんだな。
苦:礼にしても孝にしてもあくまで自発的行為だから意味があるんで。とは言え、死者と家族の「恥をかきたくない」という気持ちに寄り添うなら、盛り上げるための多少のエサは必要でしょう。
微:となると、パッケージ化された物品や芸人を揃えた原儒家は必要な存在だな。
苦:そうです。葬礼の流れを知り、必要な道具とそれを扱える人間を揃え、家族に代わって悲しみを表現する泣き女もいて、葬儀を過誤なく進行させる集団でした。
微:劇団ひとりでは絶対に不可能だな。
苦:さらに原儒家は、儀式が明けた後の宴会を盛り上げる芸能も行う、「総合葬儀産業」でした。宴会の笑いを盛り上げるために、嘲る対象として、つまり見世物として身体障害者も儒家集団の一員でした。
微:要するに安田大サーカスみたいなもんだな。団長が赤フンして。
苦:しねえよ! さて儒の字ですが、「儒家」関係以外の用例には「侏儒」くらいしかありません。これは身体障害としての小人(こびと)です。
微:それもお笑い枠としてだろ。小山田圭吾的な。
苦:昭和の日本にも猿飛小助らが興業していた娯楽としての小人プロレスがありました。
微:浅草キッズの得意ネタだな、「大きくなったら小人プロレスに入ろうと思ってたけど、大きくなったら入団資格がなくなった」というオンエアできない舞台限定ネタ。
苦:社会保障のない時代、障害をもった人々が生きるには、悲しいですがそれを活用するしかなかったわけで、そのような集団だったと考えられています。
微:その意味では映画では美化されすぎている「コニーアイランドのサイドショー」につながる。
苦:『グレイティスト・ショーマン』のことですね。成長した孔子の身長は9尺6寸、当時の1尺が19.6cmなので換算すると188cmという長身です。ずばり「長人」と呼ばれました。
微:さしずめジャイアント馬場だな。そういえば、馬場のトランクスも赤かったよな。
苦:色はどうでもいいの! あまりに巨大だと怖さ以上におかしさが浮かんできます。
微:喜国の「仮面舞踏会に参加したジャイアント馬場」が好きだったわ。
苦:孔子は母が巫女だったので葬礼を身近なものとして成長したわけですが、その異常な大きさが笑いを誘うので葬礼集団の一員となった可能性もあります。
微:コニーアイランドのサイドショーの巨人アルね。身長2m70cm。奥さんは半分少女。
苦:あの二人はおしどり夫婦でした。障害者のルサンチマンを題材にした『バットマン』は、この角度から批評される必要ありですが、日本では決して触れない。
微:両親から川に流された「ペンギン」とかな。
苦:昭和の頃の日本でもそうでしたが、盲目の人は生きるために音楽を身につけました。三味線を抱いて巡業した瞽女、鎌倉時代に全国を遊行して『平家物語』を謡った琵琶法師もそうです。
苦:儒家が重視する礼楽、特に楽は障害者の技芸と深くつながっています。『論語』にも盲目の楽士を丁寧にもてなす孔子が登場します。
微:お気楽なストリートミュージシャンとは根性が違うわけだ。
苦:芸能を彼らが担った理由はもう一つあります。その障害ゆえに神により近い位置にいると見なされたからです。在俗の宗教家を中世日本では聖(ひじり)と呼びます。
微:"holy"の意味だけじゃないのか。
苦:そう呼ばれたのは彼らが「日を知る人」=暦を全国で売っていたからですが、「聖」の字は白川先生によると、神の言葉を聞き、人に伝える王を表した会意文字だそうです。
微:それで橋本とか野田とか聖子は国民の声を聴けない政治家なんだな。自分の神だけ聴く。
苦:孔子学団も生活のため葬礼を手伝ったようで、宴席で酒を飲み過ぎる弟子に苦言を呈してます。
微:「他人の金で飲む酒はうめえなぁ!!」って言ってそうだな。
苦:葬礼集団を起源に持つので儒教では「孝」が重要な概念・徳目なのです。政治的には「礼」が重要ですが、地域の人の目が及ぶ社会できちんと孝を実践することが礼でもあったわけです。
微:死者の霊を呼び出せる降霊術が必須だったと。
苦:それは道教。孔子は原儒を体系化し、周公に由来する「継承すべき伝統文化」として粉飾・規範化し、一つの思想に昇華させたわけです。「述べて作らず」の弁は明らかにウソです。
微:まあ、サクラに推戴された天子でも「民の意に応えて」と言うわな。
苦:譬えて言うなら、炭素から木炭を作るのではなくダイヤモンドを作ったようなものでしょう。
微:お前、自分の譬えに自分でウットリしてるだろ。「巧言麗色鮮(すくな)し仁」と、衣服でも言葉でも飾り立てることを嫌ってたんじゃないのか、孔子は?
苦:『論語』を読めば、孔子の巧みな比喩でいっぱいなことはすぐにわかります。まあ、実際のところ、真の革命・創造は「復古」として行われます。これ、大事です。
微:まあ、明治維新も王政復古の大号令から始まったわな。
苦:一度できたことなら、やれるんじゃないか、って気にさせることができるからです。マルクスも社会主義革命を原始共産制の止揚として描きました。
微:要するに、年代を偽って価値を高めるのはOKだと。
苦:実際、孔子は自分が天子となって新王朝の開祖になる妄執を抱いていた節があります。
微:浅野裕一先生の『孔子神話』だな。あれは名著だよ。
苦:新王朝の誕生を告げる麒麟や河図といった瑞獣が現れないと嘆く孔子。
微:2020年の日本でも麒麟は来たけど、沢尻エリカは来なかったもんな。
苦:沢尻が見たら幻覚だろ!! (ペシッ!!)