トリートメントをカチオンとアニオンに別けてみたら思わぬ収穫が
カチオンとアニオン。
何のことかわかる方ってごく少数なのではないかと思います。高校の授業で化学を専攻されていた方、勉強されていた方は酸化と還元から入りCN+(カチオン)、CN-(アニオン)などご理解いただけると思います。
私たち化粧品の製造に携わっていると日常的に関わりがあり、常日頃アニオンだぁカチオン、ノニオンなどと言葉が行きかいます。
ヘアケア、つまりシャンプー、トリートメントにも大きく影響するカチオンとアニオンのこと少しお話ししようと思います。アニオンとWikipediaで調べてみると
アニオン(陰イオン)
電子を受け取って負の電荷を帯びた原子、または原子団を陰イオン(いんイオン、negative ion)、あるいはアニオン (anion) と呼ぶ。ハロゲンや酸素などは安定した陰イオンを形成する。
気相のイオン。
一方でカチオンとは
カチオン(陽イオン)
電子を放出して正の電荷を帯びた原子、または原子団を陽イオン(ようイオン、英: positive ion)、あるいはカチオン (cation) と呼ぶ。金属元素には安定した陽イオンを形成するものが多い、となる。
髪はパーマネントやカラーリングで傷んでしまうとマイナスに帯電するといわれています。界面活性剤も洗浄目的で配合するのはアニオン界面活性剤です。例えばラウリル硫酸塩をはじめラウロイルメチルアラニンNaやココイルグルタミン酸Naなどいわゆる泡立ち成分がこれに当たります。
シャンプーだけでなくリンス、コンディショナーやトリートメントを使うのはここに理由があります。シャンプーの洗浄剤にはアニオン界面活性剤が必ずと言っていいほど配合されています。シャンプーしただけではごわついたり櫛どおりも悪かった経験をお持ちのはず。
そこでカチオンを主成分としたリンスやコンディショナー、トリートメントを使うとクシ通りが良くなり、柔らかいつやのある髪に仕上がるわけです。
カチオンもアニオンも要するに電子という訳で、電荷したイオンのことなのです。髪と私たちが着る繊維とは非常に似通っているところが多く、現在のヘアケアは繊維業位階からフィードバックされた原料がたくさんあります。
サロンでおこなうヘアカラーもまた繊維業、染色業から来たものだと言われていて酸化染料を呼びます。衣料や着物を染色する工程と同じだと言われています。
良く混同しがちなのでマイナスイオン、プラスイオン。
造語で和製英語になり業界的にも化学的にも使う事はありません。ヘアケアを製造していく上で化学は非常に密接な関係があります。
髪を洗うという事は負の電荷に傾きます。これは泡立ち成分であるアニオン界面活性剤が主である原料しているシャンプーを使うから。シャンプーだけで仕上げるよりも、コンディショナーやトリートメントを使うとクシどおりが良くなり、柔らかに艶やかになるには理由があって、アニオンのシャンプー、その後に使うコンディショナーやトリートメントがカチオンという化学反応を利用しているという事。
私たちが傷んだ髪用に処方する製品はこのアニオン、カチオンを意識せざる負えないのが現状です。仮にアニオン特性の原料とxカチオン特性のある原料を同じトリートメントの中に配合しようとする。そうするとお互いに反発しあってトリートメントのクリームが壊れてしまったり、粘度が逆に強く出てしまったり効果的に働くような商品が作れないという現象が起きてしまいます。
得にヘアケア原料、毛髪修復原料と言われているものはカチオン特性を持つ原料が多いのです。これは傷んだ髪もまた負の電荷を帯び、ごわつきやパサつきが出るから。
傷んだ髪に、カチオンの原料を入れたトリートメントはとても有効な処置になります。
イオンコンプレックスという言葉、美容師さんなら一度は聞いたことがあるんじゃないかと思います。トリートメント効果をこう呼んだりするわけです。でも僕ら作る方からすると髪に有効に働くまで修復原料を添加できないという悩みもあります。
どういうことかというと、もちろん修復原料や添加剤は非常に高価なものが多く、たくさん配合すると商品の価格が高くなってしまう。
もう一つはトリートメントのクリームの中で喧嘩して反発しあってしまい沢山の量を配合できない。良い成分が入ってますよ~などと言っても実は0.01%ほどしか配合されていない場合がおおいのである。少し暴露してしまえば、原料メーカーなどで出す修復効果のある原料は2%~20%ほど濃度を推奨してるケースがほとんどなんだけど、得てして実際の配合量としては本当に”鼻くそ”程度しか配合されていないのが実情ではないか?
要するに高いお金を出して商品を使ってみて実際どうなの?って話。いつかこれでもかって原料を贅沢に配合した商品を作ってみたい!
私たち製造メーカーは通常価格を決める時に、売れ筋の商品をリサーチしていき、競合他社の製品を参考に価格を決めたり、販売戦略を立てたりするのが普通なのだが、まずは売値を考えずに、どこまでのものが作れるのか?
という事でダブルトリートメントと称し、カチオンコート、アニオンコートの2種類を発売予定である。トリートメントには通常であればアニオンの原料、カチオンの原料を程よく混合させてトリートメントを作っていく。しかしそれでは本当に髪に効果的なくらいの有効原料を配合できない。そこでカチオンコートには、すべての配合原料はカチオン由来のものだけ配合する。アニオンにはすべてアニオン由来のものだけと、いくら有効な原料を配合しても喧嘩しないようにという発想である。
繊維業ないし洗濯石鹸を作っているような会社なら、ほとんどのケースでヘアケア用品も発売しているのは察知のとおり。髪は繊維なので衣類や着物などと同じととらえるのが正解なのである。
もっとわかりやすく説明すると、皆さんが洗濯機で洗濯をする際、洗剤と柔軟剤を別けたりします。陽イオンの柔軟剤と陰イオンの洗剤を同時に最初に投与してしまうと化学反応を起こし、繊維の表面で結合してしまうため最初から衣類の表面に油の膜ができてしまい、ふんわり感はあるものの撥水してしまう衣類が出来上がってしまうのです。
シャンプーで洗いアニオンに傾いた髪にカチオンのトリートメント、この理論は洗濯洗剤で汚れを落とし、柔軟剤出ふんわり柔らかに仕上げる。まったく同じものと私は捉えています。
ただ化学反応を起こすといってもアニオンのシャンプー後にカチオンのトリートメントを施しても、何も感じ取ることができません。そこで考えたのがこの商品。
手のひらにカチオンコート、次に同量のアニオンコートを取り人差し指で軽く混ぜてみる。どんどん粘度が出てきてネバネバと糸を引くようになる。使用感にしても明らかに変化がわかり、市販のトリートメントには出すことができないこの感覚。
パティエンスではこのダブルトリートメントを6月中に販売予定であるが、週1回のスペシャルケアとして予定している。
誤解があるとまずいので最後に一言。
最近テレビのCMでノンカチオントリートメントと称して販売されているトリートメントがあります。消費者的にはカチオンって怖いんだなって思われた方多くいると思います。しかし柔軟剤やトリートメント、コンディショナーは洗剤と同じアニオンであると意味を果たせないのです。
ではノンカチオンとはどんなもので代用してるのかっていう話になると、カチオン系の代わりに、アミノ酸であるアルギニンからなる塩酸塩液を配合させる。そうすることによりカチオンと同じ効果が表れふんわり柔らかに仕上がるというもの。
カチオンもアルギニン塩酸塩にしても頭皮の直付けトラブルの原因に少なからずなるのではないか?
トリートメントやコンディショナーは頭皮には塗布せず、毛先や中間部分に良く擦り込んで頭皮にはなるべく付かないように使いましょうって、昔から聞いたことがあるという方も多いと思うが、そういった理由もあるのだ。
ちなみに何年か前に空前のブームになったノンシリコンシャンプー。同じ会社が仕掛けを作っているなんて言えるハズもない。