同人誌が商業出版された話 #PATHCOOL
お久しぶりです。
2021年の秋に自費出版した同人誌が、この度『パスクール パスで描く文字デザインの学校』として商業出版されました!
この記事では主に
「どういった経緯で商業出版に至ったか」
「同人版と商業版でどのような違いがあるか」
についてお話しします。
私たちの場合はいわゆる「技術書」ですが、他のジャンルの書籍でも共通する点はあると思います。同人活動をしている方や出版を目指している方のお役に立てれば幸いです。
商業出版とは
商業出版とは、出版社が制作費用(人件費、印刷製本費など)を負担する出版形式のことを指します。
引用元:https://nihonbashi-pub.co.jp/801
自費出版の場合は自分たちで制作だけでなく印刷、販売、梱包、発送まで行う必要がありますが、商業出版の場合はこれらの工程は著者はやらずにすみます。また、全国の書店や各種通販サイトで購入可能になるため、流通経路が圧倒的に広がる点が魅力だと感じます。
報酬に関しては制作費と印税を受け取る形になります。
商業出版の経緯
経緯はとてもシンプルで、同人誌を読んだ編集者の方から商業出版のお誘いのメールをいただいたことがきっかけです。私たちはboothというネット販売サイトでのみ販売をし運良くお話をいただきましたが、コミティアなどの即売会イベント参加やメールによる出版社への企画持ち込みから出版に繋がる人も多いそうです。
同人誌『パスクール』の概要
そんな『パスクール』はどんな同人誌だったのか。
この本は「作字の制作過程にそってパスの引き方、ツールの活用方法、デザインのテクニックを解説する書籍」です。
B5サイズ180ページの大ボリュームで、内容も商業版と遜色なくぎっしり詰まっています。学生さんなど若い方にも手に取っていただけるよう、システム利用料・送料込みで2,400円程度になるように価格設定しました。
デザイナー4人で企画から考え、2年以上の制作期間をかけて完成させました。
※詳しい情報は下記の販売サイトでご確認いただけます。
商業出版が決まったタイミング
決まったタイミングはかなり早く、ちょうど3刷を検討している最中でした。
私たちの同人誌の場合、一度に400冊以上を刷らないとまともな利益が出ないのと、在庫をかかえるリスクが大きかったので、かなり慎重に検討していました。
最終的に数社からお声がけいただいたのですが、期間はバラバラだったのでタイミングに法則性はないと思います。
個人的にはこの同人誌をきっかけに仕事をもらい、数年間実績を積んだのちに「実は昔こんな本を作りまして…」という流れで商業出版できたらなと考えていたので、かなりショートカットできたなと思います。
商業出版される可能性を上げるポイント
著者として感じる、商業出版の決め手になりうる重要ポイントを挙げると、
①企画として分かりやすいこと
→プレゼンがしやすい。
②読者需要があること
→「一定数売れる」という判断ができる。
です。ページ数やデザインの完成度は後から上げられる(とはいえ手は抜けませんが)と思うので、とにかく土台となる部分が大事だと思います。
ポイントを抑えるためにしたこと
企画は短い文章だけで興味を引けるくらいシンプル、かつ新しさのあるものを考え続けました。私は最初に本を作りたいなと思ってからこのアイデアが出るまで2年ほどかかったので、必要なのは焦らない余裕と案を出し続ける継続力だと思います。また、本屋に並んでいる新刊をチェックしたり、誰かと意見交換することを習慣付けました。
需要に関してはSNSで「○○ わからない」などで検索して出てきた投稿や、通販サイトの類似書籍の商品レビューを収集してリストアップしていき、その中から自分が共感できるものを選んで作品に取り込んでいきました。これも3年ほど毎日取組んでいました。
商業出版にあたってブラッシュアップした点
同人誌と全く同じものを商業出版する…ということは基本的に無いと思います。理由は、何かしら改善点があるはずということと、出版社側のディレクションが入るからです。なにより、「前よりもっと完成度が上げられる」と考えた方が制作のモチベーションが上がります。パスクールに関しては約1年間で全ページ何かしらの修正や改変を加えています。具体的に変わった点を挙げます。
本の導入
before:
ターゲット層は作字をやっているけれど伸び悩んでいる、もしくはこれから始めようと思っている人で、ツールや制作過程の基礎から解説した。
after:
ターゲット層をさらにAdobe Illustrator初心者まで広げ、「そもそもパスとは」というところから解説した。
読みやすさ
before:
シンプルな紙面を目指し、図以外の要素は目立たせない方針でデザインした。
after:
読書に慣れていない人でも迷子にならないようキャプションなどを追加し、見出しも目立つように大きくした。また、配色ルールを定義しなおした。
印刷と紙
before:
「B5横 180ページ」に対応できる印刷会社が1社のみ、かつ用紙の選択肢がなかった。(でも超安かった上に本もしっかりしていたのでOKです。)
after:
紙の質が上がりほぼ同じページ数でも厚みは倍程度に。また、入稿データを整えて版ズレを改善した。
イラストの追加
before:
読んでいる時に一息つけるよう、定期的に小さなイラストを入れた。
after:
小さな挿絵だけでなくコンテンツの切り替わりが分かりやすくなるよう、各章ごとに扉ページを追加した。また、それに合わせて世界観の作り込みも行い、学校という設定をいかしたシナリオにした。
…長くなってしまったので本記事はここで終わりにします。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
次の記事では「アイデアを生み出すコツと、10の実践例」と題して、こだわりポイントを紹介します!
この記事を読んで気になった方はぜひパスクールを読んでみてください。
これを機に作字を始めてみませんか?
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