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世界史漫才07:イエス=キリスト編

 苦:今回はイエス=キリストです。千石でも、又吉イエスでもなくYes! 高須!でもありませんから。
 微:オレは西原理恵子とは違うよ。
 苦:イエス・キリスト(前4頃~後30頃)は、パレスティナで活動し、宗教的教えを説いた人物です。一般に、イエスの生年は前7~前4年頃とされていますが、これは『マタイによる福音書』の、イエスがヘロデ王の治世末期に生まれたという記述からの推定です。しかもマタイのこの伝承を事実とする積極的な根拠はありません。
 微:日本でいうと、鞍馬天狗みたいなもんか。又吉イエスでも実在して選挙に出馬しているのに、もう。
 苦:養父は大工ヨセフ、母はマリアの名前だったことは、イェルサレム教団にイエスの親族ヤコブがいたことを思えば、信用しても良いのかもしれません。ちなみにイエスの兄弟姉妹はヤコブ、ヨセ、ユダ、シモンの4人の男子と女子2人がいたとされています。
 微:その4人もヤハヴェの子か? 好きだなあ。
 苦:ヨセフが「養父」と扱われるのは、マリアの胎内に主ヤハヴェの聖霊(hagios pneuma)が宿って生まれたと『福音書』に書かれているためで、この部分は解釈が分かれています。
 微:それを言ったのが安藤美姫だったら、誰も信用しないな。
 苦:イエスのベツレヘム誕生伝説ですが、イスラエルのメシアはベツレヘムで生まれるという伝承がユダヤ教にあります。整合性を考えて、福音書記者はこのような記述というか改竄を行ったんでしょう。
 微:ラーマ王子の子孫を称している東南アジアの某王国よりましかも。
 苦:『ルカ福音書』1章26節の「天使祝詞」の項では、「天使ガブリエルが神の許より、ガリラヤの町ナザレに住む一人の処女のもとを訪ねたが、彼女の名はマリアで、ダビデの家系にあるヨセフの許嫁であった」と述べられています。ここからイエスとマリアはナザレの住民であったこともわかります。
 微:この反省からマイナンバーカードが導入されたんだな。
 苦:時代的に違いすぎです。それともう一つ、イエスは父の仕事を継いで大工でした。ヘブライ語ではなくアラム語の話者で、トーラーもきちんと学んでいません。要するに彼は文字や学問と無縁なんです。
 微:でも『独学大全』は持っていたそうです。
 苦:それも21世紀日本だよ! イエスの少年時代については、「ルカ福音書」が唯一語っていますが、この話だけが孤立していて、歴史的根拠のない伝説と考えていいでしょう。
 微:養父の虐待で、家に監禁されていたりしてな、「お前は俺の子じゃない!」って。
 苦:北嶋家ですか、全くもう。イエスは福音書では成人した男性として登場し、その中で彼は宗教的な要素を含んだ様々な教えを説き、病人を癒し、ハンセン氏病患者を癒し、死者を甦らせたなど、多数の奇蹟を起こしたので弟子集団というか教団ができたと記されています。
 微:空中浮揚とか水中クンバカとかか?
 苦:それはオウムです。
 微:それはオウムです。
 苦:それはオウム返しです。もう止めようね。イエスには多くの弟子がいて、ペトロを筆頭とする「十二弟子」が権威付けられていますが、「福音書」の記述や、グノーシス文書の記述などからすると、イエスの弟子は十二弟子が中核ではなく、女性の弟子集団が中心であったとも考えられます。なかでもマグダラのマリアが筆頭の弟子であり、更に彼女がイエスの妻であったことが推論されています。
 微:映画ではビビって「イエスの子孫かもしれない」と逃げセリフが加わった『ダヴィンチ・コード』の元ネタだな。実は娼婦マグダラのマリアとイエスの二人は夫婦だったっていう。
 苦:さて、ローマ皇帝ティベリウス時代のイエスの処刑に移ります。イエスの目標ですが、自分の思想を世に広く伝えることだったのか、ローマの支配に抗する武装蜂起だったのか、よくわかりません。十字架刑に処せられたので武装蜂起の可能性があります。ローマ帝国に対する反逆者に適用された拷問刑罰だからです。「神の国は近づいた」の言葉だけでなく、メシアの語も問題でした。
 微:子ブッシュが「神の国は近づいた」って叫んだら、間違いなくアルコール依存の幻覚だけどな。
 苦:当時のイスラエル王国において、「メシア」は救世主ではなく、「イスラエルを救う聖なる王」を意味していました。つまり、イエスの信者にとっては「救世主」という宗教概念だったのですが、イスラエル一般の人には「ローマの支配を終わらせてくれる王」という政治的概念だったわけです。
 微:「ザ・めしや」が固有名詞で、「労働者向けの安い食堂」という普通名詞ではないのと同じことだな。
 苦:次元が違いすぎるよ! 『福音書』は十字架上で刑死したイエスの遺骸を、岩窟式の墓に葬ったと伝え、三日後に訪ねると、イエスの遺骸が消えていたと記しています。このことは、マグダラのマリアを含む、イエスの女性弟子たちが確認したことです。
 微:初代引田天功というかプリンセス天功に脱出テクニックを習っていたんだよな。
 苦:んなわけねえよ! イエスが復活して自ら墓から抜け出し、その後、弟子たちの前に姿を現したというのは、文字通りのことではなく、何か別のことを述べていると考えられます。イエスの昇天は福音書に記されていますが、これは神話、明らかな作り話です。
 微:断言していいのかよ? 心配性のキミらしくないなあ。
 苦:いえ、「マタイ福音書」でも、復活したイエスを見た母マリアでさえイエスと気づかないくらい自称イエスと処刑前のイエスは違っていたんです。
 微:あのスペインの「修復イエス」レベルの劣化だったんかな?
 苦:イエスの死後、弟ヤコブと弟子たちはユダヤ教の一派として教団を維持したようです。ただ、パウロの出現によって教団指導者は、ペトロを頭とする男性弟子集団に切り替えられています。
 微:浄土真宗も同じだよな。開祖が亡くなるとすぐに教団が分裂する。でも当主が浸かった風呂の湯を高値で売るようなことはしてないだろ、良心的やん。
 苦:教団はイェルサレムに本拠を置くマグダラのマリアを筆頭とする弟子集団のヘブライ派と、パウロを中心とする異邦人伝道のヘレニスム派に分かれました。前者は、ユダヤ戦争の結果として後70年にエルサレム神殿が破壊されると世界に離散します。一方、パウロによる異邦人への伝道がキリスト教として成功して行きます。地中海世界全域にキリスト教は広がり、ナザレのイエスは、救世主イエスとして知られるようになるわけです。マタイ福音書の最後の記述の通りです。
 微:ユダヤ教徒からすると、鳥や豚のインフルエンザみたいなもんで、近すぎて感染してしまう。
 苦:さて、そんなややこしいイエスですが、セム系宗教では評価が高いのです。イスラーム教はユダヤ教の預言者とともにイエスをムハンマドに次ぐ預言者「イーサー」として受け入れています。
 微:選手としては受け入れられたけど監督としては拒否されたヤクルトの古田みたいなもんか?
 苦:余計な譬えはいいよ! 『クルアーン』の記述によれば、アッラーの奇蹟によってマリアの体内に創造された特殊な出自をもつのですが、やはりアダムの子=所詮は人間という位置づけです。
 微:じゃあ、どうやって奇蹟をおこせるんだ? Mr.マリックが手伝ったな。
 苦:それはないですが、アッラーは人類を含め一切の被造物を超越した存在でありかつ創造主であり、アッラー自身が「子を産みもしなければ産まれもしない」ために、イエスが「アッラー」であることも「アッラーの子」であることも明確に否定しています。まあ、論理的には当然なんですが。さらにイスラーム教では、十字架刑に処せられたのはイエスと別人なので、イエスは預言者としての使命を果たして生涯を全うしたとされています。
 微:イエス替玉殺人事件だな。コナンが口を挟んでくるぞ。『真実は一つ!』って。
 苦:イエスは救世主(マスィーフ)であると認められていて、最後の審判に先立って出現する反キリストであるダッジャールを討伐するため地上に再臨するとされているからです。しかもイエスは『クルアーン』やハディースなどではアッラーの使徒として重視され、ノア、アブラハム、モーセ、ムハンマドと共に五大預言者のうちの1人に数えられ、イエスは大変に重要な地位を占めているわけです。またムハンマドは天使ガブリエルの導きにより天上でモーセとイエスの2人の預言者に会っています。
 微:このイエスとムハンマドの関係をアメリカのエヴァンジェリストは知らないんだな。
 苦:その通りです。他の宗教でもイエスは重要な扱いを受けています。キリスト教的グノーシス主義(天地を創造した造物主を劣悪な神と見なし、これとは別に善なる「至高者」が存在すると考える)では、至高者の下にある諸々の神的存在(アイオーン)の中から、人間世界に派遣された救済者・真実開示者がイエスであると考え、イエスは人間に内在する「至高者の要素」を認識すること(グノーシス)による救済を説いたと信じます。
 微:ああ、何が何だかわからないよ~。」
 苦:この意味ではイエスはメシアとなります。イエスが「人間」として出現した意味については、至高者から生じたアイオーンである以上、劣悪な造物主の手とは無縁であるが、人間に働きかけるために、仮に肉体をまとって、この世に下ってきたという仮現説(ドケティズム)の立場でイエスを理解します。
 微:お前がそんなスラスラと難しい言葉を操るとは、変なキノコ食べたのか?
 苦:大丈夫です。アブってませんから。ササン朝で生まれたマニ教もユダヤ教・ゾロアスター教・西方グノーシス主義・初期キリスト教・大乗仏教が混交したグノーシス宗教です。そのマニ教においても、イエスは、ザラスシュトラ(ゾロアスター)、仏陀に並ぶ預言者として高い尊敬を受けています。インドのシク教でも、イエスは預言者、聖者として尊敬されていますし、シーア派系のバハーイー教においても、世界の偉大な宗教を開いた預言者の一人として高い尊敬を受けています。
 微:イエスは世界を跨ぐ大物だったのか。外国からはやたら名誉博士号をもらっている爺さん以上だ。
 苦:ただし、ユダヤ教では、イエスは偽メシアとしてしか扱われていません。正式なトーラーやタルムード教育を受けていませんから。
 微:それくらいいいよ、日本にはニセ予言者程度しかいないもんな。この前もだまされたよ。
 苦:どこでだよ?
 微:尼崎センタープール前と阪神競馬場。
 苦:それは予言者じゃなくて予想屋だろが!(ペシッ!)

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