『アンガーマネジメント』
「怒り」の性質とそのコントロール方法について、簡潔明瞭にまとめられた一冊。
⬛︎こんな人におすすめ
・職場や家庭で怒り任せな言動をして後悔したことがある方
・管理職、マネージャークラスの方
・怒りっぽい上司に頭を悩まされている方
⬛︎はじめに
管理職に就いている方の中には、次のようなジレンマに陥っている方も多々いらっしゃると思います。
「パワハラに該当するような言動だと言われていても、若かりし頃に『これはこうするものだ』と教わってきたために、自身の振る舞いを変えられない。」
本書ではこうしたジレンマから脱するため、「怒りのメカニズム」「なぜ怒りが発生するのか」「どのように怒りをコントロールするの」かについて、体系的に記述されています。
⬛︎怒りの仕組み その1
怒りとは、身を守るための感情(防衛感情)。
動物には、心身の安心安全が脅かされそうになった時に怒りを持って対応するという本能が備わっている。
そうした怒りは、高いところから低いところへ流れる。(上司から部下、親から子、姉から妹)
そして、怒りは身近な対象に対して一層強くなる。
⬛︎怒りの仕組み その2
(コアビリーフ)
自分にとって譲れない価値観、信条、信じているものを『コアビリーフ』と言う。
言い換えるなら、各人が持っている『べき』。
(こうすべき、こうあるべき)
この『べき』が破られた時に、人は怒りを抱く。
⬛︎怒りの仕組み その3
(『べき』の3つのポイント)
①正解・不正解はない
自分の常識と誰かの常識が同じとは限らない。
自分の「こうあるべき」が叶わない時に、「普通・当然・常識・当たり前」等といった言葉を使っていたら要注意。
相手に自分の『べき』を押し付けている可能性がある。
②人によって程度が違う
「ちゃんと・しっかり・もっと・相手の立場になって・誠意を持って」等、程度を表す言葉には、人それぞれイメージに程度差がある。
③世代や環境・時代によって変化する
⬛︎怒りの仕組み その4
怒りは二次感情であり、怒りの裏側には、ネガティブな感情が潜んでいる。
不安・心配・困惑・落胆・虚しさ・悲しさ等。
これらを一次感情と言う。
本来はこの一次感情を素直に表現できれば良いが、怒りエネルギーが強力なために、ついつい怒りの態度をとってしまう。
⬛︎ここまでのまとめ
私たちは怒り任せで自身の『べき』を相手に伝えてはならない。
怒りを感じた時に、もし言葉にして伝えるならば、「こうあるべき」ではなく「こうしてほしい」という要望と「今それによってどんな気持ちなのか」、この2つを伝えたほうが良い。
そして怒りの仕組みが分かると、いざ怒りを感じた時に、相手にどう伝えたら良いかわかるようになり、誰かに怒りをぶつけられた時にも、相手の一次感情が分かるようになる。
⬛︎アンガーマネジメント実践編
(1)対処法
イラッとした時に有効な、怒りに任せて行動しないためのその場を凌ぐテクニック。
【6秒間やり過ごす】
怒りが生まれてから理性が働くのに6秒程度かかると言われている。
その6秒をやり過ごすための2つのテクニックが以下。
①怒りを数値化する
0点が全く怒りを感じていない状態、10点が人生最大級の激しい怒りを持った状態として、その怒りを数値化する。
脳が点数を付けることに意識を向けている間は、怒りに任せた行動ができなくなるとともに、これを続けると、怒りの傾向が見えてくるようになる。
②心が落ち着く言葉を言い聞かせる
怒りを感じ時に心が落ち着く言葉ならなんでもOK。
「なんとかなる」「大丈夫」「所詮は仕事」等々。
(2)体質改善
怒りにくくなるための長期的な取り組み。
【怒りを記録する】
怒りを感じたらその場で以下を冷静に記録する。
・日時
・場所
・出来事
・思ったこと
・怒りの数値
記入例
・2月20日14時ごろ
・職場
・部下が提出してきた提案書に誤字脱字が数ヶ所あり、顧客名さえも間違えていた。
・提案書は提出する前に見直しすべき。顧客の名前は間違えるべきではない。なぜ見直しをしないのだ。
・3点
客観的に怒りと向き合えられるようになり、ある程度これを続けていくと、自分の怒りのパターンがわかるようになる。
そうすると、新たな怒りを感じた時に「あ、またこのパターンか。」と瞬時に省みることができるようになる。
⬛︎他人から怒りをぶつけられた時の考え方
他人から怒りをぶつけられた時に、悶々と内側に溜め込んでしまい、思い詰めてしまう人もいる。
そうならないように心がけるべきことは、「この人が言っていることは、この人の主観で判断した『べき』なんだ。」と客観的に割り切ること。
⬛︎クレームや板挟みにあった時の考え方
最終決裁権がない立場で怒りの板挟みにあった時は、「私は上司や担当者への橋渡し役だ。」と客観的に対応する意識を持つ。
⬛︎面倒な人に対峙する時の考え方
面倒な人に対峙するときは、その人を異国の人だと捉える。
自分と違う国から来たのだと思えば、何か違いがあっても「こういう時、この人はこう思うのか。」と考えることができる。
そして「なるほど。異国の人はこういう言葉を選ぶのか。」とソフトな受け取り方ができるようになり、この人には悪気がないのかもしれないと寛容になれる。
⬛︎マネジメント層の心得
イライラした雰囲気を醸し出さないように留意が必要。
自分が無意識に放っている空気を周りは敏感に感じ取ってしまうため、日頃から穏やかな雰囲気、朗らかな佇まいを心がける必要がある。
テクニック①
1週間に一度でも、「今日1日は穏やかな自分を演じよう」という日を作ってみる。
自分はどんな表情で1日を過ごすのか、どんな態度で、どんな表情で、どんな言葉を発するのか、、、1日意識してみるだけで、様々な気付きがあるはず。
テクニック②
口角を上げて作り笑いをする。
作り笑いをするだけでも、副交感神経の働きが活発になり、自律神経が整い、その結果、感情の落ち着きを取り戻すことができる。
⬛︎想像力が欠ける人への対応
想像力の欠ける人には、背景まで細かく説明する必要がある。
つまり、「これをすることによって、どのような影響を及ぼすのか」というイメージが湧くように伝える必要がある。
ここまで言わないとわからないこともあるのだ、と割り切る選択をした方が、無用な怒りを覚えることなく、精神衛生上も建設的にことが進む。
⬛︎最後に
本書の中で特に大事なことは、『自分が長年大切にしてきたのと同様、相手もコアビリーフを大切にしてきた背景がある』ということ。
だからこそ、自分とは異なるコアビリーフにも耳を傾けるゆとりを持ち、話し合う姿勢が大切になります。
そして、この「ゆとり」を持って、冷静にことを進めるために必要なのが『アンガーマネジメント』
本書で紹介されている手法は、明日からでも手軽にできる内容でしたので、関心を持たれた方は、ぜひ本書も熟読し、実践してみては。