ずっと寄りつかなかった実家に、今は定期的に帰省している
父が亡くなり、もうすぐ一年。ずっと実家に寄りつかなかった私だけれど。病を抱え外出できない母のために、どうしてもヘルパーさん任せにできないことがあり定期的に帰省している。
気分転換にもなるし楽しいから問題ない。
今は母ひとり子ひとり。
母とはずっと仲良しではあったけど、父とは折り合いが悪かった。
まあ、完全に私は父から嫌われていたのです。小さい頃から。
理由はずっと分からなかった。
でも父が亡くなり、知人が私と一緒に葬儀に来てくれて。母がぽつりぽつりと語る言葉のなかから気づいてくれた。
たぶん、母は自分で喋っていても気づいていない。っていうか、母は父が私を嫌っているだなんて思っていなかったろう。
知人の言葉は衝撃的だったけど、私はとても納得した。
嫌っているのは確かなのに、裕福な家庭じゃないのに。それでも高校生の頃から美術系の予備校に夏休みや冬休みのたびに上京させてくれたし、進学して東京へ行く費用も、学費もだしてくれた。一応、そのための積み立てとかもしてくれてたらしい。
ずっと謎だったけど。知人からの言葉も総合して考えた結果は。
父は、母を愛しすぎていたようだ。独占したかったのだ。
私が生まれてから、母の愛が私へのみ注がれるのが憎くてしかたなかったのだろう。過干渉なくらい面倒見の良い母だった。そう考えてみれば、思い当たることは山ほどある。
不登校なときもあり私がずっと家にいるのも気にいらなかったろう。何しろ私と母は、ずっと友だちみたいに仲良しだった。
そりゃあ、喜んで東京に出すよね。
私は危篤ときいても直ぐには帰省しなかった。嫌われていたし。元より死に目に会う気はなかった。
死の間際、病院で父は母へと特別な告白をし、母に看取られて亡くなった。母はそのときのことを何度も何度も繰り返す。ふたりの時間を邪魔しなくて良かった、と心底思う。
AIイラストはPixAIで生成。