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君と僕の世界

君は美しくて輝いていて、僕とは違う世界の住人。

君と違って僕は地味で冴えなくて、なんの取り柄もない。だから僕は君から告白されたとき、とても驚いたって言葉じゃ足りない。

何故僕なんだ?

聞いても君は笑顔で秘密と言う。

「僕はつまらない人間で、君とは違う世界の住人で君を幸せに出来ると思えない。」
真剣に僕は言うけど
「違う世界ってどこ?君は宇宙人とか?それでも私は君が好きなことには変わりがない。」
そう君は笑って答える。その笑顔が眩しくて僕は君を拒むことが出来ない。

僕たちは気付くと付き合いはじめて5年の月日が流れていた。君と過ごす日々は新鮮で新しい世界ばかりで楽しくて、僕は君に別れを告げられない。君はすぐに飽きるだろうと思ったのに、時々怒ったりもするけれど、別れようという言葉は出ない。

「ねぇ、結婚しよ!」
君はまた軽い口調で言う。
「そんな大事なこと簡単に決めちゃ駄目だよ。僕は冴えない三流サラリーマン。君は一流のキャリアウーマン。君はもっと周りを見ないと。」
僕は真剣に言うが、君は不貞腐れる。
「まーた、その話。ねぇ、私といて楽しい?」「……楽しい。」
「じゃぁ、何が問題なの?」
「君を幸せに出来るのは僕じゃない。」
「それ、告白した時にも言ったねー。大丈夫。私は自分の力で幸せになるから。そして君を幸せに出来るのは私だけ。」
あぁ、なんて男らしい。僕が言いたい。
「せめて僕じゃないと駄目なところ教えて。」「えー、どれにしよう……うーん、肉じゃがが美味しいところ。」
彼女は笑って答える。僕は呆気にとられる。
「それも、男が女に言う言葉……」
「君はさ、世界が違うとか、男とか女とか型にハマりすぎだよ。宇宙人だろうと男同士でも好きならそれで良いじゃん。」

うん、君はそういう人。僕は言い返せない。

「一応聞くけど、生物学的に君は男じゃないよね?」
今さらー!?彼女が笑う。僕も笑った。

 こうやって君に振り回されながら、僕は君に幸せにしてもらうんだろう。僕には拒否する権利も希望もない。でも少しくらい僕も君を幸せにしたいから、悔しいから、密かに買っておいた婚約指輪を僕は取り出した。君のためなら無駄になっても良いと思って買った指輪。僕の3ヶ月分は君の1ヶ月分の給与だろうけど。

「私が幸せにするって言ったのに、ずるい!」

彼女は笑いながら泣いた。初めて僕は君に勝った気がした。

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