【映画レビュー】ゼンブ・オブ・トーキョー
※本記事には映画のネタバレを含みます。鑑賞前の方はご注意ください。
日向坂46四期生が全員出演する映画「ゼンブ・オブ・トーキョー」。
現在絶賛公開中の本作ですが、今回は四期生メンバーが演じる11人の登場人物にフォーカスを当てて感想を述べていきたいと思います!
池園優里香(正源司陽子)
今作の主人公であり、修学旅行班の班長。
自由行動の時間で東京の“ゼンブ”に行くことを掲げて張り切っていたのですが、途中でみんながバラバラになってしまいます。
そこからは自分で考えた行程を一人で巡ることになるのですが、だんだんと自分が理想としていた修学旅行と違うことに気づいていきます。
自分も修学旅行の班長をやったことがあったりしたので、めちゃくちゃ共感しながら見ていました。今でこそみんなが平等に楽しめるように自分が行きたい場所を我慢したりするようになりましたが、そこで「じゃあ全部行っちゃえばいいじゃん!」という思考になるあたりが若いなーと感じますし、自分も高校生の頃は実際そうだったと思います。
そういったこの年頃ならではの感情の描き方が本当にリアルで凄いなーと感じました。
こういう「行きたい所全部行く!」みたいな旅行って結局計画してる時が一番楽しくて、いざ当日を迎えるとただただノルマを達成していくだけのようになってしまい楽しくなかったりもするんですよね。自分も昔はそういう旅行をよくしていましたが、最近は少し余白を持たせた計画を立てるようにしています。
ただ、班のメンバーに逃げられて可哀想な子という印象のまま最後まで行ってしまった感はあるので、もう少し報われてほしかったなとは思います。確かに現実は報われないことも多いですが、ここはフィクションなのでそこまでリアルにしなくてもいいかなとは思います。
桐井智紗(渡辺莉奈)
アイドル・ありりんこと有川凛(小坂菜緒)に導かれ、自分もアイドルの道へ進むことを夢見る少女。
先生にスマホを没収されたシーンでは「そんなにスマホが大事か?」と一瞬思ってしまいましたが、確かに今までずっと大事にしてきた自分だけのお守りが急になくなるとああいう感じになるのもわかりますね。別に本当はなくてもいいけど、
これがないと気持ちを保てず、できることもできなくなってしまうような物ってみんな何かしらあると思います。
先生に奪われたスマホを取り返すシーンではりなしがセンターの四期生曲「夕陽Dance」が頭の中で流れていました。MVの世界観も相まってあのシーンとぴったり合っている曲だと思います。これからは曲を聴く度にあのシーンを思い出すかもしれません。
あとありりん役のこさかなの演技もよかったですね。現実のこさかなは「こっち側に来れば?」なんて絶対言わなさそうですが、作中のありりんが言うと凄くしっくり来ていたんですよね。
アイドルがアイドルの役をやるって難しい気がしますが、完全に小坂菜緒とは別のトップアイドル・ありりんになっていたのが凄かったです。
羽川恵(藤嶌果歩)
憧れの男子・守谷くんを追いかけるも同じく守谷くんを追いかけていた美緒(竹内希来里)に見つかってしまいます。
かほりんのイメージと守谷くんに恋する恵の表情がバチッとハマっていて凄く良かったです。
そんな守谷くんにゾッコンな乙女の表情と恋敵・美緒と喋っている時の低いテンションとの切り替えも凄く良くて、歌だけじゃなくて演技も上手いのか!と感心してしまいました。
結局告白する前に守谷くんが別の女の子を好きだったことがわかり、美緒と二人でもんじゃをやけ食いするシーンも個人的にはかなり好きでした。
守谷くんと結ばれるどころか告白すらできないあたりがまたリアルで、そういったなかなか上手くいかないところも後から振り返ったら青春だったなとなるんですよね。自分にも刺さる部分があり、めちゃくちゃ甘酸っぱい気持ちになりました。
説田詩央里(石塚瑶季)
オタク仲間の若菜(清水理央)、茜(宮地すみれ)、萌絵(山下葉留花)と共に推しキャラのグッズを手に入れるべく奔走します。
個人的には今回のたまちゃんの演技が凄く好きで、これが見れたことが今作での一番の収穫と言っても過言ではなかったと思います。
普段のキラキラ輝くアイドル・石塚瑶季とは違うオタクの女子高生・説田ちゃんの顔にちゃんとなっていながら、元々たまちゃんが持つパッション溢れるイメージも上手く生かされていて、これはたまちゃんにしかできない役だなと感じました。
オタク特有の好きなものにはとことん一生懸命な部分が、普段のライブでもいつも全力でガムシャラにパフォーマンスするたまちゃんとピッタリ合っていたのかもしれませんね。
メインキャストである池園班の5人に抜擢されたのもよくわかりますし、また他の場所でもたまちゃんの演技が見たいと思いました。
枡谷綾乃(小西夏菜実)
実はオタクであることを隠して学校では東京から来たクールキャラを演じている転校生。
加入当初クールかぶれと言われていた小西本人と重なる部分もあり、まさにハマり役でした。
詳しくないのに下北沢に来て慌ててスマホで店を調べたり、パンケーキが上手く注文できなかったりとちょくちょくボロが滲み出てしまうあたりが面白かったです。
ところで、もし深雪(平尾帆夏)と出会ってなかったら一人で何するつもりだったんでしょうね?
辻坂美緒(竹内希来里)
同級生の男子・守谷くんを追いかける恵のライバル。
影のMVPと言ってもいいほど個人的にはかなり印象に残ったキャラでした。SNS等での感想を見てもきらりんちょの名前を出している人を多く見かけたので、これからますます注目度が高まっていくメンバーになると思います。
前々からきらりんちょは目力が凄くあると思っていたのですが、それが今作での美緒の強気なキャラとマッチしていてとても良かったですよね。
演技もいい感じで、特に女バス感の醸し出し方が絶妙でしたね。池園班5人を食うほどのインパクトを与えたキャラだと思います。
花里深雪(平尾帆夏)
憧れの枡谷さんと仲良くなるため、一緒に行動することになります。
正直演技はあんまり得意ではないのかな?という印象ではありましたが、東京に初めて来た田舎者感は誰よりもピカイチだったと思います。
鳥取県出身で、運動が苦手だったり私服がちょっとおDASAだったりするひらほー自身のキャラが、演技を越えて深雪のキャラとマッチしたのだと思います。
それと深雪は本当にピュアで、台詞や動きの一つ一つを見ているだけでなんだかほっこりしてしまうとても魅力的なキャラだったと思います。
枡谷さんが本当の自分をカミングアウトするシーンも、深雪のおかげでシリアスになりすぎずクスッとできたのが良かったですね。
満武夢華(平岡海月)
枡谷さんが東京に住んでいた頃の同級生。
みっちゃんといえば四期生の中でも最年長でお姉さんキャラのイメージですが、今作ではバッチリ女子高生になっていましたね。
他の登場人物がみんなキャラ強めなのもありますが、個人的には一番リアルに居そうな女子高生に見えたのが夢華でした。
クレーンゲームのシーンでは、後ろで並んで待ってる人もいるのにそんなに時間かけていいのか?と思ってしまいました。まあフィクションにそんなこと言うのは野暮ですね(笑)
11人の中で唯一違う学校の生徒になりますが、終盤のお台場海浜公園のシーンではみんなと混ざって一緒にワイワイ遊んでいたのがよかったですね。
角村若菜(清水理央)
説田ちゃんと一緒に推しキャラのグッズをゲットするため奮闘します。
途中で守谷くんと会話をするシーンがあるのですが、男子とも分け隔てなく普通に喋る一軍感がめちゃくちゃ良かったですね。
実際本人がどうかはわかりませんが、個人的には理央ちゃんは絶対そっち側の人だと思っていたので、完璧にイメージ通りで嬉しくなりました(笑)
こういう女子クラスにいるよな〜と思いながら見ていました。
梁取茜(宮地すみれ)
こちらも同じく説田ちゃんのオタク仲間。
茜は完全に宮地すみれそのものでしたね(笑)
出番はあまり多くありませんでしたが、強烈なキャラでシーンにアクセントを加える存在だったと思います。
門林萌絵(山下葉留花)
見た目はギャルですが、中身はオタクで説田ちゃんを中心とした4人組の1人。
整理券を失くしてしまうシーンはこちらもはるはるそのまんまでしたね。
せっかくいいキャラなのでもう少し出番が欲しかったかなーとは思ってしまいました。
日向坂メンバーが出演しているということで贔屓もあるのは確かですが、映画を観てここまで感想を語り合いたい!と思った作品はかなり久々でした。
ただ、悲しいことになかなかリアルで喋れる相手がいないので、今回はnoteに綴らせていただきました(笑)
今作の登場人物はみんなそれぞれキャラが立っていてとても魅力的だったので、1人ずつフォーカスして感想を書きましたが、個人的な思い入れや劇中での出番の多さによってだいぶ文字量に偏りが出てしまった点は申し訳ありません。
やはり池園班5人がメインといった感じでしたが、個人的には美緒(竹内希来里)と深雪(平尾帆夏)はかなり印象に残る活躍だったのではないかと思います。だからこそ説田ちゃんのオタク仲間3人とかはもう少し1人1人を掘り下げてほしかったかな...とは感じますが、それを全部やっていたら相当尺が伸びていたでしょうね(笑)
最後に全体的なストーリーに関しても少し感想を書きたいと思います。
個人的に今作を観て印象的だったのは、登場人物みんな100%理想通りにはいかないストーリーになっていたところです。
池園班長は東京のゼンブを楽しめず、恵と美緒の恋も叶わず、欲しかった推しのグッズも結局1種類しか買えず、アイドルオーディションも時間切れで受けられず...といった具合に結果誰もハッピーエンドじゃないんですよね。
なかなかそういう映画も珍しいなーと思いつつ、でも現実ってそんなもんだよなとも感じました。
そして本作は風景の切り取り方も特徴的だったと思います。それこそ修学旅行生やインバウンドの観光客が思い描くキラキラした理想のトーキョー像と、現実のどこか冷たく乾いた雰囲気の漂う東京の空気の両面が映像に表れていて、それが理想通り上手くいかない登場人物たちの心情ともリンクしているように感じました。
主題歌の「急行券とリズム」も本作の青春群像劇と最高にマッチしていてとてもよかったです。
個人的には日向坂の曲が主題歌でも嬉しかったですが、結果的にはそうじゃなくて良かったと思います。
もし主題歌が「雨が降ったって」や「夕陽Dance」だったらもっとアイドル映画感が強くなって、ファンしか喜ばない作品になっていたかもしれません。
本作のストーリーや監督の思いを汲んでピッタリとハマる曲を作ってくれたConton Candyの皆様には本当に感謝しています。
正直観る前はみんな可愛かったなー演技頑張ってたなーという感想で終わるかと思っていましたが、しっかりと作品に没頭して観ることができたのは本当によかったですし、ぜひおひさまではない人にもこの作品を薦めたいなと感じました。
さて、11月8日(金)からは熊切監督と四期生11人による副音声上映がスタートします。
ここでは撮影の裏話などもたくさん聴けるかと思いますので、ぜひ一度観た人ももう一度劇場に足を運んでみてはいかがでしょうか。