地方のローカル鉄道はどうなるのか、またはどうあってほしいか(11) 現在の方向性
こんにちは、ウチで愛用しているトイレットペーパーはこの物価高にも関わらずお求めやすい低価格をキープしてくれてとてもうれしいパスタライオンです。しかし多分絶対確実に"薄く"なっている気がする…そう私のゴースト()がささやくのよ…
ということで今回は、国からの「提言」を受けてJRや自治体はどのようなリアクションをしているのか、JR西日本管内の様子を備忘録を兼ねてまとめてみます。
まずは利用促進を検討
各線区の動きは様々ですが、11月時点では「まずは利用促進策を考える」方向でおおむね進んでいるように見えます。
JR西日本の管轄でそれなりに動きがあるのでご紹介します。
<北陸方面>
*越美北線、小浜線も平均通過人員1,000人/日未満ですが北陸新幹線開業に伴う協議が並行しているため除外します
*各線には利用促進協議会があり、県の地域公共交通活性化協議会が開かれており、JR西日本も関わっています。
・大糸線
当初「廃線ありきではない幅広い議論を行う」とする書面がJR西日本との間で取り交わされ、「大糸線輸送強化期成同盟会」において協議が開始 されました。
(「振興策等を幅広く議論していくことに向けた意見交換」を主旨とする)
[参考リンク]
振興部会設置の経過.pdf (itoigawa.lg.jp)
<近畿方面>
・紀勢線
「紀勢本線活性化促進協議会」の内部に「新宮白浜区間部会」設置し、協議開始しています、学識者委員が「守るべきは目的地へ移動する手段」と指摘するなど、きちんと「提言」を踏まえた議論となることを期待しています。
やはり利活用を目的とした協議会の看板で存廃議論をすることには抵抗があるんでしょうね、でも看板かけ替えてあげれば地元主導でも広域で協議が可能な例かもしれない。覚えておこうと思います。
[参考リンク]
・関西線
「関西本線活性化利用促進三重県会議」
「関西本線木津亀山間活性化同盟会」を組織し、協議を開始。ホームページや議事録は見つからず…
紀勢線もそうですが、JR東海管内との流動も見られる地区はちょっと厄介っぽいです。JR東海が公には乗車人員等のデータを出していないし、JR西の連携力に期待するしかない自治体としてはもどかしいでしょう。
・加古川線、姫新線、播但線、山陰線
兵庫県が「JRローカル線維持・利用促進検討協議会」を立ち上げ、県内で利用の少ない線区を対象にワーキングチームを組織し、沿線自治体がそれぞれ所属。11月中には利用促進策をとりまとめることとしており、やはりこれもまず利用促進を模索する方向です。
(複数の県、支社区域に跨る線区もあり、ひとまず兵庫県側としての動きを例としてご紹介します。)
<中国方面>
・芸備線
ちょっとここは複雑です。直近の経緯を振り返ってみますと…
もともと芸備線利用活性化のために広島県と岡山県、沿線自治体に協議会があり議論や施策が行われていましたが、2022年2月にJR西がとりまとめた報告によれば、施策の効果はなかったとされ、そこからJR西と自治体の歯車が狂い始めます。
それから2022年4月にJR西が「ローカル線に関する課題認識と情報開示について」を発表し、利用の少ない線区が公表されます。これについての知事・首長のリアクションはかなり苛烈でした。JR西は協議を求めますが知事らはこれを拒否、ならばとJR西が国にあらたな協議会設置を要望するとこれを猛烈に批判、2022年11月の「中四国サミット」において国の関与は中立を求めるなどの共同アピールを採択しました。
これまでのところ、国の関与を求めた唯一の事例となっており注目すべき線区であることは間違いないでしょう。
芸備線は、広域自治体としての県を跨いで広島・岡山両県に利用促進のための協議と施策実行への参画を求めており、言ってみればほかの線区よりもおおっぴらに早い時期に動いていたわけです。(2021年8月から)
①利用促進策を協議し
↓
② 〃 を実施し
↓
③実施後の振り返りを踏まえて
↓
④今後のあり方を検討する という
おそらくどこの線区も経ることになるであろうプロセスを①~③まで先行していつつ④は拒否している状態なので、ほかの線区に与える影響もあるのではないかと危惧しています。
・福塩線
沿線自治体で構成する「福塩線対策協議会」において利用促進策を協議中。中国地方は団体・イベント利用の補助(50%ほど)に取り組むケースが多いですね。2022年11月には「ワイン列車」の企画も。国やJRが期待しているのはたぶんこういうことじゃないんでは?って思うんだけどなあ…
(以下の記事は2020年実施の様子。恒例の企画っぽいですね)
・因美線
首長らが協議組織を立ち上げるための会議を開催 残念ながら少し歩みが遅いかもしれません。
力尽きたので今回はここまで!
だいぶ芸備線で力尽きたので今回のnoteはここまで…疲れた、メンタルが。お察しください。 後日加筆していく予定です。さすがにもう12月なんで11月の情報を出すにはギリの時間になってしまい、中途半端すぎるけど公開することを決めました。
まとめ
基本的には、前述のとおり、これからの動きは共通して
①利用促進策を協議し
↓
② 〃 を実施し
↓
③実施後の振り返りを踏まえて
↓
④今後のあり方を検討する という流れに進むこととなりそうです。
芸備線は④のステップに進むのを投げました。芸備線は、というか特段強硬なのは広島県の湯崎知事であろうと思っています。もうあの手この手で主体的に関わらないようバリアを張っている。
極端なまでに、たとえば各線区でワーキングチームを立ち上げた兵庫県とは対応の差が出ています。効果はなかったと結論された利用促進策しか議論しないというのは、議論の実質的な放棄です。
現地の住民のことを考えると、鉄道にこだわってほしいのか、こだわらず地域の交通網を維持してほしいのかそれはわかりませんが、いずれの議論にも資する態度とは思えません。この強硬で、無責任に(私には)思える態度がどう響いてくるか。心配、不安、焦燥、色んな感情が私には渦巻いています。
(付足)これが民主主義の一様態…なのか?
で、地方自治体における行政と議会の関係を見るに、こういった広島県の湯崎知事の行動は「彼個人の政治家キャリア」においては非常に合理的な行動なんじゃないかと思うわけです。すごく悲しいことですが。
利用者が少ない、住民の関心が低い議論に真っ向に向き合っても政治家としてプラスにならず、それはあらゆる言論を駆使して「国の責任」に押し付けるほうが、政治家として合理的行動であって、交通網の維持発展がなされないとしても、そこに関係する住民の数が少ないから票を失うことはないというロジックが成り立っちゃうんじゃないか、という危惧を私は持っています。有権者、利用者、関係者がたくさんいれば今日のローカル線存廃問題なんて起きてないんです。
どれほど県内一地域の交通をないがせにしても行政の県庁も政治家個人としての県知事も評価を落とすこともない構造的な問題があわらになっているように思えます。そこが感じられてしまって、私はとても悲しく思います。
(もちろんこれは私個人の勝手な感受性によるものですし、現時点での話にすぎないのは、ノートしておきます。)
そんなこんなで12月、年の瀬ではございますが議論が少しでも前向きに進むことを願うパスタライオンでした、今回も長文お付き合いくださりまことにありがとうございます。
ローカル線の存廃問題というテーマについての記事をマガジンにまとめています、よろしければほかの記事もぜひ!