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FP1級実技|直前対策ラスパーlog集④(2024年6月受検用)

前回試験向けの直前対策記事(ラスパーlog)の主要部分について、6月度試験向けに加筆・修正した4回シリーズの4回目です。

(これまでの記事)

  • 1回目(受検番号の数字の意味 / 設例読みで最高のパフォーマンスを得るには / 面接官の観点から試験を見てみると)

  • 2回目(ざっと計算して判断する / 金庫株とは? 事業承継における活用シーンとリスク)

  • 3回目(PartⅡ対策:冒頭の「FPが確認する情報」、最後の「専門職業家」 / 事業承継税制(特例)「複数の株主から最大3人の後継者」への承継パターン)

Image by Mudassar Iqbal via Pixabay

非上場株式の譲渡価格

今回のテーマはまず、PartⅠの社内承継における株式の譲渡価額について。

悩ましくも重要な論点です。

例を見てみましょう。

Q)

  • X社の代表取締役Aさんは取締役Eさん(Aさんの同族関係者ではない)に事業承継したいと思っている。

  • X社(大会社)の株主構成:Aさん80%、創業時からの専務Fさん(Aさんの同族関係者ではない)20%

  • Aさんの株式をEさんへ譲渡する場合、譲渡価額はどのようにして決まるか?

A)

Eさんへ譲渡して、Eさんの保有割合が30%未満に留まる場合は、

  • Eさんは同族株主(※1)以外なので、Eさん側の評価額は特例的評価方式(配当還元価額)となります。

  • 一方この場合、Aさんの保有割合は50%超で、Aさんは同族株主(※1)なので、Aさん側の評価額は原則的評価方式(類似業種比準価額)となります。

  • Aさん(原則的評価方式)からEさん(特例的評価方式)へ譲渡する場合、実際の譲渡価額(時価)は、売り手側Aさんの価額と買い手側Eさんの価額の範囲内で、折衝して決めることになります。

  • もし譲渡価額(時価)が特例的評価方式による配当還元価額よりも「著しく低い価額」(※2)となった場合は、買い手側のEさんに贈与税が課されます。

また、Eさんへ譲渡して、Eさんの保有割合が30%以上となった場合は、

  • Aさんの保有割合は50%以下となり、AさんとEさんは共に同族株主(※)となり、それぞれの評価額は原則的評価方式(類似業種比準価額)となります。

  • 従って、AさんからEさんへの譲渡価額も原則的評価方式(類似業種比準価額)となります。

  • 但し、AさんからEさんへ、原則的評価方式による類似業種比準価額よりも「著しく低い価額」(※2)で譲渡された場合は、Eさんに贈与税が課されます。

(※1)「同族株主」とは?

  • 50%超を保有する株主(及びその同族関係者)がいる場合はその株主(及び同族関係者)、誰もが50%以下の場合は30%以上を保有する株主(及びその同族関係者)。
    ▶︎「同族関係者」とは?
     株主の親族(6親等内の血族・配偶者・3親等内の姻族)、その株主が支配している会社など。

(※2)「著しく低い価額」とは?

  • 個人が個人に譲渡した場合、税法上は明確な定義はありませんが、実務的には時価の2分の1未満の価格での譲渡は、「著しく低い価額」に該当するものと考えられます。
    ▶︎個人が法人に譲渡した場合は、「時価の2分の1未満の価格だと時価で取引したものとみなす」旨が所得税法で規定されています。

私の面接体験記より~「持ち帰らず」最後まで粘る効用〜

2022年2月19日、FP1級実技面接試験の東京会場・午後の部。

PartⅠの出題テーマは、ストック・オプション、二世帯住宅か別棟か(小宅の適用)、米国不動産の相続でした。

午前の部から「持ち帰ってお調べして回答させて頂きます」などのフレーズを何度も繰り返す「持ち帰り組」が続出したのでしょう。

午後の部の面接では、しどろもどろにストック・オプションの課税関係をなんとか説明し終えた私に、噛んで含めるように丁寧に正解を示して下さる面接官の先生の姿がそこにありました。

朝からこうして、面接官の先生が正解を示すのは、もう何回目だったのでしょうか。

米国不動産の相続に至っては、面接官の先生の方から「それでは持ち帰って確認して頂く形ですか?」と、わざわざ仰るような展開に。

もう「持ち帰り」は聞き飽きた。

面接官の先生のそんな思いをひしひしと感じました。

そこで私は、粘りに粘って、遠い記憶の糸を頼りに、かなりぼんやりとした事をなんとか絞り出すように口にしようとしたのでした。

でも、プロベート(probate)という用語は、どうしても思い出せませんでした。

<確か、プではじまる単語だったような・・・ なんだっけ? 「プなんとかという裁判所の手続きがありまして」とか言っちゃうか? でも、ちょっと恥ずかしいなあ>

「プなんとか」…

面接官の先生の風貌とほんわかとジェントルなお人柄に、一瞬「くまのプーさん」をイメージしてしまった私は、なおさら躊躇してしまって、結局、「プなんとか」とは言えませんでした。

恥を忍んで言っていたら、「はい、プロベートのことですね」と温かく受け止めて下さり、ひょっとしたら少し加点が期待できたのかもしれません。(140点台に乗っていたかも・・・)

というわけで、「粘って答える? 持ち帰る?」問題ですが、もはや「えっ? 持ち帰りって、そんなのあり?」との反応さえ示すであろう、ニューエイジの受検生の方々が増えている状況では、今後取り得るスタンスとしては、できるだけ粘ってなんとか答える(答える姿勢を示す)ことが、肝要ではないかと私は考えます。

このシリーズの1回目の「FP1級実技面接を面接官の観点から眺めてみると」で述べた事実も、その根拠の一つと言えるものです。

以下のプレミアム特別記事では、「持ち帰り」の歴史と現在の状況を踏まえ、その是非について詳しく私見を述べました。

そして、「持ち帰り」なんて嫌だ、「わからない」と言うのも嫌だ。

そんな場合の窮余の一策として、「回答不能の質問に対処する“奥の手”」も示しています。

※ 当プレミアム特別記事(500円)の購入者は、2024/6/15時点で累計102名となりました。

FP1級学科で「医療法人」出題。実技面接でも要警戒!

FP1級実技面接で直近3回(2023年6月・9月、2024年2月)は出題されていないため、「要警戒論点」となっている医療法人ですが、2024年5月26日の学科(基礎編)で出題されました。

《問48》 社団医療法人の出資の評価に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。

  1. 持分の定めのある社団医療法人において、会社規模の判定は「卸売業、小売・サービス業以外」の基準により行い、類似業種比準価額を計算する場合の評価会社の事業が該当する業種目は「その他の産業」となる。

  2. 持分の定めのある社団医療法人において、出資持分の取得者にかかわらず、出資の評価にあたって配当還元方式は適用されない。

  3. 持分の定めのある社団医療法人において、類似業種比準価額の計算上、比準要素は「1口当たりの利益金額」と「1口当たりの簿価純資産価額」の2つであり、比準割合を算出する際の分母は「2」となる。

  4. 持分の定めのない社団医療法人(基金拠出型の社団医療法人を除く)において、社員は出資について持分権を有しないことから、出資について相続税の課税関係は生じない。

不適切なものは、1.です。

会社規模の判定は「小売り・サービス業」の基準により行います。

「認定医療法人制度」(※)について、令和5年度税制改正で、認定期限が2026年12月31日まで延長となり、また、移行期限が移行計画の認定から5年以内へと緩和されました。
(※)持分あり医療法人から持分なし医療法人への移行計画について、厚生労働大臣の認定を受けることによって、相続税や贈与税の猶予・免除を受けることができる制度。

こういった改正があった近辺では、FP1級では学科・実技の出題共に狙われやすくなり、実際に、認定医療法人制度が創設された2017年には、同年の1月22日の学科(基礎編問45)と2月11日の実技面接Part Iで、それぞれ医療法人が出題されています。

その他にも、今回のFP1級学科(基礎編)では、実技面接の関連論点として、以下の各問をチェックしておきましょう。

  • 《問39》「固定資産の交換の場合の譲渡所得の特例」

  • 《問40》「既成市街地等内にある土地等の中高層耐火建築物等の建設のための買換えの場合の譲渡所得の課税の特例」

  • 《問41》「不動産の有効活用の手法」

  • 《問45》「配偶者居住権および配偶者短期居住権」

  • 《問49》「小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例」

  • 《問50》「非上場株式等についての相続税の納税猶予及び免除の特例(特例措置)」

※金財公式サイト:問題 / 解答

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