FP1級実技面接 学科合格からの橋渡しガイダンス(2025年2月受検用)
FP1級合格の最終関門である実技試験(金財)は、合格率が約85%。
しかし、「面接試験」ということで、苦手意識を持つ方もいます。
また、この試験については、「謎が多い」「情報が少ない」などの噂も駆け巡っており、不安を募らせている方もいることでしょう。
しかし最近は、noteの当サイトや合格者の面接体験記によって、面接の中身や設例の傾向など多くの情報を得ることができるようになりました。
また「面接試験」であることを理由にした苦手意識には、この試験の本質を考えると、やや違和感を感じます。
FP1級実技面接合格の鍵は、実は面接の前の15分間の設例読み取りにあると私は考えています。
試されているのは、制限時間内の情報処理力と問題解決力。
実技面接ではそのアウトプットが筆記ではなく口述(簡潔に答えを述べる)であるだけなのです。
このような試験の本質をよく捉え、最新の傾向分析に基づく適切な方法で集中的に学習すれば、FP1級実技面接は実質1カ月ほどの準備でも十分に合格圏内に入ることが可能です。
学科合格直後のこの時期は、まず実技面接の本質を知り、合格へ向けての大局観を持つことが肝要です。
このガイダンスを読み、正しい方向性で勉強をスタートさせましょう。
FP1級実技面接の概要
Part I (相続・事業承継)とPart II(不動産)について、面接形式の試験が行われます。
試験会場では、受検生が8名〜10名のグループに分けられ、グループごとに、Part ⅠとPart Ⅱの面接がそれぞれ1人ずつ同時進行で実施されます。
そして、Part Ⅰが一巡したらPart Ⅱへ、Part Ⅱが一巡したらPart Ⅰへという流れで、1人2回の面接が実施されます。
※ 8名のグループでは、まず、Part IトップバッターのAさんとPart ⅡトップバッターのEさんの面接が行われ、Part IはBさん→Cさん→Dさん、Part ⅡはFさん→Gさん→Hさんと続き、一巡したら、今度はAさん がPart II、EさんがPart Iで、また順番に面接していくという流れです。
面接試験の内容は
① 面接控室で、そのPartの設例を読む(15分間)
② 面接室で、面接官からの質問に答える(12分間)
これが27分間×2回(Part I +Part II)行われます。
面接官の先生は2名で、ひとりは質問担当、もうひとりは書記担当です。
採点は2人がそれぞれ別々に採点して平均化するか、協議してひとつの採点結果を得るか、どちらかと推測されます。(ちなみに質問役と書記役は受検生ごとに入れ替わります)
採点対象となるのは、②の面結での応答の出来栄えです。
但し、面接中に瞬時に考えて答えるといったアドリブは、あの状況ではほぼ不可能です。
特に主要な論点に関しては、①の設例読み取り段階でそれなりの準備ができていないと、面接での質問には到底、太刀打ちできません。
①での準備の達成度合いが、②での応答成功の鍵を握っていると言えます。
教材は一応、TAC本ですが…
教材として、多くの受検生が手にするのは『合格テキストFP技能士1級 実技対策 精選問題集』(TAC出版)です。
過去に出題された設例(Part I ・Part II 各10本)の解説集で、通称は、「TAC本」または「茶(色)本」です。
2024年9月12日発売の24-25年版では、23-24年版収録のPart I・ II の14本がそのまま流用され、新作は6本(2023年6月•9月•2024年2月試験分から一部)だけ追加されました、
FP1級実技面接の唯一のテキストとも呼べる本ですが、学科履修範囲ではあまり馴染みのない実技面接特有の論点が、いきなり出てきて深掘り解説されるので、初学者にはかなりとっつきにくい内容となっています。
我慢して読み続ければ、少しずつ理解が進みますが、慣れるまでが大変で、ストレスに感じる方も多いようです。
そこで、TAC本に取り組む前に、次の本を読んでみることをお薦めします。
TAC本の前に読んでおきたい本
Part I(相続・事業承継)対策となりますが、タイトルはズバリ『事業承継が0(ゼロ)からわかる本』です。
経営者から寄せられる事業承継の相談のうち、頻度の高い60問を選定し、経営者とコンサルタントの会話形式で、専門用語を極力使わず、わかりやすく解説されています。
完全な実務書でありながら、FP1級実技面接のPart Iの「事業承継」に関する主要な論点が、ほぼ網羅されています。
改訂新版(2024年6月刊行)では、令和6年度の税制改正が反映され、Part I頻出の遺留分対策の解説、事業承継税制(特例・一般)のより詳細な解説が追加されました。
すでにTAC本に取り組み始めた方も、本書を読めば、事業承継の各論点への理解が深まり、論点ごとの繋がりがクリアーになってくることでしょう。
やさしく解説されている分、課税関係などについては学科テキストやサイト情報で補足しておく必要はありますが、事業承継の全体を俯瞰しつつ、各論点をすっきり整理できるので、一読後は設例学習の霧が晴れ、視界が開けてくることを実感できるはずです。
TAC本の学習法(〜12月末まで)
設例と解説を読み、内容を理解しましょう。
解説部でわかりにくい箇所は適当に読み飛ばし、とにかく先に進みます。
この段階では、設例に登場する論点を細かく覚えていく必要はありません。
但し、記憶すべきことを明確にし、後の復習がしやすいように、各設例で問われている論点について、簡単な見出しメモを作成しましょう。
見出しメモは、以下の記事を参考にしてみて下さい。各設例の論点に見出し(インデックス)を付けた例です。
直前期にこの見出しを見て、回答が思い浮かぶようになれば、その設例の復習は完了です。見出しを付けてみると、設例間で論点の重複があるのがわかります。
論点の見出し付けと共に、この段階で実践したいのは、各設例の冒頭と最後の設例について、実際に自分で答える練習をすることです。
Part Ⅰ冒頭の「顧客の相談内容および問題点」は設例に書いてある情報の抜き書きで対応できる易しい設問です。本番では確実に答える必要があります。TAC本の例にならって、自分でも答えてみましょう。
Part Ⅰ最後の「FPと職業倫理」も回答のパターンが決まっています。
Part Ⅱ冒頭の「Aさんから直接聞いて確認する情報」と「FPであるあなた自身が調べて確認する情報」も、不動産の現況、権利関係、公法上の制限…等の回答上の決まり文句をベースに設例内の情報を加味すれば回答がほぼ決まってきます。これも自分で回答してみましょう。
Part Ⅱ最後の「本事案に関与する専門職業家」は、設例内の課題解決に関与する専門職業家を列挙し、税理士法などの定めを答えさせる設問で、これもパターンが決まっています。
【重要ミッション① 学科知識を維持する】
実技面接では学科試験では出題されなかった事項が問われることがありますが、一方で学科と重なる論点も出題されます。
特に面接での関連質問や追加質問では、学科で得た知識が物を言うケースがよくあります。
難解な設例でも、学科の履修内容の記憶をもとに回答の糸口が掴めることもあります。
学科合格後は、何もしないと記憶がどんどん薄れていきます。
せっかく得たFPとしての最高峰の知識のキープを意識的に行っていくことは、この時期の最大の実技面接対策となります。
過去問道場を継続したり、学科試験の基礎編と応用編のE分野(不動産)・F分野(相続・事業承継)を復習したりして、学科知識の保持に努めましょう。
【重要ミッション② 税制改正事項への習熟】
令和5年・6年の税制改正では、生前贈与や一括贈与の非課税、空き家特例、インボイス制度、新NISA、マンション評価法など、重要な改正が目白押しとなりました。
さらに、面接官の先生が税理士などの実務家であることも多く、直近の税制改正事項は最も狙われやすい論点となっています。
例えば、マンションの評価法の改正は、直近の試験で3回連続で出題されました。(2024/2/8、2024/6/9、2024/9/22のPart I)
2回連続でも驚きでしたが、よほど実務的には関心が高いテーマなのでしょうか、3回目も当たり前のように出題されました。
しかも、改正の概要を何となく知っているだけでは答えられない細部の知識(評価乖離率、4つの指数、評価水準の0.6)が質問されました。
TAC本は、書籍の性格上、これらの最新の設例は未収録でしたが、当noteは狙われやすい重要な改正事項として、直前対策記事で取り上げました。
2024年12月中旬には、令和7(2025)年度税制改正大綱が発表されます。
重要な改正事項は、2025年2月のFP1級実技面接でも問われる可能性があります。
※例えば、法人版事業承継税制(特例)では、後継者の役員就任要件(贈与時点で就任後3年以上経過している必要がある)の見直しが予定されています。
→ 法人版事業承継税制(特例)の適用期限は2027年12月31日までなので、現行のままでは後継者は2024年12月31日までに役員に就任していなければならない。役員就任要件の期限が今年中に到来する状況では、本税制特例を適用期限まで最大限に活用することが難しくなるため。
大綱発表後に、当noteでは速報記事を出す予定ですので、ご注目下さい。
▶︎ 令和5年・6年の税制改正事項は以下の記事を参照して下さい。
直前1カ月前(年明け以降)の学習法
論点メモの拡充
年内にTAC本を1周したら、作成した論点の見出しメモをもとに、復習しましょう。
その際、各論点に対する回答もメモにまとめていけば、自家製の1問1答の論点集が出来上がっていきます。
メモする論点は学習が進めば、どんどん増えていくはずです。
最初に気づかなかった論点、より細部の論点、関連論点、間違いやすい論点、覚えにくい論点、繰り返し出てくる論点等、自分なりの視点でまとめていきましょう。
当noteの1問1答集との合体
的中論点続出中の当note人気コンテンツ、「マイ♡ナンバーズ」Ⅰ〜Ⅲと「伏線回収」Ⅰ~Ⅲは、1問1答のQ&A方式で、直近1年以上前に出題された重要論点・頻出論点もカバーしています。
これを自家製の1問1答の論点メモと合体すれば、論点のカバー範囲はさらに広がるはずです。
▶︎ 試験当日に、紙の教材しか持ち込めない待機室や面接控室でも最後のチェックができるように、全127問のPDF版も無料で提供しています。
【重要ミッション③ 1問1答フラッシュメモリ大作戦】
1問1答の論点メモを使い、自問自答の口頭練習を行います。
いつでもどこでも、TPOを問わず、問いを見て瞬時に答えが返せるようにトレーニングします。
できるだけ声に出すことを意識しましょう、(通勤電車内など、声に出せない状況では脳内反復します)
この練習の目的は、条件反射的に確実に答えられる論点をできるだけ多くストックしておくことにあります。
本番で、たとえ回答不能の論点が出たとしても、それ以外の論点への的確な応答を確実に積み上げることで、リカバリーする。
いわば緊張する本番の面接で、「最低限の安心保証」を得るための練習プログラムです。
【重要ミッション④ 設例読解タイムショック大作戦】
最近のFP1級実技面接では、「直近1年間の設例」内で出題された論点がリピートされたり、その関連論点が出題される傾向が続いています。
※前述した3回連続出題のマンション評価法の改正が、そのよい例です。
そこで、試験直前1カ月前は、この「直近1年間の設例」の学習にフォーカスし、実践的なアウトプットの練習を行います。
直近1年間(2023年9月度~2024年9月度)のPart Ⅰ・Part Ⅱの全30設例について
毎日1〜2設例ずつ
15分間で設例を読み、回答方針をメモします。
一読してメイン論点の回答の見通しが全く立たない設例であっても、とにかく必ず時間内に独力で、最低限わかるところだけでも良いので、回答のおおよその目星をつけましょう。
メモが間に合わなければ、脳内に「〇〇の特例が使えそうだな」といった見通しを持っておくだけでも構いません。
この実戦演習の目的は、完答することではなく、不十分であっても制限時間内に設例を検討し終えることです。
捨てるところは捨て、勝負できる部分や部分点が狙えるところをしっかりと見極めることが大切です。
本番同様の「急かされる時間感覚」の中で、確実にできることをやり遂げましょう。
解答解説は当noteの論点解説集を参照して下さい。
▶︎2023年9月度
▶︎2024年2月度 ︎▶︎2024年6月度 ︎ ▶︎2024年9月度わからなかった論点は1問1答の形でメモしておき、前述の口頭練習に使用しましょう。
設例に対応する面接体験記を読み、面接中に出た質問を確認しておきましょう。気になるものは上記と同様、1問1答形式でメモしておきましょう。
【重要ミッション⑤ 試験当日デジャヴ大作戦】
最も難しいのは、試験当日の緊張や不安を抑えるためのメンタル対策です。
FP1級実技試験の完全合格がかかった面接当日は、たとえ10名のうち1〜2名しか不合格にならないとしても、過度のプレッシャーに苦しめられる可能性があります。
逆に、もし試験本番をほど良い緊張状態で迎えることができれば、15分間の設例読みに全神経を集中させ、12分間の質問攻勢にテキパキと反応することができるでしょう。
過度な緊張が解けて、集中力が高まり、パフォーマンスの質が向上する。
そんな「フロー状態」を試験当日に何とか作り出すことができないか。
当noteの「FP1級実技 当日リアルレポート&面接ノウハウ集」は、そんな思いのもとで、徹底した受検生目線に立って熟慮と吟味を重ねてまとめ上げた4部構成(約18,600字)の特別プレミアム記事です。
面接に至るまでの当日の流れを、会場受付⇒待機室⇒面接控室⇒面接室と、時系列で一つ一つ詳細にたどりながら、各場面での留意点・心構え・対策などについてレポートしています。
これを読めば、本番当日の様々な場面で ”デジャヴ感(既視感)” が得られ、緊張や不安をやわらげることができるはずです。
また後半部分では、設例読解や面接応答で使える独自のノウハウやテクニックも紹介しています。
難解な設例に当たってしまった場合の対処法や、回答不能の質問を受けた場合の「秘策」など、試験当日に役立つとっておきの知見を詳しくお伝えしています。