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PASSTOマガジン vol.5 | サステナビリティ消費は本当にありえるのか?
みなさんこんにちは。
PASSTOマガジン編集長のガクです。
今回のテーマは「サスティナビリティ消費は本当にありえるのか?」ということで、5月16日にTENOHA代官山で開催したイベントの一部をご紹介します。
写真:澤 圭太
イベントについて
この日、TENOHA代官山の1階は多くの人で賑わっていた。
PASSTOを運営するECOMMITが開催するイベントに参加するため、企業のESG・サステナビリティ担当者や商業施設・不動産などの運営に携わる参加者が集まっていた。
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「サステナビリティ消費は本当にありえるのか」をテーマに、最新の企業の取り組み事例を用いて、暮らしや消費の変化を考える。というのがイベントの主題だ。
具体的にはPASSTO利用者の意識・行動変容などの調査結果や、イオンモールが取り組む、「まちの資源循環」の取り組みを紹介。最後にはトークセッションという形式で登壇者の意見交換が行われた。
登壇者紹介
株式会社ECOMMIT
取締役CSO(Chief Sustainability Officer)・ESG推進室長
坂野 晶
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エシカル協会 代表理事
末吉里花
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イオンモール株式会社
戦略部 ESG推進グループ マネージャー 森本 満(左)
戦略部 ESG推進グループ 手塚 真紀子(右)
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PASSTOユーザーは環境意識が高いのか?
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まずはECOMMITの坂野晶の自己紹介、ECOMMITやPASSTOの説明からはじまり、国内のごみ問題についてもこう触れている。
坂野「日々たくさんごみが捨てられますが、洋服だけでもその量は日本で年間47万トンです。それらを燃やすごみとして捨ててしまっているという人が7割近くいます。ではなぜ捨ててしまうのか?それが簡単だからというのが理由なのです。だからこそ、身近に資源循環の仕組みにアクセスできることが必要だと、そんな思いでPASSTOは生まれました」
続けてPASSTOを利用するユーザーの意識・行動調査結果の発表が行われた。その内容の一部をここで紹介しよう(調査結果の全体像は下記リンクより)。
PASSTOユーザーは環境省の調査結果と比べ、衣服を手放す手段として「廃棄」を選ぶ人が大幅に少なく、リユースや資源回収を活用していることが多いことが分かった。
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また、衣類回収ボックスの利用同機については1位が「環境に貢献できると思ったから」、2位が「『次の人につなげる』というコンセプトに共感」という結果に。
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続いて回収ボックス利用による意識変化については、「捨てる以外の選択肢を考えるようになった」、「無駄にものを買わないようにするようになった」、「環境課題についてより考えるようになった」の3つが1~3位を占め、利用者の環境意識や行動に影響を与えていることが分かった。
坂野「手放しやすいから、逆にどんどん新しいモノを買ってしまう、というのは本来の目的からちょっと離れてしまうので、このように手放すという行為とセットで、意識や行動が変化しているということをとても嬉しく思います」
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「まちの資源循環」イオンモールの取り組み
続いて企業の取り組み事例として、森本さんと手塚さんからイオンモールの「まちの資源循環」について紹介された。
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手塚「私たちは『まちのアクション』と名付け、地域の方々とともに持続可能な社会に向け、脱炭素、資源循環、生物多様性という3つのテーマで取り組みを行っています。それぞれ『まちの発電所』『まちの資源循環』『まちのいきもの+(プラス)』という名前で取り組んでいます」
イオンモールでは、事業活動の中で多くの廃棄物を出し、イオンモールをとりまく地域でも同じようにたくさんのごみが出る。しかし、それをごみではなく資源として循環する社会を目指し、利用者・店舗・地域社会との共創によって実現させていくことを目指しているのが「まちの資源循環」だ。
循環型社会の拠点となる「サーキュラーモール」を目指し、全国のイオンモールで衣料品の回収などに取り組んでいる。
イオンモールが資源循環を進める上で推進しているのが「6Rs」だ。
一般的には「3R = Reduce(リデュース):減らす、 Reuse(リユース):再利用する、 Recycle(リサイクル):再資源化する」という概念が広く知られているが、それらに下記3つのRを足した概念だ。
Rethink(リシンク) : もう一度考え直す
Repair(リペア):修理して使う
Returnnable(リターナブル):元に戻す
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次に、資源循環の取り組みとして、下記4つの取り組みが紹介された。
①プラスチック容器の回収
②リユースカップサービス
③「サステナアクション」NOカトラリーアクション
④衣料品・雑貨類の回収
①はシャンプーやお菓子の袋など自治体でリサイクルルートが確立されていないプラスチックをリサイクルする試み。
②はイオンモール内の飲食店が使用するプラカップの廃棄を防ぐため、どこでも借りて、どこでも返せるコンセプトのリユースカップのサービス。
③では飲食物のテイクアウト時にカトラリー類を使用しない利用者に対して、エコチケットをプレゼントしたり、家庭で発電した余剰電力をイオンモールで利用する取り組みも行っている。
そして、PASSTOと連携して行っているのが④の衣料品回収の取り組みだ。
手塚「ECOMMITは『資源の循環商社』、イオンモールは『サーキュラーモール』と同じ志を持った企業同士、一緒に資源循環の取り組みを広げていきたいと考えています」
現在イオンモールではPASSTOと連携し、各店舗に衣類や雑貨の回収ボックスを設置して資源循環の取り組みを行っている。
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手塚「衣料品回収の目的としては、テナントの多くを衣料品店が占める中、衣類の廃棄問題についてモール主導で資源循環に取り組むことで、課題解決のサポートとなれば思っています。これまではイベントとして実施していましたが、2023年から一部店舗で常設回収を開始、今年2024年から全国での展開をスタートしました。今後は回収だけでなく、イオンモール内で再生し循環させること、そしてしっかりと事業として成り立たせることを目標としています。これらをPASSTOと一緒に取り組んでいきたいと思っています」
登壇者によるトークセッション
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ここから末吉さんも加わり、「みなさま、こんばんはー!」と元気の良い第一声からトークセッションがはじまった。
はじめに末吉さんが紹介したのは、「気候変動対策」に対する世界と日本の考え方の違いを表すグラフだ。
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グラフを見ての通り、世界と日本では大きく気候変動対策に対する認識が異なる。このことについて、末吉さんはこのように語る。
末吉「なぜこのような結果になったのか、私自身とても悩みました。最近消費者の方から『消費者の意識・行動変容と言われると、今まで自分がやってきたことを否定されると感じて思考が停止してしまいます』と言われることが増えてきています。なので、こういった取り組みは自分たちの生活や未来をポジティブにし、ワクワクするものなんだということを伝えていけるといいなと思っています」
今や、Z世代と呼ばれる若い世代にとっては環境問題は最も関心のあるトピックの1つになっており、昨年の18-24歳を対象とした調査では初めて「地球温暖化」が関心のある社会問題の1位となった。さらに若い中学生は学校の授業で学んでおり、「エシカルネイティブ」としてこどもから親が学ぶ現象が起こっているという。
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末吉さんが代表理事を務めるエシカル協会では「エシカル白書 2022-2023」を発行しており、エシカルな商品・サービスに関する調査を行っている。その中で、エシカルな商品・サービスを購入したくない理由として1位の「購入したくない理由は特にない」に次いで、「どれがエシカルな商品・サービスなのか分からない」、「本当にエシカルなのかどうか分からない」という回答が2位と3位に挙がっていた。
このことについて、イオンモールでの事例から手塚さんがこのように語った。
手塚「企業と消費者、お互いに誤解があるのかなと思いました。私たちの事例でも、イベントで衣料品回収を行なっていた時に参加者に商品券をプレゼントしていたのですが、『それって本当に環境にとっていいことなの?』という問いから商品券を廃止した経緯があります。実際にはインセンティブがなくても参加くださる方も多い一方で、それだけでは拾いきれない部分もあり、できる限り多くのお客様に参加いただくための仕組みが、『どうせお店に来て買って欲しいからでしょ』と誤解を招いてしまうことも事実としてあります」
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手塚「結果的には、インセンティブがない方が利用者が増えるというポジティブな反応がありました」
このように必ずしも生活者がインセンティブのみを求めているわけではないということが触れられた。さらに、生活者の環境意識についての話題に。
坂野「特に子育て世代など、忙しい人にとっては細かい事に気を配る余裕が難しくなりがちですよね。でも、普段の生活の動線上にきっかけを作ることがとても大事だなと思っています。先ほどもありましたが、『意識を変える』ってすごく難しいことだと思います。逆に『行動を変える』ことで後から『意識が変わる』こともあるし、むしろそいうケースの方が多い可能性だってあるので、私たち企業がそういったきっかけづくりをしていくことが大切だなと考えています」
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末吉「そうですね。私自身、フェアトレードとの出会いが活動の原点なんですが、とっても可愛い白いワンピースが欲しくて訪れたお店が『ピープルツリー』というフェアトレードのブランドで、まさに『可愛い』と思って購入したことがフェアトレードを知るきっかけになりました」
続けて、ヨーロッパでのサーキュラーエコノミーの状況や生活者の姿勢についてなど、末吉さんから語られた。
末吉「ヨーロッパのモノづくりでは、最初に作る時点でリサイクルしやすい、または修理しやすい設計にされています。消費者側も『買ったものは修理して長く使う』という考えが浸透しています。個人的な印象としては、ヨーロッパは高い目標を掲げることが多いのですが、もちろんできないことも多々あり、その都度やり方を修正しながら100点ではなくとも前進しようとしています。一方、日本では完璧ではないとやらないケースが多く見受けられ、このことから、『パーフェクション(完璧)』ではなく『プログレス(前進)』が大事なんだということを学びました」
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企業ができることについて、イオンモールの手塚さんが「まちの資源循環」のボックスデザインについてこのように語った。
手塚「生活者がワクワクして取り組めることがとっても大切だと思っています。『まちの資源循環』では利用者がポジティブに取り組めるように、ゴミ箱に見えないようなデザインを心がけました。そこから『街』をコンセプトに家をイメージしたボックスが出来上がり、不要品が集まっていく様子も見てほしいと考え窓もつけました。色もこだわりがあって、SDGsの『12 つくる責任、つかう責任』のカラーに着想を得て、最終的にみんながワクワクするようなボックスに仕上がりました。まわりのみなさんの反応もとても好評でした」
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Q&A
最後はイベント参加者からのQ&Aセッションの時間に。ECOMMITやPASSTOのビジネスモデルや導入あたっての質問などがいくつかある中、イオンモール「まちの資源循環」の今後の展望についての質問が上がった。
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手塚「まず1つ目は、回収した衣料品をアップサイクルし、テナントの方に使ってもらえるようにしたいと考えていて、さらにそこから販売できる仕組みを目指しています。もう1つは、私たちの施設ではイベントスペースがあり、企業を巻き込んで環境活動に関するイベントを開催していきたいと考えています」
その他、「エシカルを伝えるためのポイント」についても参加者から質問があった。
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末吉「今の時代って、これまで『善』とされてきたことが『悪』になったり、その逆もあったりと、ものすごく価値観が多様化しています。その中で、人それぞれの『正しさ』がありエシカルを伝えるのは難しくなっているように思います。その『正しさ』の確からしさとはとは何か?ということをみんなで考えること自体がエシカルだと考えています。自分たちでどんな社会を作っていきたいか、みんなで考えて理想を求めていく姿勢こそがエシカルの本質なのではないかと思っています」
ここでイベントが終了を迎え、会場が大きな拍手に包まれた。
終了後も会場では多くの参加者が残り、登壇者や参加者同士の会話で賑わっていた。
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いかがでしたでしょうか?
イベントでは合計で約90分のトークが行われ、残念ながらその全てを記事で紹介することはできませんが、生活者ができることをはじめ、みなさんに知ってほしいことなどを中心にご紹介しました。
とにかくまずは「行動」してみること。その言葉が何度も様々な表現で対話されていました。行動しながら必要があればその都度修正し、常に自分自身や周囲と会話をしていくことが、多様な価値観が存在する今を生きる私たちに必要なことなのだということをイベントを通じて学びました。
100点でなくてもいい。できることからはじめてみませんか?
売る?捨てる?パストする!
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