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鉄道貨物について知っておいてほしいこと
鉄道貨物を積極的に「残せ」と主張する人に知っておいてほしいことをまとめました。これは国が開いた会議 をもとにしています
(2022年3月~ 7月に取りまとめ)
以前ツイートしたことのまとめになります。ツイートの中で発生したやり取りや、言葉が足りなかった部分を補足してます。画像が多くて見づらいかも知れません、ごめんなさいと先に言っておきます…
(*ちなみに私は鉄道貨物は「消極的な残す派」です。だって残すしかないんだろ?って感じの。)
鉄道貨物は大事だ、残せというのは分かるし「どうやって残すか」の方に舵を切ってるんでそれを考えましょうって感じなんだが
— パスタライオン|紅葉は物思いの鏡 (@PastaLion1) November 4, 2022
JR貨物は荷主にすらこんなかんじに思われてる事自体は、積極的に残せという派のひとには知っておいてほしい pic.twitter.com/arBjxjFMOi
・荷主の使い勝手はどうなのか
お客である荷主から、鉄道貨物はどう受け止められているのか。
↓の資料は、荷主であるF-LINE㈱の資料です。
【他の輸送手段と比較してどのような強み・弱みがあるか】
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リプでは
「鉄道だから定時性に優れていると思っていた」
という声が多くありました。ここは旅客鉄道、貨物物流に実際に従事してないとイメージとしてはそうなるのも無理はないかも知れません。
だって、JR貨物自体がHPでそうやって言ってますからね、仕方ないです。
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ヒアリング対象はENEOS㈱ 「JR貨物様がいらっしゃる前では非常に申し上げにくいのですが、良い印象を保たれていないのが現状であります」
ズパッと言うねぇ……
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他にも、コンテナの規格・種類がニーズと合致しないとか、遅延してもいいくらい余裕時間のあるような荷物は鉄道へ…としたいのだけれど、JR貨物側の集荷配送能力、駅での保管能力、荷役の関係上断られるケースもあり、使おうとしても思惑通りになかなか使えない、という指摘もありました。
とりわけ、Twitterで来たリプでは「鉄道貨物は到着時間が読めないし、遅れたら集荷配送のトラック手配するの大変なんだよ」とか
・国防上大事という議論は・・・
地方のローカル線が存廃の危機にあると報道されるとどこからともなくやってくる「国防上大事!大事なの!」という声をあげる人
実際防衛省はそういう訓練を行っているかというと・・・🤔
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当の防衛省の考えとしても、まだジャストアイデア、机上の段階を超えるものではないというヒアリング結果でした。
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北海道・東北方面の師団を南西部へ輸送するとき、装備や物資を一気に早く大量に、というのが防衛におけるニーズ。実際に貨物列車を使った訓練は頻度は少ないとはいえやっていることをどう受け止めるかですね。
しかしこれは幹線輸送の訓練で、いま取り沙汰されているローカル線にはあまり関係ない話では…
ではもう一方の当事者である国交省鉄道局は、防衛の観点を持っているかというと
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「考えてなかった」らしいです
・そもそもなんで鉄道貨物を大事にするの?
荷主側のメリットの乏しさ、防衛上もあまり練られた構想がない、じゃあなんで残そうとしているのか?という疑問
この「取りまとめ」もかなり上から目線で、一方ではJR貨物の顧客対応やニーズへ応えてこなかったことを批判しつつ、荷主側についても「多少の不便を受け入れてでも社会課題解決のために積極的に貨物鉄道を利用しようとしてきただろうか」と疑問を投げかけています。
パッと見ると「なんで荷主側がそんな事考えなイカンのですか」と思う。ある意味お客さんにも責任を取らせるぞということですからビビります。
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・背景にあるのは物流危機と気候変動
こうまでやる・言う背景には、トラックドライバーの人手不足、とりわけ「2024年問題」がすぐそこまで迫っていること。詳しくは↓
そして、気候変動への対処としてCO₂排出削減目標を達成するためです。
かなり重い社会的責任を鉄道貨物に背負わせるねえ…って感じですが、国はそういう意図でこの会議を開催し、鉄道貨物へのシフト(モーダルシフト)を加速させたいようです。その意図はわかるし、実際この会議にヒアリング対象として呼ばれたのは日本を代表するような大企業ばかりで、ESGやSDGs目標で数値目標としてCO₂排出削減を掲げている企業が多いです。そういったある意味「レベルの高い企業」ですら使いたくても使えない、という声を真摯に聞かないと、使え使えといっても現実には厳しいのではないでしょうか。選ばれていかないし、残っていかない。
自治体が「ノーマイカーデー」とかなんとかを作って、公共交通機関を使えと促しても効果が目に見えない、発展しないのと一緒です。掛け声だけでは世の中変わらんのです。
・荷主が有利になる制度をつくってほしい
荷主の不満・指摘ですぐに動き出せそうなのは、「遅延・障害発生時の情報共有」です、というかそれ以外は大規模な投資が必要となり、すぐには出来ないしJR貨物だけの資力では不可能でしょう。そんなのにえっちらおっちら取り組んでいたら2024年が来てしまいますし、なんなら2030年の進次郎目標の期限も来てしまいます。
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ここからは完全な空想上の私案ですが、荷主にとにかく鉄道貨物を使うインセンティブを与えてほしい。使いたい(環境目標達成のため≒自社の利益のために)という企業はある、でも不便で使いにくい。不便自体を解消するにはお金と時間が必要だから、鉄道貨物を利用することで何らかの優遇措置が受けられるとか、今現在あるCO₂排出権取引制度に参画できる(Jクレジット)ようにするとか、そういう制度を整えるイメージで、国やJR貨物が主体となってなんとか鉄道貨物を利用することの荷主側のメリットを高めていってほしいなと思います。
そしてJR貨物にはまず、この会議で出た指摘に正面から向き合って、ひとつひとつ解決する姿勢を見せてほしいです。駅設備、コンテナ規格、集荷配送、荷役、一筋縄ではいかないことは理解していますがこれらをひとつひとつときほぐし、解決することでしか荷主・顧客に選ばれるサービスとして残っていかない。制度的なものはあくまで補助輪です、顧客に選ばれるサービスであることが主軸です。
社会的責任をこれでもかと背負わされたJR貨物は気の毒だなあと思わないでもないし、頑張ってほしいとも思う。私は「どーせ潰さないんだろ」とネガティブ寄りの感情もありつつ、「残すからには最大限のメリット追求していこうや」と思っています。この、残すからには~というのはいまのローカル線にも同じことが言えると思っていて、だから近江鉄道の例とかが心に刺さる、そんなパスタライオンでした。
ちなみに、冒頭のツイートからたどると貨物ガチの方のリプとか見れるのでおすすめします。では!
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