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コンサル弁理士による知財コンサルへの誘い7(稼げる弁理士・知財専門家になろう)

 前回は、企業が外部専門家に「対価」を支払う理屈を知ろうと、説明しました。 

 ここで、稼げる弁理士になりたい弁理士(あるいは知財専門家)はたくさんいると思う。そのような弁理士や専門家に共通しているのは、「どんなスキルを身に着ければ稼げるか?」という、自分磨きにしか目が行かない人が多い。勿論それは大事だが、それは当たり前であって、払う側の論理を考えなければならない。 端的に言えば、どれくらいの支払い能力・支払い意欲があるだろうか? 中小・ベンチャー企業は、外部の知財専門家に1年間でいくらなら払えるだろうか?

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 弁理士向け講演などで、「中小・ベンチャーがいくら払えると思うか?」と聞くと、期待を込めて「数100万~1000万/年」と答える専門家は多い。そのとき、その理屈を説明させると誰もできない。つまり、支払い側の論理や意識を理解してない証拠。

 私は、「100万/年」というのが、中小・ベンチャーが外部の知財専門家に払える「ほどよいライン」だと考える。上の図は、その100万の値ごろ感を示したものである。過去の経験、現在の私のビジネスモデルなどの蓄積からでもあるが、経営数字からちゃんと導き出せる。

 中小・ベンチャーは研究開発費に売り上げの3%も振り分ければ超優良企業である。中小・ベンチャーの売上ラインは「3~7億円くらい」。5億として3%で1500万。おそらく技術者1~2名。人件費を1人月60~80万としても、1500万だと人件費+ちょいで終わる計算。知財費用が開発部門の財布と総務部門の財布にまたがっていたとしても、100万くらいが払える上限である。もし、弁理士である自分に1000万/年の仕事を出してくれる企業の売り上げはどれくらいが必要だろうか?(たぶん、これを計算している弁理士や知財専門家はほとんどいない)。

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 上が、私が講演で示したチャートである。1000万/年を払えるのは、売上300億円以上の開発型企業である。そんな企業がたくさん存在するか?残念ながら、日本の中小零細護送船団資本主義では、5億程度の中小企業がほとんどである。つまり、1社から1000万(半分の500万でもおなじ)/年を貰う弁理士や知財専門家を目指すのは、マーケットからして土台無理である。もし、これを目指すなら、昭和のビジネスモデルで生きてきた大手特許事務所と同じスタイルを作るしかない。でも、それは一人では無理。。。

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 上の図は、1社あたり100万/年の売り上げを得る場合の、その会社に提供する仕事のパターンである。5万/月の顧問料+特許出願1件、特許2+小さなコンサル対応、など、顧客企業の規模からみて現実的である。企業も上限100万なら払ってもよいと思えるレベルだ。企業の節税としても悪くない。

 後は、自分が年収としてどれくらいを目指したいのか?だ。 この100万/年のビジネスモデルを10社で1000万、20社で2000万と考えて行けば、そこで自分の能力の幅(技術の幅とビジネスセンスの幅の勝負になる)が次の勝負になるのだ。筆者は30~50社/年をやってきた(今は、減らしている)。

 すべての顧客企業がこのモデルに当てはまるわけではないが、企業の支払い能力・支払い意欲を、企業規模から考えて自分のビジネスモデルを作り上げることが、弁理士や知財専門家にだって、当然に必要なのである。スキルや能力はその下にあるベーシックなものなのだ。

 稼ぐことは大切なことだ。プロなのだから。だからこそ、自分のスキルや能力ばかりに気を取られずに、まずは払う側の論理を考えることが何よりも重要だと多くの弁理士や知財専門家に気付いてほしい。それは、とりもなおさず、顧客企業に価値を提供できる自分であるかということを常に考えることと同義だからである。それこそがプロフェッショナルというものだ。

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