たった1行のタグで自社ECがそのまま世界125ヵ国向け販売対応に! 越境EC支援サービス「WorldShopping BIZ」に迫った
Patheeは「テクノロジーで人々と小売コミュニティを繋げることで社会にインパクトを与える」をVisionに事業をしています。
新型コロナウィルスの影響によって、世の中のデジタルシフトが加速している中で、何から取り組んだらいいかわからないという小売業界のマーケターの方に役立つサービスをPatheeのマーケティングマネージャーの原嶋がご紹介していく新企画です。
第2回は越境EC支援サービス「WorldShopping BIZ」を開発・運営している株式会社ジグザグの代表取締役仲里さまにインタビューさせていただきました。
越境ECの「言語」「決済」「物流」の3つの課題を自社ECにタグ1行で解決
原嶋:
コロナ禍で消費者の急速なデジタルシフトが進み、ECサイトの利用が加速しているという声をよく小売業者から聞いています。一方で海外渡航規制による訪日外国人減少によるインバウンド消費の落ち込みに対する対策が必要との声もお聞きしています。
その課題を解決できるのが「WorldShopping BIZ」だと思って今回インタビューさせていただきました。サービスについてお話をお聞きできますか。
仲里:
「WorldShopping BIZ」は海外の人が日本のサイト上でモノを買い、決済し、届けるところまでをサービスとして提供しています。
コロナ禍でいわゆる「巣ごもり消費」が世界規模で高まっていますが、実は以前から日本のECサイトに対して海外ユーザーが一定規模アクセスしていたんです。ウェブ解析をしてみると、海外からのアクセスが2〜4%、多い所では8%を超えていたというデータもありました。例えば2018年度の日本の eコマース市場で考えると約9.3兆円の総額になるので、その約2〜4%というと約4000億円の機会損失をしている事になります。
リアルでは一生懸命インバウンド対応をされていると思うんですけれども、 ウェブインバウンドの対策は大半の企業が未対応のため、訪れた海外ユーザーは購買することが出来ていませんでした。
なぜ購入できないかというと、「言語」「決済」「物流」の3つのハードルが背景にあります。
まず「言語」についてですが、「言語」と言うと日本人の方はすぐサイトの翻訳をイメージしがちですが、実は重要なのはそこではないのです。 もちろん商品説明の翻訳がされていれば親切ですが、商品ディテールの素材やサイズの違いはGoogle翻訳で調べればわかりますし、なんとなくの直感でカートに入れるところまでは出来ます。じゃあ何が一番のボトルネックかというとカートから先にある「入力フォーム」なのです。
入力フォームでは住所登録がありますが、ほとんどのECが国内向けの販売を想定しているので、国を指定する入力フォームはありません。また、郵便番号の桁数も違ったり、全角カナ入力を求められたり・・・と、海外ユーザーにとっては入力フォームが大きな壁になっています。
次に「決済」です。ショップによっては不正決済を弾くために海外カードを使えなくしています。最後の「物流」も同じようにデフォルトで海外配送に対応していないケースが多いのです。
この3つの壁によって、海外ユーザーのほとんどは購入を諦めてしまいます。この事実を日本のサイト担当者は気づいていない、もしくは対応したくても、コストやオペレーション変更の負荷が高いという理由で手を付けられずにいたということをよく耳にします。
また、3つのハードルに対応をできたとしても、海外ユーザー向けの「多言語カスタマーサポート」をしなくてはいけないですし、モノを送るには貿易なのでインボイスなどの書類作成や海外配送に耐えうるパッキング等が必要なので、自力で越境EC対応するのは非常に大変です。
売り手からするとECだから簡単に売れるのではと思うのですが、実はこういったオペレーションが違うので非常にハードルが高いというのが現状です。売りたいけれども越境対応出来ない、出来ないから外国人が訪問しても買えないというジレンマが起きてしまっています。
この課題を解決するために開発したのが「WorldShopping BIZ」です。自社ECを持っていればJavaScriptタグを1行ECサイトに追加するだけで多言語カート・海外決済・海外配送・海外カスタマーサポートなど、一連のサービスが利用可能になり、すぐにウェブインバウンド対応が始められます。
ユーザーに購入代行サービス提供することで店舗の手数料無料で越境ECを始めやすくすることを実現
原嶋:
海外ニーズがあるんだからすぐ始めればいいのに思っていたんですが、そこにはさまざまハードルがあったんですね。
JavaScriptタグを1行ECサイトに追加するだけということですが、小売業にはデジタル担当がいないという悩みを聞くのですが、ウェブインバウンド対応を始めるにはそれ以外知識は必要ないのでしょうか。
仲里:
専門知識は必要ありません。エンジニアではない担当者様がご自身でJavaScriptを設置されて、サービス開始した実績も沢山ありますから。また弊社のサービスは、大手通販サイトのような大企業から個人商店まで延べ800サイトにご利用いただいていて、規模の大小も問いません。変わったケースでいうと、ハンドメイドマーケット「minne」*1さんにも導入いただいているのですが、そこに出店される作家さんの作品を海外ユーザーの方が購入されていて、自分の作品が世界に届けられることへの驚きや喜びの声を作家さん個人から多くいただいています。他には、「カラーミーショップ」*2 さん等いくつかのカート事業者様とも連携させてもらっているので、アプリをインストールすればすぐに管理画面からWorldShopping BIZ利用の設定できるのでさらに簡単になっています。
*1ハンドメイドマーケット「minne」:https://minne.com/
*2ネットショップ作成サービス カラーミーショップ:https://shop-pro.jp/
原嶋:
料金体系をサイトでみました。toB向けSaaSサービスでは費用は都度見積もりなどが多い中で、初期費用30000円・月額5000円(ともに税抜き)と明確にしていますよね。加えて、「売上手数料0円」とあって、本当にこれだけなのって思いましたが、その質問をよく受けないですか。笑
仲里:
それは本当によく聞かれますね、でも、本当にこの金額以外はかかりません。笑
弊社はユーザーから購入手数料をいただいているので、法人側には今の価格で提供できています。
原嶋:
なるほど、ユーザー側から手数料をいただく分、法人側には初期・月額利用料だけでビジネスが成立しているんですね。
仲里:
そうなんです。海外ユーザー向けには「購入代行サービス」という見え方になります。WorldShoppingのタグを入れている国内 EC サイトに海外ユーザーがアクセスするとWorldShoppingの案内が出てきて、購入代行をしてお届けしますよという告知をします。海外ユーザーはWorldshoppingの専用カートにモノを入れて、利用規約に同意してもらって、次へを押すとそこで初めて元のECサイトからWorldShoppingのドメインに遷移をします。そこからは海外決済でAlipay、PayPal、銀聯さらに最近提携をした海外AmazonIDで決済可能なAmazon Payも選べるので海外ユーザーも困りません。購入後は私たちに注文が入ってきますので、弊社側で購入代行します。ショップから見ると「株式会社ジグザグ」という会員が1名登録されて、毎回そのアカウントから海外向けの注文が入ってくる形になります。その注文通りに受注処理をしてもらって、当社の国内倉庫に送っていただき、当社から海外ユーザーへ配送するというのが基本の流れになります。
海外ユーザーがアクセスするとIPアドレスやブラウザ言語を判別し「To the users living overseas(海外のお客様へ)」と題したナビゲーションバナーと専用カートが表示される
データ活用で越境ECに新しい需要を生み出していく
原嶋:
ECサイトを持っている小売業ならば、ぜひやった方がいいと思うのですが、これまでWorldShoppingを通して、売れた商品・珍しい商品等の事例はありますか。
仲里:
越境ECならではなのが、日本が真夏の時に「冬物」が売れるという事ですね。
南半球なら日本とは季節が逆なので、アパレルの在庫処分が可能になったりします。あとは、年中真夏のはずのマレーシアからコートのオーダーが入ることも。これは、海外旅行に行くためにマレーシアの人がコートを買っているんですね。自国では売ってないですからね。でもなんで日本から買うんだ?とは思いますけれども 笑。
あとはリユース関連も人気ですね。日本の中古商品は手入れも行き届いていて綺麗です。当社でも中古ブランド品店、中古楽器店などが売り上げを伸ばしていらっしゃいます。
原嶋:
在庫問題を解消できるのはいいですね。商品戦略も変わってきそうですね。
コロナ禍で変わったことはありますか。
仲里:
コロナ禍で訪日観光客のインバウンド需要がほぼ無くなりましたから、越境EC(ウェブインバウンド)に対する期待も高まっていると感じます。実際、お問い合わせが増え、立て続けにサービス導入に至ったのが商業施設系のECサイトですね。最近ではパルコさんやルミネさんのECサイトにもご導入いただき、即日海外からのオーダーが入ってきてます。
仲里:
少し話は変わりますが、どの国からの注文が多いかイメージできますでしょうか?
原嶋:
以前アジアよりも北米の方が買っているという記事をみましたが・・・あってますか。
仲里:
そうなんです。かつての訪日観光客の爆買いや越境ECというと「中国」のイメージが強いと思うんですけれども、当社の国別ランキングのトップは「アメリカ」です。でももっと面白いのは購入者の氏名までみると「李さん」や「キムさん」といった英語圏に住んでいるアジアの方が多いことがわかっています。例えば、WorldShoppingを導入いただいているインナーブランドのピーチ・ジョンさんなんかは顕著で、アジア系の方が自分にあったサイズの下着をわざわざ越境購入されているということなんです。 2位以下は香港、台湾、中国といったアジアの国が続きます。
WorldShoppingの専用カートでは、各種海外決済サービスに対応。最近発表された「Amazon Pay」との提携によって、海外ユーザーはさらに便利に安全に越境ショッピングが楽しめる
原嶋:
なるほど、単なる北米在住の親日の方の購買意欲が高いのかと誤解していました。笑
サイズの合わない方が日本のブランドを買っていると聞いてしっくりきました。
最後にこれからの小売業界がどう変わっていき、その中でジグザグとしてはどのような役割を担っていこうとしているかをお聞かせいただけますでしょうか。
仲里:
ジグザグとしては「世界中の欲しいに応える」というところと「世界中に想いも届ける」というサービスコンセプトをしっかり実現していきたいと思っています。単純にモノを売るっていう部分でいくと、今後、国という概念がますます無くなると思っています。そのときにやっぱりブランドが大事だと思っています。
小売業界もこれからEC比率が上がっていきますし、情報発信のハードルはどんどん下がっていますので、自分たちが運営している場所に世界中のユーザーに来てもらってオーダーを受け付け、届けるのが当たり前になってくると思うので、そこを支援出来ればと思っています。
原嶋:
プロモーションのサポートなど領域を増やしていくことは考えているんでしょうか。
仲里:
はい、その予定です。越境対応しても、お客さんが来てくれないと意味がないですから。そのリードの部分も今後お手伝いできたらと思っています。
他にも今期やろうとしているのは、ビッグデータの活用です。我々が持っているデータの価値っていうのは日本の複数のEC サイトを横断する世界中のユーザーの購買データなんですよね。このユーザーログを活用したレコメンデーションができれば、新たな需要が生み出せると思っています。
例えばあるアイテムを台湾在住の20代・女性の方がリピート購入していると分かれば、同じ属性の方にレコメンドすることも可能です。そのショップを知らなかったユーザーにとっては新しい出会いを提供できますし、ショップ側としても新規のユーザーを増やすお手伝いができます。これは我々が海外ユーザーと直接やりとりをするサービスを提供しているので出来ることなんですよね。
加えて、データをダッシュボードとして可視化してショップ(EC事業者側)に提供していくこともできます。あなたのページはどこの人が見ていますよとか、このアイテムはどこに売れてますという情報を提供することでショップ側が自らマーケティング施策を構築できるようにしていきたいです。
原嶋:
その話を聞いているとのちのちはWorldShopping自体がオンラインモールになってくるように感じますね。
仲里:
あくまで自社ECサイトの越境対応サービスなので、モール化することはないのですが、海外ユーザー側から見ると、今後マイページ機能が出来た際には、色んなショップ上でログインができてWorldShopping経由のオーダー履歴が横断して見られるようになるので便利になるかと。Myページをハブとして世界中のユーザーとショップがつながっていく世界観はあると思いますね。
原嶋:
海外への売買がどんどん加速していく未来がイメージできました。御社の事業が延びることでECもボーダレスになっていきますね。
本日はありがとうございました!
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