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スリランカ旅③-3:スリランカのお正月と占星術について
続いては北東あたりの町。
ポロンナルワ - Polonnaruwa
このエリアは、遺跡とはいえ、それを忘れるくらい幅広い年齢層が集まる明るい広場のような雰囲気だった。特に、地元の中高生くらいの若者たちが多く、まるで遊び場や溜まり場のように楽しそうに過ごしていた。
彼らと目が合うたびに「AYUBOWAN(こんにちは)」と交わすやりとりがあり、それがなんとも心地よかった。スリランカの中でも空気が澄んでいて、光も美しかったからか、滞在時間は短かったのに強く印象に残っている。
一つの場所に多くの遺跡が集まっているのも魅力的で、歴史好きはもちろん、特に意識せず訪れた人でも楽しく歩き回れる場所だった。
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伝説によると、高窓から太陽の光が差し込み、かつて内部に飾られていた宝石サファイアによって光が乱反射、そして薄暗い部屋の周囲の仏像を独特の輝きで照らす演出が施されていたらしい。侵略や略奪によって現在はその豪華な装飾も無くなり目にすることはできないらしい。
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外周に描かれているゾウ、馬、アヒル(ガチョウ)、ライオンはそれぞれ象徴的な意味を持ち、これらの動物たちは仏教の教えに基づいて輪廻(サンサーラ / Samsara)を表している。輪廻とは、生と死が永遠に繰り返される無限のサイクルのこと。ムーンストーンの中央付近には蓮の花が描かれていて、これも重要な意味を持つ。蓮は泥の中から育ちながら美しい花を咲かせることから、煩悩に満ちた世界から抜け出し、悟りに至る道を象徴している。泥が煩悩、花が悟りという感じ。スリランカの仏堂や宮殿に入る前に必ず見かけるムーンストーンは、その場所に入る際の神聖な境界線としての役割があるそう。人々はこの石を踏むことで俗世から離れ、聖域に足を踏み入れるという意識を持つそうだ。
スリランカのお正月と占星術について
驚くかもしれないが、スリランカでは占星術(アストロロジー)が人々の生活に深く根付いている。単なる個人の運勢占いではなく、国家の重要な行事や決定にも影響を与えるほどの存在だ。
例えば、大統領の就任式や国の政策決定も、占星術師の助言をもとに最適な日時が選ばれる。個人レベルでも、結婚や引っ越し、ビジネスの開始など、人生の節目は占星術によって導かれるのが一般的。そして、スリランカのお正月「シンハラ・タミル・ニューイヤー(Aluth Avurudu)」もまた、占星術師が計算した宇宙の動きによって日程が決まる。
スリランカのお正月は太陽暦
日本のお正月が1月1日(グレゴリオ暦)に固定されているのに対し、スリランカでは太陽暦が基準。太陽が魚座から牡羊座へ移る瞬間を新年の始まりとみなし、毎年4月12日〜14日頃にお正月を迎える。そのため、毎年少しずつ日程がズレるのが特徴的だ。
また、スリランカのお正月には「無活動の時間」がある。これは、太陽が魚座から牡羊座に移動する間、どちらの星座にも属さない時間帯で「中立の時間(Nonagathe)」と呼ばれる。この時間は、新しいことを始めず、瞑想や家族との時間を大切にする時間とされている。
すべての儀式のタイミングも占星術で決まる
新年の祝い方にも占星術の影響が色濃く表れている。例えば、
「午前11時42分に新しい火をつける」
「午後1時27分に家族で初めての食事をとる」
といった具合に、新年の儀式のタイミングが細かく設定されている。これは、スリランカ国内でも地位の高い占星術師が太陽の位置や月の動き、惑星の配置を計算し、最適な時刻「ラガナ(Lagana)」を割り出すことで決まる。この時刻を守ることで、新しい1年が幸福に満ちたものになると信じられている。
自然と占星術が結びつく理由
スリランカの占星術文化の背景には、農耕と自然のサイクルも深く関わっている。4月は南西部の乾季が終わり、最も暑い時期。そして、収穫が終わり、一息つけるタイミングでもある。収穫を終えた人々が家族と食べ物を分かち合い、新しい1年に感謝しながら迎えるお正月。これは、日本の「五穀豊穣」を祈る文化にも通じるものがあるかもしれない。
日本でも月の満ち欠けで農作業を行う文化があるが、スリランカのように占星術が国の伝統としてここまで深く根付いているのは新鮮で面白い。
太陽と星々が教えてくれる新しい1年の始まり。そう考えると、ちょっとロマンチックかもしれない。
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