ピカタ

ネトゲのギルドのチャットで事ある毎にピカタを話題にする青年がいた。
今日は何を食べようかな？と私が呟くと、彼は決まって「ピカタがオススメだよ」と少し得意気に話してくる。
正直ピカタを食べた事がある私からするとピカタは微妙だ。
肉や魚に少量の小麦粉を付け、卵にくぐらせて焼く、それをケチャップで食べる…微妙だ。

彼は言葉の端々からプライドが高そうに見えた。簡単な話を難しい言葉を使って何とも難しそうに話す彼だ、プライドを傷付けないように細心の注意を払って「美味しいよね、じゃあ今日はピカタにしよう」と言っていた。
もちろん、ピカタは作らない。

別の日にギルド内で食べ物の話題になった。
ギルドに新人が入って来た事もあり、親睦会という訳だ。
新人さんは明るくノリの良い若そうな青年だった。
ハンバーグ、カレー、唐揚げ、中には手の込んだ料理の話などをしていた。
ピカタの青年が「新人さん初めましてこんばんは」とログインしてきたのだ。
あ〜来るぞ来るぞピカタが来るぞ！と、思っていたらやはり「新人さんピカタがおすすめだよ」と言ってきた。
すると新人さんが「ピカタって卵付けて焼くだけですよね、微妙w」と言ってしまい、それまでスムーズに流れていたチャットが忘れもしない1分30秒止まった。
中には、「私はピカタ好きだよ」とフォローする人もいたが、ピカタ青年の返事はなかった。
その日を最後にピカタ青年はピカタの話を一切しなくなった。