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顧客体験を向上させるデジタル化の利便性と効率化とは?

コロナ禍によって、様々な産業でDX(デジタルトランスフォーメーション)が一気に加速しています。そして、小売業界でもデジタル化の勢いは増すばかりです。
ただ、一概に「店舗業におけるDX」と言ってもその捉え方やアプローチは様々あるなかで、Patheeでは「店舗業におけるDX」をいくつかのステップで捉えています。
その上で、まず最初のステップとして重要なのが、店舗に関わる様々な情報をデジタル化し、マーケティングに活かすことだと考えています。
そこで今回の連載企画では、Patheeのマーケティングマネージャーの原嶋が、「いま店舗事業者がデジタル化するべき情報は何か」をテーマに、最前線で活躍するキーパーソンにインタビューしていきます。

タッチパネルのデータを分析することで廃棄ロスの削減を実現

原嶋:
竹中さんが株式会社あきんどスシロー(以下、スシロー)にてどのような業務をされているのかをお聞きしてもよろしいでしょうか。

竹中:
営業企画部にてマーケティング戦略立案及びCRM領域、キャッシュレス化やCX/DXの推進に携わっています。

原嶋:
デジタル領域をかなり広く見られていますね。DXという言葉がトレンドになっているかと思いますが、スシローが目指すDXはどのように定義されていますか。

竹中:
スシローでのDXって何だろうってよく考えるのですが、2つの取り組みがあると思っています。
一つは業務効率をあげていくインナー向けの取り組みです。もう一つはお客さまの満足度をあげていくコンシューマー向けの取り組みです。

現在はインナー向けの取り組みを先行して取り組んでいます。既に取り組んでいるものといえば、タッチパネルでのデータ取得とその活用です。タッチパネルのデータを利用することで、何月何日の何時何分に○○の注文が入ったという情報が確認出来ます。また、店頭の案内台では来店時に大人、子供の人数確認をとっていますので、その属性毎の注文傾向などが把握できます。

過去の蓄積されたデータを活用することで、お客さまの来店時間の傾向などを考慮してお寿司を流すことができます。また、データを活用することで、需給予測ができ、その結果廃棄ロスの削減に繋がっています。

さらに今までタッチパネルでは取れなかった性別などの属性の情報も、アプリを利用することで取得が可能になり、属性毎の来店予約のデータを把握できるようになっています。
データ取得・分析がスシローのDXを推進する基盤になっています。

原嶋:
業務効率を上げるためのDXは非常に進めてられますね。
コンシューマー向けというのはそのデータをお客さまに還元していくことでしょうか。

竹中:
はい、お客さまに還元できるようにしていきたいと考えています。
普段注文されている商品以外にも、ちょっと興味を持っていただけそうなもう一品のレコメンドをアプリのプッシュ通知でお知らせするようなことです。
会社としても顧客単価のアップにつながりますし、新しい需要を創出できるので、今後対応していきたいと考えています。

アプリのデータ分析でお客さまの満足度のさらなる向上を目指していく

原嶋:
お寿司の注文って偏ってしまいますもんね。私だけですかね。笑
薦められたら食べてしまうかもしれません。

現在すでに始めているコンシューマー向けの取り組みはありますでしょうか。

竹中:
待ち時間に対するお客さまの不満を解消するために、アプリの予約機能を導入し、6年が経過しました。
アプリの予約機能のポイントは、一般的な何月何日の何時からという未来予約だけではなく、今から行きたいとなった時にお店にいかなくても受付ができて、お店の中で待たなくてもいいような当日向けの予約があることです。
飲食店はキャパシティビジネスなので、混む時間帯に予約が殺到し、分散されないのが課題だと思っています。アプリを導入して、ピークタイムだけを予約されているか、実際は予約する時間帯がばらけているかなどの分布も把握できるようになりました。今後は私たちが予約の分布を理解した上で、うまく分散できるようにお客さまにアプローチをしていきたいと思っています。

あとはアプリをお持ちのお客さまに対しては、毎週プッシュ通知の配信をしています。隔週で発売される新商品のご案内やキャンペーンなど、お客さまにお得な情報を配信しています。

原嶋:
アプリを積極的に活用されていますが、アプリのダウンロード数、またその中でアクティブユーザー数はどれくらいなのでしょうか。

竹中:
まずダウンロード数は、累計で2100万を超えています。
月間MAUは400万〜450万ぐらいです。ただこのMAUはアプリを起動していただいた数なので、=予約をされているお客さまというわけではないです。予約までという意味のアクティブユーザー数だと、店舗予約しているのが100~110万UU程度、テイクアウト予約で利用しているのが月度でばらつきはありますが、50~80万UUぐらいです。合計して想定で130万から150万がアクティブユーザーなので、MAUに対して考えると約1/3の方に毎月ご利用いただいていることになります。

原嶋:
1/3のユーザーが利用しているというのは非常に多いですね。
アプリ内にはポイントシステムもありましたよね。

竹中:
はい、アプリでの来店予約、もしくはテイクアウトのご利用で貯まるポイント施策をしています。すでに来店されている方に向けての施策になりますね。
アプリを利用していただいた方に定期的に来店いただけるロイヤルカスタマーになっていただくための仕組みをつくることが、これからの課題になってくると感じています。

原嶋:
アプリはCRMとしての利用がメインなのですね。
デジタルで新規のお客さまの集客施策は行っていらっしゃいますか。

竹中:
SNS、主にTwitterをメインに集客施策をしています。リツイートや#(ハッシュタグ)を使ったキャンペーンをしています。具体的にいうと新商品情報をリツイートすると抽選でお食事券をプレゼントするというキャンペーンや、お店に来店して撮ったお寿司や商品の写真を#をつけて投稿していくキャンペーンを行っています。新商品の中には、ビジュアル的にバズりやすそうなお寿司や商品があるので、Twitterと相性が良いです。

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お客さまの利便性の向上は来店率を上げるための重要な指標

原嶋:
データ分析のお話をお聞きしましたが、これからデータ分析をする方は、まずどのような数字を見ていくと良いでしょうか。

竹中:
分析の軸としては売上と密接な関係がある「客数」と「客単価」から見ることを始めることが良いと思います。例えば繁閑の波は1日の中にも変化がありますし、1ヶ月で見るなら平日・休日があり波が異なりますので、しっかり分けて分析をしていくことが必要です。

飲食で考えていくと、ランチとディナーで単価が異なります。そこも戦略に入れて考えていかないといけません。
あとはどこまで詳細に追えるかは、企業によって違いはあると思いますが、メイン商材とサイドメニューといわれるような商品毎の売上や、男女・年齢層などの属性×オーダーされているメニューなどの分析もしていくと良いと思います。年齢や性別、それに紐づくオーダーを理解することで、ターゲット別のコミュニケーションという次の一手を考えることができるのかなと思います。

原嶋:
データを見ていく中で、これからさらにデジタル化していかないといけない領域はどこでしょうか。

竹中:
コンシューマー向けだとペイメントをアプリ内で完結させるような世界を考えていかないといけないと思います。例えば、決済と今あるポイントの連携も検討材料だと思います。

スシローは全店セルフレジになっています。ただセルフレジであってもピークタイムは混雑するので、会計が簡素化することは、お客さまの利便性も向上するだけではなく、回転率も向上し結果店舗運営の効率化にもつながります。

お客さまの利便性が向上することは再来店にも繋がりますので、できるだけ便利にしていくことは常に考えていきたいです。

原嶋:
決済周りのデータ分析では、また新しい気づきがでてきそうですね。店舗体験以外でもデジタル化していこうと考えられている所はありますでしょうか。

竹中:
テイクアウトについてもデジタルを強化していきたいと思います。
トライアルでテイクアウト専門店を展開しています。今はスーパーのお寿司売り場のように、ショーケースから商品を選び、レジで会計して購入するだけなのですが、ポイントプログラムと連携をさせていくなどしていきたいと思います。

スーパーやコンビニの店舗数の方が多いので利便性は高いかもしれませんが、テイクアウトができるとなれば、少し先にあっても飲食店の方に行くかもしれません。
スシローでもすでに導入していますが、事前オーダー・事前決済で店舗には商品をピックアップしに行くだけとなれば、もっとテイクアウト需要は増えてくるのかなと思います。

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デジタル化は「利益向上」と「接客に注力できる環境作り」を実現させる重要な取り組み

原嶋:
最後になりますが、デジタル化の推進には組織を横断的に巻き込んで進めていく必要があると感じてます。これからデジタル化していく企業はどのように組織横断で推進していくと良いでしょうか。

竹中:
企業ごとのアセットが違うので一概には言えないですが、今は一般的に皆がスマートフォンを持っていると思いますので、スマートフォンをビジネスに利用しないといけないという提案を経営陣にしていくことが大事だと思います。
スシローでいうとアプリを使って来店するお客さまと非会員のお客さまを比較すると、年間の来店回数や利用頻度は倍ぐらい違いますし、また1回の来店時のユニット人数も会員のお客さまの方が多く、結果ユニット単価(決済額)も高くなります。
デジタルに対して投資することでのビジネスインパクトをしっかり伝えればデジタルのことはあまりわからない方でもちゃんと理解をしてくれると思います。

プラスαで私がポイントにしているのが、ユーザー側の利便性に加えて、デジタルで店舗側のオペレーションのリソースが軽減できるということです。もしくはオペレーションコストは現状と変わらないけれども、集客効果があるので、結果として利益が残りますよという話をしていました。
店舗のスタッフが困っていて、それをできるだけ減らすためにデジタル化していきましょうとしっかり伝えることも重要です。

原嶋:
負荷が増えるわけではないというメッセージは経営側もそうですが、店舗側にも横断的に協力いただくために重要なメッセージに感じました。

竹中:
そうですね、店舗を持つビジネスをやられている企業であれば重要だと思います。スタッフが接客に注力をできるような環境をつくりたいです。そうすることでお客さまにとっての顧客体験もあがり、売上もあがってくると思います。

原嶋:
デジタルでの注文やレジのセルフ化も、本来すべき接客に集中するのための支援ということですね。
本日はありがとうございました。

■この記事はお買い物スポット情報サイトPathee を運営している株式会社Pathee が提供しています。

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