Arc.7-【弁理士試験】合格点54点とは単純に積み上げた部分点の総和なのか?
大阪梅田でフィラー特許事務所を経営している弁理士の中川真人です。今回は,弁理士試験論文試験の合格点とされる54点とは,単純に積み上げた部分点の総和を意味するのかについて,独自の考察を提供します。
弁理士試験はマークシート方式の短答試験,記述式の論文試験,口頭試問形式の口述試験の3段階から構成されます。ここで,短答試験は60問中39点以上の正解,論文試験では54点以上の得点,口述試験では3科目中2科目の合格判定が求められます。
論文試験の得点は素点の偏差値として計算されますが,その意味では素点の偏差値が54以上あれば合格ということになります。しかし,論文試験の合格率が25%程度であることを考えると,偏差値では57程度が必要になります。
ここからは私の独自の見解ですが,論文試験の素点は単純に部分点を合計した総得点を意味するものではないのではないかと思うのです。予備校の模試や答練では,何を書けば+3点,という加点方式で最後に合計点を計算して合否判定をしています。しかし,これではどうしても納得できない結果が生じます。例えば「意匠Aは進歩性を有するから」などというNGワードを書いてしまって一発不合格判定が出るという現象を説明できないのです。
仮に本当に部分点を合計するのであれば,意匠法で進歩性と書いたり,商標法で商標は創作物であると書いたりしても,部分部分が正しく書かれていればかなりの高得点を維持するはずです。とはいうものの,経験則上これらのNGワード(一発不合格)は存在します。なぜでしょうか。
それは,そもそも法律が(商標法的にいうと)全体観察による多数決によるものだという前提が抜け落ちているからです。いうまでもなく,法律は一人1票の多数決です。そう考えれば,論文試験の答案は,この受験生を合格させて良いかという問いに対し,過半数の賛成を得られれば合格すると考えた方が自然です。
私の見解では,論文試験の合格点54点というのは,試験委員の先生方が仮に100人いらしゃったとして,100人中54人の賛成,つまり100人中54人の先生方が「この受験生の答案なら合格」と言っていただければ,合格なのです。
こう考えた方が,法律の試験としてはしっくりきます。素点を積み上げた合計という考え方は,実際に法律実務ともかけ離れています。現実は,出来上がった成果物,例えばそれが明細書であれ,訴状であれ,意見書であれ,最終的には◯か×かの2択です。
私も途中から答案全体として合格となるように記述する方法を心がけるようになり,実際にそのように書いた答案で合格しました。得点はそこまで高くはありませんでしたが,自分の言葉で試験委員の先生方をクライアントと見立てて作った答案という回答が,どうやら過半数の賛成を得ることができる出来だったのでしょう。
もし,理解はできているのになぜか本試験で合格できない,予備校の模試の結果と本試験の得点との乖離が大きいというお悩みを持っていて,この論文試験の得点は試験委員の先生方が合格と判断する割合を仮想的に示したものという考え方の方がしっくりきたという方は,思い切って勉強方法を変えてみるときかもしれません。
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弁理士・中川真人