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【散文】櫻坂46『自業自得』感想【2025/02/12】

 もう昨年前半に発売された楽曲だけど、
ずっと書こうと思ってたけど忘れてたので。

 紅白で改めて見て、やはり完成度の高い楽曲だなと思った。
曲の始まり方、タイトルの出方、真っ白な衣装、
法廷のようなセット、画面に撒き散る色、色、色。
正直、この後にすでに2枚のシングルが発売しているが、
俺はまだ「自業自得」ばかり聴いている。

 歌詞自体は、終わった恋愛の責任は誰にあるのかなど、
恋愛の後始末、まさに原因は誰かの「自業自得」なのだという感じ。
その中にも【寂しさから逃げるな】とか【幻想から逃げろよ】とか
恋愛の最中では気付かないような、
はっとしてしまうような刺さるセリフがあるところがとても良い。
厳しい言葉の中にすっと応援の言葉を一言入れていく、
これが秋元康のDV彼氏のようなやり口の歌詞。

 そして何よりMVの映像の雰囲気が最高にカッコいい。
真っ白な衣装で力強く踊るメンバーたちと
ただ座ってこちらを見つめる山下瞳月。
新たなセンターの誕生を思わせる風格だ。
脇を固める先輩である二期生たちの迫力も素晴らしい。
白と黒と赤、少ない色で構成された統一感からの、
ラストからの色の暴力は、見ていてとても気持ちが良い。
「流れ弾」のMVから続く、色彩のポルノだ。

 ボクが好きなMVの条件として、ストーリーがある、
顔がよく見える、色が多い、そして何か思わせぶりな演出、
と様々であるが、全てを満たすMVはなかなか難しい。
このMVも一見すると、少女たちが聴衆の罵詈雑言も挫けずに
傷つき汚れながらも表現を続けていくというイメージだろう。
だがそれにしても雰囲気が不穏である。
法廷のようなセットで荒れ狂う聴衆も、赤い照明も、
メンバーたちを汚していく返り血のような色たちも。

 このどこからか感じる凄惨なイメージの答えは、
「1人の少女をセンターに祀り上げ、消費していくグロテスクさ」
ではないかとボクは考えた。
アイドルという職業、その中でも坂道アイドルは、
オーディションに始まり、選抜制度など、ステージの前に立つには、
想像もできない努力と苦悩があるのだろうと思う。
そしてセンターに立つコトで思わぬ負の要素の矢面に
立たされるコトもあるだろう。
それらをエンタメと消費している我々は、
とても残酷なコトをしているのではと
後ろめたい気持ちも感じてしまうのであった。

 しかしまだ希望はあった。
MVでは解りづらかったが、ライブでこの楽曲を見た時に、
フォーメーションの意味に驚いた。
フロントと背後を実力の二期生で埋め、センターを守るかのような配置。
ラスサビの時の振り付けは激しく、センター山下瞳月の背後には、
子どもを守る母ライオンが如く、勇ましく鋭い眼光をする山﨑天がいた。
このグロテスクな消費活動の渦中におり、戦い続けていただろう彼女が。
その目を見た時に、このMVのグロテスクなイメージは、
新たなセンターである彼女がこれからこの闘い続けるための
厳しい先輩からの教えなのではないかと変化した。
改めて見ると先輩であるメンバーが、後輩である三期生を鼓舞するような
描写が多いコトに気づく。
彼女たちならば、きっと大丈夫であろう。
そう思わせてくれるような。

 最後に「自業自得」という言葉、
昨今の自己責任論や、利己主義などあまり良いイメージの言葉ではないが、
山下瞳月のメッセージアプリでの言葉で本来の意味は、
【良いコトも悪いコトも今までやってきた自分の行いに原因がある】で、
彼女はそれをポジティブな意味として捉えていきたいと発信していた。
若いのにちゃんとした子だなぁと感心してしまった。
最初にセンターが発表された時は、
へぇもう三期生がセンターなんだ、くらいの感情だったが、
今はただ新たなセンターの誕生を率直に応援したい。
そんな感じで。

どっかの王国の王女(真ん中)と侍女(左右)

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