父の整髪料

明日9月4日にバンド練習があるため茨城に帰ってきた。全くベースの練習をしていなかったので前のりして実家でひたすらベース練習をするという寸法だ。

実家に帰ると、まず2年前に亡くなった父にお線香をあげる。

父の仏壇はもともと父が使っていた壁と一体となっているタイプのクローゼットを改修して作られたもので、その横には化粧台がある。
化粧台そのものは今も現役で、おそらく毎日母が使っているが、化粧台の棚には父が使っていた整髪料もまだ残されている。
想い出を残しておこうという母の配慮だろうか。

整髪料といえば、もともと父は古いタイプの男、否、漢なのでかつてはポマードみたいなものを使って、それはそれは口裂け女が裸足で逃げ出すほどのにおいだった。
それがある時期からものすごくフルーティな香りを漂わせるようになった。それはもう、過剰に。

私が
「なんかすごい甘いにおいだけど、それはいいの?」
と父に聞くと、
「最近買った整髪料なんだ。ちょうどいい粘度で髪がいい具合にまとまるんだ」
と上機嫌だった。

父が亡くなった今、その過剰に甘い香りの整髪料を使う人間はもういない。
私は「父はどんな整髪料を使っていたのだろう?」と化粧台においてあるそれを手に取った。

めちゃくちゃコンディショナーだった。

お父さん、アーメン。

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