オーラルトーンベンダー

今日、歯医者に行った。

歯は自然治癒しないと言うし、ボロボロになって美味しいものが食べられなくなるのはごめんなので定期的に通って検診を受けている。

本日の担当衛生士さんはものすごく丁寧にそして一生懸命にクリーニングをしてくれて、その一生懸命さが痛いほど伝わった。というか痛かった。

しかし、痛いのはその衛生士さんが悪いのではない。

「佐伯さん、出血ハンパないです」

衛生士さんはそう言って私の顔を鏡で写した。
そこにはボコボコに殴られたんかと思うほど口の中が血だらけの自分がいた。
そりゃ衛生士さんも私の出血を大迫扱いするよなと思った。

話によると、歯は白いし歯石とかもないので全然磨けていないということではないが、歯と歯の間の汚れが取れていなくて歯茎がパンパンになっているとのこと。ゴリゴリの歯肉炎とのことだ。
衛生士さんは「血の出し甲斐がありますね」と燃えていた。

そうして施術を受けている中で、今まで歯医者さんで味わったことない感覚が私をおそった。なんかほっぺ(外側)をムニっとつままれたような感覚があった。一体どんなことが口の中で起きているのだろう…。

施術が終わり、歯磨きのアドバイスを受けた。
その過程で衛生士さんに
「割と男の人で無口な人なんかはほっぺが固くなってるから歯磨きしづらいなんてことあるんですけど、佐伯さんは触ってみたらほっぺお餅みたいに柔らかくて。けっこうおしゃべり好きですか?」
と言われた。

あぁ、あれは施術の過程でたまたまそうなったんじゃなくて本当にほっぺムニってされてたんだな、と。そして、おそらく「ほっぺが固いと磨きにくいんですよね」という論法でお話をしようと思って確かめたらお餅みたいな柔らかさで「だとしたらなぜコイツは歯磨きできてないんだ!?」と不思議に思ったのだろう、と。
そんなことを思いつつ、試供品の糸ようじとプロ仕様のマウスウォッシュをもらって帰った。

家に着いて洗面台を見たら、試供品でもらったマウスウォッシュのデカいやつが置いてあった。
オーラルケアに余念がない妻がとっくに買っていたらしい。
そもそも私が歯医者に定期検診に行くようになったのも妻の影響だ。

なぜこのオーラルケアの鬼はオーラルケア弱者の私と一緒に暮らしているのだろうと不思議な気持ちになった。そういう夜だった。

いいなと思ったら応援しよう!