辻くんを作ったバンド
私の大学時代の学部の同期に「辻くん」という男がいる。
辻くんは朝が弱く、寝坊して大学の講義に出ないことが頻繁にあった。
そのくせ「夜勤明けでそのまま大学行けば少なくとも出席はできる」という理論でコンビニの夜勤のバイトを始め、案の定そんな自分に厳しいことは彼にできるわけもなく朝寝坊にも拍車がかかり、たくさんの単位を落としていた。
辻くんはそのバイト先のコンビニの電話を使って、バイト中にも関わらず当時好きだった女の子と2時間くらい長電話してめちゃくちゃ怒られたりしていた。よくクビにならなかったなと思う。
辻くんはそんな適当でふざけた男だが、天然で面白くて友達想いで優しい、そしてめちゃくちゃ歌がうまい男だった。「だった」っていうか別に今でも天然で面白くて友達想いで優しい、そしてめちゃくちゃ歌がうまい男だと思うけど。
私は大学2年のときに軽音サークルに入り、当時どこかのサークルに入ろうか悩んでいた辻くんを誘った。
辻くんは入って間もなくサークルのメンバーで行ったカラオケでその実力を遺憾なく発揮し、「とんでもない逸材がやってきた!」という空気をサークルにもたらした。同時にそんな逸材を連れてきた男として私の評価もちょっとあがった。辻くん、ありがとう。
そんなスーバーシンガー辻くんは一応担当楽器をギターと決めて5万くらいのストラトを購入してサークル内でバンドを組んだのだが、とにかく怠惰な男なので全然練習をせず、上達しないことはもちろん課題曲をまともにやれないのでバンドメンバーに多大なる迷惑をかけ続けた。
ある日、メンバーの一人である先輩が「もう我慢ならん!」とバンド解散を持ち掛け、危機感を覚えた辻くんは少し真面目にギターを弾き始めた。
もともと歌がうまくて音感があり、かつ運動神経もよかった辻くんはギターを弾くときの身体の使い方みたいなものをなんとなく習得し、次第にギターの面白さにのめり込んで、気づいたらめちゃくちゃギターが上達してサークルのエースになっていた。
特に辻くんはブランキージェットシティにハマって、私がベースを担当してブランキーのコピーバンドを組んだ時には派手な柄シャツを買ってパーマもかけて、めちゃくちゃベンジー感を出していた。
ガソリンの揺れ方、3104丁目のDANCE HALLに足を向けろ、D.I.J.のピストル、、、どれもとんでもないクオリティで辻くんはギターボーカルを担当していた。
今でも私は辻くんが一番輝くのはブランキーをやっているときだと思う。
そんな辻くんに、大学4年の時、
「辻くんがギター上達したきっかけになるアーティストって誰だったの?」
と聞いた。
もちろん「そりゃブランキーだろ」という答えを期待していた。
しかし、辻くんの答えは
「あー、ピジョンディテクティブスかなぁ」
だった。
前述の先輩とのバンドは私がリズムギター、辻くんがリードギター、先輩がベースボーカル、同期の女の子がドラムという編成で、先輩が好きな洋楽をコピーするというコンセプトのバンドで、確かに何曲かThe Pigeon Detectivesのコピーをしたことがあった。
The Pigeon Detectivesはリードギターがずっとなんかやってるみたいな曲が多いから確かに練習にはなったろうけど、、、あんた自分からThe Pigeon Detectivesの話をしたことなんて一度もなかったじゃん!となんだか納得いかないもやもやした気持ちになった。
でも、そんなところも辻くんっぽいなぁと思う素敵なところだ。
あ、ちなみにThe Pigeon Detectives自体は大好きです。
車でiTunesをシャッフルで流しているとたまにThe Pigeon Detectivesの曲が流れてくる。それを聞くたびに「あ、辻くんを作ったバンドだ」って思う。
ありがとう、The Pigeon Detectives。
大学時代(2009~2012)以来あんまガッツリは聞いていなくて、久しぶりに映像見たけど、、ボーカル太ったなぁ。
プジョル感が増したね。
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