
【漫画家が読み解く、櫻坂46『何度 LOVE SONGの歌詞を読み返しただろう』MVの世界。】
もう何度このMVを見返しただろうか解らない。
マジで毎日見てる気がするし、なんなら何か動画を見てても
右側のおすすめ欄にこのサムネが表示されてると
ついクリックして見始めてしまうくらいだ。
それぐらいお気に入り。

初めて楽曲を聴き、MVを見た瞬間は脳みそが震えた。
そもそもMVという媒体の情報量の多さが、
創作意欲を刺激するのに最適で、
なおかつこのMVは、歌詞も映像もストーリーも
ガッチリとパズルが合わさるようにマッチしている。
ボクが近年見たMVの中でもかなり上位である。
このMVが公開されるまでボーッと見ていた櫻坂3期生のメンバーを、
3日後には名前と顔が一致するまで覚えたレベル。
という訳で、
漫画家という少し面倒くさい視点から、
ストーリーを重点的にこのMVの内容を読み解いていこう思うので、
まずは1回このMVをご覧になってから以下をお読みいただけると幸いです。
◯【一人の少女とLOVE SONGたち。】
このMVの物語は単純だ。
一人の少女が恋に落ち、過去の誰かのLOVE SONGに見守られ、
ラブレター(LOVE SONG)を書き、告白をし、その恋の結末を迎える。
ただそれだけだ。

単純なこのストーリーが、どのような演出や歌詞、振り付けから
ボクが感じた全てを書き記しておく。
(※全て個人の感想です。)
◯【村山美羽は、孤独である。】
この楽曲のセンターを務める櫻坂46、3期生である村山美羽さんは、
MVの中でとにかく孤独な存在として描かれている。
それはこのMVの物語が村山美羽一人の物語だからだ。

恋は孤独だ。
一人で悩み、苦しんだ末に残酷な結末を迎えるコトもある。
その孤独と楽しさ、全てが村山美羽という孤独な少女によって
MVでは全編を通して表現されている。
特に歌詞においては顕著で、
前半の歌詞はポジティブでな言葉が多く、恋の始まりを感じさせる。
一転して後半の歌詞は、怒りや叶わないなどネガティブな言葉が多く、
恋の迷い、葛藤が感じ取るコトができる。
さらに決して交わるコトのないメンバーとの視線、
動かない村山美羽とメンバーを差別化したライティング、
サビでのダンスも揃っているように見えて、
村山美羽さんにだけ絶妙な差異がある。
振り付けの中で黒板消しを叩き合う相手も、
机を合わせる相手も彼女にだけは存在しないのだ。

その孤独と苦しみと戦い、MVの中で迫力のダンスと表情で
力強く感情を爆発させる村山美羽。
それが恋という何か例えようのない原動力を見事に表現している。
クールビューティーと称される彼女にこんな感情が秘められていたとは、
最初の3期生加入の頃は想像もできなかった嬉しい誤算である。
◯【先輩であるかつてのLOVE SONGたち。】
そんな中、彼女を見守る過去の誰かの恋(LOVE SONG)たち。
かつていつか、どこかで同じように恋をし、経験した体験を
LOVE SONGの歌詞として彼女に伝え助言を与える。
先輩である彼女たちメンバーは、時には笑顔で騒ぎ、
彼女の書く手紙を心配そうに見つめ、机を並べ中央の村山美羽を鼓舞し、
そして恋の結末を真剣な面持ちで祈り、待っているのだ。
自分がかつて経験した時のように。

◯【一つの恋の始まりと終わり。】
MVの構成は、恋の始まり、恋の葛藤、告白。
この三幕がライティングで素晴らしく表現されている。

暗がりの夜明け前、
教室の外での村山美羽の激しいダンスから恋の始まりを感じ。
明るくなった夜明け、教室内では平静を保っているように見えても
どこか嬉しく楽しそうな感情が漏れてしまう動き。
昼、騒がしくなる世界、数々のLOVE SONGの目覚め、
一人黙々と手紙を書く村山美羽と踊るメンバーたちとの色味の対比。
夕暮れ、不安と葛藤の歌詞、孤独な激しい情熱のあるダンス。
照明の明るさと色味だけで、時間も感情も、
メンバーたちと主人公である村山美羽の別世界感も感じ取ることができる。
見事としか言いようがない。
◯【そして告白へ。】
真っ白な世界は、決心の末に一歩を踏み出した証。
そこには私と想い人である誰かしか存在しない世界だ。
まるで試験会場のような場所でそれぞれの手紙を読むメンバーたち。
そしてただ一人、勇ましく今にも走り出しそうに、
不安と共に決心したかのような表情で強く歩む村山美羽。
この表情と歩みは一生見てられるくらい芸術的な美しさだ。

メンバーたちの振り付けも可愛らしく、それぞれに個性があって
毎回違う子に目を奪われ何度も何度も見てしまう。
YouTubeの再生頻度が高い場所でもこのシーンが上がっているので、
見ている方々もきっと同じ気持ちなんだろう。
個人的には、腕の伸びが真っ直ぐな向井純葉さん(前列中央右)、
武道家のような力強い動きで礼をする的野美青さん(後列右)、
子犬のように楽しそうな小島凪紗さん(後列左)が好みです。
◯【恋の結末は。】
そして今まで教室のセットを俯瞰的に映していたカットから一転、
躍動感ある動きで教室内を縦横無尽にメンバーを追うカメラ。
このメンバーたちの一体感と楽しさしか感じない表情と振り付け、
解放感は何度見ても嬉しくなってしまう。

最後に主観視点のこちらにカメラ目線でこちらに手を差し伸べる村山美羽。
彼女の恋は結末を迎え、村山美羽自身もいつか、どこかで恋をする誰かの
指針となるLOVE SONGへと変わり、誰かを導く。
誰かとはMVを見ている我々なのかもしれない。
そして誰かの夜は明け、また誰かが恋をする。
LOVE SONGは、恋をした誰かの経験として
この営みは永遠に続いていくのだ。
MVを最後まで見ても、彼女の恋の結末は解らない。
解らないままで良いのかもしれない。
ただ一つ読み解くヒントがあるとすれば、
MV内のメンバーたちの持つ手紙の色が赤と白の二色あるので、
赤と白どちらかが…。
◯【最後に。】
以上がボクがこのMVから感じたストーリーと
感じるに至った演出箇所です。
正直この解釈が合っているのか、撮影した監督の意図に沿った受け取り方を
できているのか解らないが、自分自身が感じたその瞬間の感情は、
正誤にかかわらずもっと価値があると思っているので、
俺がそう感じたから、それは不正解だったとしても正解なんだよと。
これもボクのMV鑑賞の楽しみ方の一つです。

ただただアイドルが楽しそうに踊ってて楽しい可愛いというMVも、
常日頃から美味しくいただいておりますので、
何が良いというのも難しいですが、
こういった見るだけで創作意欲が刺激されるようなMVの存在を、
一人でも多くの方に知っていただけるように、
何か書き残しておこうと思いました。
ではでは、長い文章にお付き合いいただきありがとうございました。
最後にもう1回MVを見ていかねぇか?
