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PASSTOマガジン VOL.13ファッションとリユース、新しい価値を創造する取り組み。未来の可能性とは?

こんにちは。
PASSTOマガジン編集部のマイです。

8月8日にECOMMITが掲げた「REUSE SHIFT」。記念すべき第一弾としてコスメティックブランドSHIROと協業し、難しいと言われる化粧品容器と衣類の回収とリユースに挑戦しました。

過去に服の回収サービスを利用したことがある人は、回収に出した後の自分の服の行方を見たこと、知ることはあったでしょうか。

このプロジェクトでは、回収した化粧品容器と服を実際にお客様に販売をするというところまで一環して3ヶ月で実施しました。
今回はその裏側をお話をしていきたいと思います。

写真:澤圭太



ファッション業界において問われる“透明性”

ECOMMITは回収した衣類を新たな持ち主へ手渡すところまで実施しているこのPASSTOの仕組みを、第一弾の「REUSE SHIFT」というプロジェクトでB to Cとしてお客様に体験してもらうことができた。

最も見えにくい“回収した先の行方”は、回収した衣類を販売する渋谷パルコでのPOP UP STORE「SHIRO with PASSTO」を実施することで、服の循環を目の前で見ることができた。
それもただ回収した衣類を販売するだけではない。リユースファッションを楽しめるよう、そこにいくつものクリエイティビティを加え、新しいリユースの価値を創造する取り組みなのだ。

「REUSE SHIFT」とは
「一社では起こせない社会の変化を、共に。」というコンセプトで、使い捨てからリユースへの変革を、業界の垣根を超え、一社では実現できない社会の変化を起こすムーブメントをつくる取り組みだ。衣類や雑貨に限らず、PASSTOを通じてあらゆるものが循環される未来の実現を掲げている。

“回収” 
SHIROの店舗を会場に開催したREUSE SHIFT Morning
誰もが気軽にリユースアクションに参加できる場づくり

REUSE SHIFT Morningの様子
REUSE SHIFT Morningのホストによるトークセッション

SHIROと協業してスタートした「REUSE SHIFT」にブルーボトルコーヒーも参画。この三社で実施したのが、身近で、手軽に、楽しくリユースのアクションに参加できるイベント「REUSE SHIFT Morning」だ。2024年9月14日から10月26日までの期間、SHIRO 表参道本店で隔週土曜日に開催した。

イベントでは対象の回収品(*1)をパストするだけでなく、ブルーボトルコーヒーの美味しいコーヒーを飲みながら、さまざまな分野で活躍する人たちがホストとなり、トークセッションや集まった人たちが繋がれるコミュニケーションの場となった。

ホストたちのトークでは“あなたが行っているリユースアクション”や“リユースを広げていくためにはどんなことができるか”など、みんなでアイディアをシェア。

実際の参加者の方々からは「リユースには興味関心があってSNSなどでよく目にしていたけど、足を動かして来ることや体験をすることで、今日を機に何か一歩を踏み出してみようかなという気持ちになりました。」というポジティブな感想をたくさん聞くことができた。

(*1)SHIROの使用済みガラス容器、衣類、ブルーボトルコーヒーのコットン素材トートバッグ

“選別”
リユースファッションの価値を高めるプロによる選別!こだわり抜いたセレクト

ECOMMITのサーキュラーセンターでの選別

このプロジェクトでは、ECOMMITが運営する全国約50以上のPASSTO拠点とSHIROの対象9店舗、ブルーボトルコーヒーの7店舗から回収。

回収された衣類は、ECOMMITのサーキュラーセンターに集められ、PASSTOのプロピッカーが創業から17年で培ってきた知見を基に、リユースの価値をみながら丁寧に選別。さらにはスタイリストの小笠原夏未さんもECOMMITのサーキュラーセンターに出向き、選別された衣類の中からPOP UP STORE「SHIRO with PASSTO」のコンセプトに合うものを1点、1点セレクトいただいた。

小笠原夏未さんは、SHIROの「リユースファッションショー」でスタイリストを務めた山口 翔太郎氏に師事し2020年9 月に独立。現在は東京を拠点に、雑誌や広告、ファッションブランドのビジュアルを中心に活動中。

小笠原夏未さん「PASSTOで回収された服が持つ魅力は、老若男女さまざまな人から集まってきているので、ジャンル問わず色々な種類の服の中から選べるということです。」

「POP UP STOREの場所が、流行に敏感でファッションが好きな人が集まる渋谷PARCOだったので、そこに集まる人が気に入るような服をセレクトすることを意識しました。例えば、アウトドアなどカジュアルな服であれば、青山で普段買い物しているような人も好むようなアウトドアアイテムなど、人物をイメージしながら選びました。」

トレンドを知ることでリユースの価値を高めることができる。

「トレンドは10年ごとに移り変わると言われていますが、例えばCourrèges(クレージュ)やDIESEL(ディーゼル)は再トレンド化しているブランドです。過去のコレクションでも、今そのブランドを買いたいと思っている人からすると、価値の高い服です。

また、ブランド品でなくてもウールやカシミアなどの素材や、色やシルエットが今の時代に合っているものはセレクトしました。トレンドのタイミングに合わせたセレクトによって、リユースの服の価値を上げることができると思います。」

渋谷PARCOでのPOP UP STORE「SHIRO with PASSTO」
服のセレクトだけではない、リユースの服の価値を上げるため陳列方法にまで工夫している。

「服を店舗に並べるとき、チームの皆さんと陳列方法を話し合いました。さまざまな方法を試したなかで、色別に分けて陳列することで空間が上質でモダンに見えるようになったのです。」

持ち主が着用していた時の想いを知り買うことができるのも、この企画だからこそできること

PASSTOでは、回収品の思い出についてインタビューをする「The Story of PASSTO」という企画がある。この「The Story of PASSTO」で紹介した服たちもPOP UP STOREに並び、持ち主の想いをともに服を手にすることができた。

さらにPASSTOマガジンにも登場してくれたベイカー恵利沙さんは普段からリユースファッションを楽しんでいるお一人。マガジンでは回収品の中から、ベイカーさんにお気に入りのコーディネートの組み合わせと、着こなしのポイントを教えてもらい、POP UP STOREで販売した。

セレクトした服を全てクリーニング
SHIROがつくる香りをまとって店頭に並ぶ

リユースの服は、SHIRO の限定アイテム『ゼロムスクサボン ファブリックアイロンミスト』の香りをまとって販売した。

SHIROはリユースの服を新しい付加価値をつけて販売するのであれば、香りをプロフェッショナルに扱うブランドとして、服に香り付けをすることにした。
それは、普段からリユースやヴィンテージの服を選ばない人にとって、独特の匂いが気になる人にとってもリユースファッションを取り入れやすくなったはずだ。

SHIRO PR 河合さん「SHIROは2024年にブランド誕生15周年を迎え、すべての資源の価値を見つめ直し、本質的な循環のため廃棄物ゼロを目指す【SHIRO 15年目の宣言】をしました。
そして、リニューアルなどの理由で使えなくなった香料や、容器などの資材から限りある資源によってつくるからこそ、二度と同じものをつくれない「ZERO COLLECTION FRAGRANCE」が誕生しました。」

「今回リユースの服を販売するにあたり、SHIROの製品もリユースに寄り添ったものにしたいという想いから、「ZERO COLLECTION FRAGRANCE」から2種の香りが生まれたのは自然な流れでした。香りもリユースの服に纏わせたい香りを考え、“ゼロムスクサボン”が誕生しました。」

「“ゼロムスクサボン”の香りは、清潔感のあるサボンにムスクを合わせ、パウダリーな甘さが香るのが特長です。ジェンダーを感じさせない香りなので、服との相性もぴったりでした。」

製品の開発から服への香り付けまで全てにおいて、ストーリーが繋がっているのがSHIROのものづくりの考え方なのである。

“販売”
新たな価値をまとった、
リユースファッションの提案

こうして、新たな価値をまとったリユースの服たちは、2024年11月15日(金)〜11月27日(水)に渋谷PARCOにて開催されたPOP UP STORE「SHIRO with PASSTO」に並んだ。

パストされた衣類のほか、SHIROが北海道砂川市にあるみんなの工場で行った「リユースファッションショー」のランウェイに登場した服も販売。

また、東京を拠点に世界へ向けて発信する国内のファッションブランドの中から10ブランドが、この取り組みやPOP UP STOREのコンセプトに共感いただき、通常では手に入らないサンプル、デッドストックなどの希少なアーカイブスコレクションの服が並んだ。

そしてSHIROからは、リユースの服に香りつけした『ゼロムスクサボン』のほか、『ゼロホワイトフィグ』の限定フレグランスが登場。
いずれも、SHIROの回収アクションによってお客様から集まった使用済みガラス容器を洗浄し、香りやオイルを取り除いて繰り返し使い続けられるようになったガラス容器をリユースしている。

SHIRO PR 河合さん「回収したガラス容器は新しい製品のため、ラベルを貼ったので傷が見えにくいのですが、底の部分が傷ついていたり、角の一部が傷ついているものもありました。
リユースボトルであることにネガティブな反応を示すお客様はほとんどいらっしゃらず、中には“愛着がわくから”という理由で、あえて傷がついたガラス容器の製品を購入されるお客様がいらっしゃいました。SHIROの取り組みを理解し共感してくださっていることが感じられ、嬉しかった出来事の一つです。」

これらの製品には、製品情報など更新しなければならない部分だけにラベルシールを貼っている。よく目を凝らして見ると、元々の製品情報が透けて見える。これもまたリユースボトルであることに愛着を感じながらも、リユースに懸念を持つことなく手に取れるSHIROのクリエイティビティである。

そしてこのリユースボトルのラベルシールは全て工場で手張りをしているそう。手間と時間がかかっていてもこれを実行するSHIROの想いと愛が詰まっているのだ。

リユースファッションの未来にある可能性

何か素敵な服はあるかなと、ワクワクした気持ちで来店し、実際にお気に入りの服を見つけたときのお客様の表情。素敵な服を見つけたときのワクワクする気持ちは、新品でもリユース品でもそこに気持ちの差はないのではないだろうか。

価格帯や、今まで手にして来なかった新しい服への挑戦のしやすさ、レザージャケットなどのアイテムは、新品のものより使い込まれた方が味が出てかっこいいなど、リユースだからこその魅力がたくさんある。

小笠原夏未さん「リユースの服の魅力は、良い物が安く手に入ること、人と被らないものを手に入れることができますよね。それに時代を遡り、過去のデザイナーのデザインや製法、素材など、今では手に入らないものも手に入るのが魅力です。」

SHIRO PR 河合さん「リユースとドメスティックブランドの服が売場の中で一緒になって並んでいましたが、お客様はその差を感じていらっしゃらなかったと思います。それはリユースの服の状態が綺麗で、クリーニングがしてあったからだと思います。また、付加価値としてゼロムスクサボンの香り付けをしていたことも魅力の一つだったのかも知れません。」

今回の取り組みを経てチームが共通して感じていたことは、どれだけリユースの服に付加価値が付けられるかということ。セレクトや見せ方、ストーリーテリングを通して、リユースにしかないファッションの楽しみ方や魅力を提案することができるのだ。

今回のプロジェクトでは衣類を手放すためにパストすることも、パストされた服を購入することも、どちらに参加してもリユースを楽しんで頂けたのではないでしょうか。これは参加してくれた皆さんと一緒につくり上げたムーブメントである。

そして今まで目にすることができなかった衣類の回収した先を皆さんに見ていただくことができ、パストしたことがある人も、これからパストしてみようと思った人も、安心して大切に着た服をパストしたいと思ってもらえたら嬉しいです。

売る?捨てる?パストする!