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【ジュエリーの知財戦略】意匠登録できるものとは?
意匠登録は「工業上利用できる意匠」について受けることができます。ここでいう「工業上利用できる」と言うのは、同一物を量産できると言う意味です。
では、
A ダイヤモンドのカット
B 天然石そのもの
C 貝殻を交互に並べたネックレス
D 宝石ケース
これらのうち工業上利用できる意匠はどれかと言ったら、天然石そのもの以外は全て同一物を量産できるか、少なくともその可能性はありますから、意匠登録を受ける対象となります。
注意すべきなのは、同一物を量産できないものは意匠登録を受けられないと言う点です。ですから、天然石そのものを要素に含むデザインを登録するには、その「天然石そのもの」が視覚的に主役になるようなデザインでは「量産性」という点に欠け、意匠登録は受けにくくなります。
一方、同じ天然物そのものを要素に含むデザインでも貝殻を交互に並べたネックレスのように、全体で同一と呼べるデザインの物品をある程度量産できるような工夫を施しておけば、意匠登録を受けられる可能性が出てきます。
これらは相対的なものなので、どうすれば天然物そのものを含むデザインでも全体で同一と呼べるデザインにできるかというのは、正直デザイナーのアイデア次第です。
ですから、そんな苦労して考え出したデザインなので特許のように保護を与えて真似されないようにしようというのが意匠法の考え方です。
宝飾品の知的財産保護は欧州が非常に活発ですが、彼らのデザイン戦略は非常に卓越していて、かつ巧妙です。
パッと見ればそれがTiffanyなのかCHANELなのか、なんとなくこれはTiffanyではなさそうだなとかいう、そういう印象付けがきちんと体系立てて作られています。
まずは、工業デザインは量産可能でかつアイデアの一形態だという認識を持っていただければと思います。
弁理士・中川真人
フィラー特許事務所(https://www.filler.jp/jems)