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o4ne37
『時々、慈父になる』by 島田雅彦
島田雅彦の『時々、慈父になる』を読んだ。
『君が異端だった頃』の続編とも言うべき、自伝的私小説。
フィクションであると断りがあるが、著者曰く内容はほぼ事実であるとのこと。ただ、どうしても事実通りにとはいかないところを脚色するのでフィクションということにしているそう。
島田雅彦の著作を読むのは、昨年読んだ『パンとサーカス』以来となる。
『パンとサーカス』は、首相が暗殺されるという内容が、刊行された時期と某首相暗殺と重なり、もしや予言か?と話題になったものだったが、『時々、慈父になる』のなかではそのことにも触れ、小説家は占い師のようなものだから、そんなこともままあるのだと実にクールだった。
そして、芥川賞選考委員を打診されるにあたって、自分が四度候補に挙がり、結局受賞できなかった経緯を知ってのことか?と担当者に詰め寄り、受賞に強硬に反対していたのが開高健ともう一人だったと白状させてやっと引き受けたところが、とても人間臭くて面白かった。
それにしても、島田雅彦がこれほど子煩悩であったとは。
発達障害の傾向があった息子に合った進路を模索し、慈しみ、時には突き放し、大学卒業に至るまで陰に日向に行く末を見守る。
そして、わが子だけでなく大学で教鞭と取りつつ学生を指導し、日本の行く先を憂え、時には矢面に立って旗を振り、優しいサヨクぶりをそれとなく発揮する。
なぜこれまで気づかなかったのかと、自分でも不思議に思うけれど、その考えや行動が実に私好みなのだ。Twitterもフォロー。
以前読んで、もう内容は忘れてしまった著作ももう少し読み返してみることとする。久しぶりに考える題材が色々出てきた気がした。
https://ddnavi.com/book/4087718344/
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