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土手の向こうの世界
土手の向こうの景色を、どうしても見てみたかった。
帰りのバスの時間ギリギリ。乗れなくてもいいか、と。
行きの迎えの車が、今日は珍しく土手沿いを走っていたせいもある。こんなに延々と続く高い土手の向こうの景色が気になった。
そうでなくても、いつもチラチラの見えていたから。見たい気持ちは日々強まっていた。
今日こそ、決行すべき日に違いない!
Googleマップで確認する限り、江戸川だ。
手前の並列している川は、タップリと水をたたえている。まして、土手の向こうは大きな河川!
ワクワクどきどきと、重い荷物もものともせず、何気に長い階段を上がった。
思ったよりずっと高い。
きっと、拡がる見晴らしは、広大なものだろう。
息も絶え絶えで、頂上。サッ、と、視界が開け、確かに広大な景色が拡がった。
でも…
あれ? 川が、水が、みえない?
不意に荒涼とした砂漠にでもいる気分になった。
水量の少ない時期なんだろうなぁ。
晴れてて暑いくらい。晴天に近いような綺麗な青空だ。
どこまでも拡がる単調な景色も悪くない。
しばし、満喫。
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戻ろう。
タップリの水が見えてたら、バスのことなど考えずもっと長居してたろうな。
振り返り、ギリギリ間に合いそうなバスに乗るため舗装された頂上の道路を渡る。
土手を降りようとしたら、さっきまで居たバス停がある側の景色が眼下に拡がっていた。
わぁ、高い場所だぁ!
こっち側は、確かに高い。下のほうに街がある。
そして、なんとまぁ、広大な街だったのだろう。住宅街と工場が拡がる街。でも、都会の景色が現れたように錯覚した。
砂漠、みたいな景色との対比のせいだとはわかっているけど。
一瞬、感覚が騙される。そういうの好き。
タップリと水の見える景色、見たいなぁ。などと思案しつつ。
有難いことに遅れてきたバスに乗れた。
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