FP1級実技2025/2月対策①R5•6税制改正
既存記事(「FP1級実技|R5•R6税制改正事項 総ざらい」)の内容を2025年2月受検対策用に改訂し、①②の二部構成としました。
今回の①は、重要な改正があった令和5年度・6年度の税制改正論点の総まとめです。
【既存記事からの改訂ポイント】
より細かく論点ごとに見出しを付け、直近1年半の出題頻度数を★1〜7で示しました。
新たにジュニアNISA(2024/9/29 Part I出題)の論点を加えました。
各論点の解説について、一部加筆・修正しました。
税制改正があると、改正事項のみならず、その税制の内容全般に改めて焦点が当たり、出題論点として狙われやすくなります。
出題頻度が高いものについては、学科テキストなども活用して、詳細をよく確認しておきましょう。
また、2024年12月中旬以後に発表される予定の令和7(2025)年度税制改正大綱についても、その概要をチェックしておきましょう。(当noteに速報記事を掲載する予定です)
◆ 令和5(2023)年度 税制改正
【★5】生前贈与(暦年課税)
(2023/6/10 Part I、2024/6/9 Part I、2024/9/21 Part I、2024/9/22 Part I、2024/9/29 Part I)
持ち戻しの期間(※)が相続開始前3年から7年へ延長された。
(※)相続財産への加算期間のこと延長した4年分については、その合計額から100万円を控除した残額を持ち戻す。
2024年1月1日以降に受けた贈与から適用。
【★5】生前贈与(相続時精算課税)
(2023/6/10 Part I、2024/6/9 Part I、2024/9/21 Part I、2024/9/22 Part I、2024/9/29 Part I)
基礎控除110万円が創設された。(毎年110万円までは非課税となり申告不要)
基礎控除110万円は持ち戻さなくてもよい。
災害で被害を受けた場合は、贈与時の価額から被害部分の価額を控除した残額を持ち戻す。
2024年1月1日以後に受けた贈与から適用。
【★5】教育資金の一括贈与の非課税
(2023/6/10 Part I、2023/9/24 Part I、2024/6/9 Part I、2024/9/22 Part I、2024/9/29 Part I)
適用期限は2026年3月31日まで。(改正前:2023年3月31日まで)
贈与者が死亡した場合、その相続財産が5億円を超える場合は、受贈者が23歳未満等であっても、残額(※)は相続財産に加算する。
(※)非課税拠出額から支出額を控除した残額のこと受贈者が30歳に達した場合等に残額があると、贈与税が課されるが、その税率は「特例税率」(※)ではなく「一般税率」とする。
(※)直系尊属から18歳以上への贈与に適用される税率のこと
【★1】結婚・子育て資金の一括贈与の非課税
(2024/6/16 Part I)
適用期限は2025年3月31日まで。(改正前:2023年3月31日まで)
受贈者が50歳に達した場合等に残額があると、贈与税が課されるが、その税率は「特例税率」ではなく「一般税率」とする。
【★2】認定医療法人制度
(2023/2/4 Part Ⅰ、2024/9/29 Part I)
医療法人が持分ありから持分なしへ移行するに際して、移行計画の認定を受けて一定の要件を満たせば、出資者の持分放棄に伴うみなし贈与税が免除され、移行前の相続税や贈与税の納税も猶予・免除される制度です。
持分なし医療法人への移行計画の認定期限は、2026年12月31日まで。(改正前:2023年9月31日まで)
移行期限は、移行計画の認定から3年以内が5年以内へと緩和。
【★6】空き家に係る譲渡所得の3,000万円特別控除
(2023/9/23 Part II、2023/9/24 Part II、2024/6/16 Part II、2024/9/21 Part I、2024/9/22 Part II、2024/9/28 Part II)
被相続人のみが居住していた家屋(1981年5月31日以前の建築)と敷地を、相続の日から3年後の12月31日までに、譲渡対価1億円以下で相続人が譲渡した場合、譲渡所得から3,000万円が特別控除されます。
適用期限は2027年12月31日まで。(改正前:2023年12月31日まで)
耐震改修や除却は、譲渡の翌年2月15日までに買主が行ってもよい。
相続人が3人以上である場合は、控除額を各2,000万円とする。
→対象不動産が遺産分割前の共有状態であっても、3,000万円の控除額は共有者それぞれに適用されるが、共有者が3人以上の場合は各2,000万円が限度となる。
2024/9/22 Part IIでは、上記改正事項(相続人が3人で共有している場合、控除額が各2,000万円に縮減される)が問われました。
社会問題となっている空き家や所有者不明土地(※)については、今後も狙われやすい論点と言えるでしょう。
(※)相続登記の義務化や相続土地国家帰属制度、改正民法等による対策が進んでいます。これらの民事法制上の措置については、今回の記事の続編②で取り上げますので、こちらもよくチェックしておきましょう。
優良住宅地の造成等のための土地等の長期譲渡所得の課税の特例
優良住宅地の造成等のために土地(所有期間5年超)を譲渡した場合、長期譲渡所得のうち2,000万円以下の部分の税率が14.21%に軽減されます。
適用期限は2025年12月31日 まで。(改正前:2022年12月31日まで)
低未利用地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の特別控除
都市計画区域内の低未利用地(所有期間5年超)を譲渡対価500万円以下で譲渡した場合、長期譲渡所得の金額から100万円が控除できます。
適用期限は2025年12月31日 まで。(改正前:2022年12月31日まで)
譲渡後の用途がコインパーキングの場合は適用できない。
市街化区域または非線引き都市計画区域のうち用途地域設定区域にある土地、所有者不明土地対策計画を策定した自治体の都市計画区域内にある土地については、譲渡対価を800万円以下に引き上げる。
特定の事業用資産の買換え特例
所有期間10年超の事業用の土地・建物等を買換えると、譲渡損益が繰り延べられる特例です。(買換える土地の面積は譲渡する土地の5倍以内で、300㎡以上)
適用期限は2026年3月31日まで。(改正前:2023年3月31日まで)
課税繰延割合は原則80%だが、
「集中地域以外」から「東京23区以外の集中地域」への買換えは75%
「集中地域以外」から「東京23区」への買換えは70%
「集中地域以外」から「主たる事務所の移転を伴う東京23区」への買換えは60%
「東京23区」から「主たる事務所の移転を伴う集中地域以外」への買換えは90%
※ 以上の改正は、いわゆる「4号買換え」(旧6号買換え)に関するものです。「1号買換え」(三大都市圏の既成市街地の内から外への買換え)は、法人は2023年3月31日、個人は2023年12月31日で適用終了となりました。
【★3】新NISA(少額投資非課税制度)
(2023/6/10 Part I、2024/6/9 Part I、2024/9/28 Part I)
つみたて投資枠年間120万円+成長投資枠年間240万円が一口座で併用可能。
保有期間は無期限、生涯の非課税上限額は1,800万円(成長投資枠は1,200万円)
売却した場合、投資元本分の非課税枠は翌年以降に再利用が可能。
口座は1人1口座のみ開設可能。
金融機関の変更は年単位で可能。
【★1】ジュニアNISA口座内にある 投資信託の扱い
(2024/9/29 Part I)
ジュニアNISA 制度は2023年をもって終了となりましたが、ジュニアNISA口座内にある 投資信託は、
引き続き「継続管理勘定」として、18歳になるまで非課税で保有することが可能。
いつでも非課税で払い出すことができるが、払い出す場合は、保有している商品や現金の全てを払い出し、口座を閉鎖する必要がある。
新NISAの非課税枠への移管はできない。
【★2】消費税のインボイス制度(適格請求書等保存方式)
(2023/2/11 Part II、2024/9/21 Part I)
「インボイス制度」とは、課税事業者が発行するインボイス(適格請求書)の保存によって、消費税の仕入税額控除が受けられる制度のことです。
制度開始に伴う経過措置:
6年間はインボイスを交付できない免税事業者等からの仕入れについて、一定割合を仕入税額とみなして控除できることとする。
→2026年9月30日まで:仕入税額相当額の80%、
→2029年9月30日まで:仕入税額相当額の50%。制度開始に伴う負担軽減措置①:
2割特例
→インボイスを発行するため、免税事業者が課税事業者となることを選択した場合、納税額を売上税額の2割に軽減する。(2026年9月30日まで)
→売上・収入を把握するだけで申告でき、経費等の集計が不要。制度開始に伴う負担軽減措置②:
基準期間(前々事業年度)における課税売上高1億円以下、または特定期間(前事業年度開始の日以降6か月の期間)における課税売上高が5,000万円以下の事業者は、1万円未満の課税仕入れについてはインボイスの保存がなくても帳簿のみで仕入税額控除が可能となる。(2029年9月30日まで)
【★1】「エンジェル税制」(ベンチャー企業投資促進税制)の拡充
(2024/2/10 Part I)
「エンジェル税制」とは、個人投資家が創業間もないスタートアップ企業へ投資した場合に、一定の要件のもと投資額の控除や売却時の損益通算などの税制優遇を受けられる制度のことです。
→ 設立5年未満の企業への投資では、(投資額 – 2,000円)をその年の総所得金額から控除できる。
→ 設立10年未満の企業への投資では、投資額全額をその年の他の株式譲渡益から控除できる。(控除上限なし)
→ 未上場スタートアップ株式の売却により生じた損失は、その年の他の株式譲渡益と通算(相殺)でき、その年に通算しきれなかった損失については、翌年以降3年にわたって通算が可能。
令和5年度の税制改正では以下の優遇措置が追加されました。
個人投資家がすでに投資したエンジェル税制適用企業の株式を売却して、一定の要件のスタートアップ企業(※)へ再投資する場合、その投資額について、20億円を上限として非課税とする。
(※)いわゆる「プレシード・シード期」にある企業で、設立5年以内、かつ設立後の各事業年度の営業損益金額がゼロ未満(=赤字状態)であり、かつ外部の資本比率が20分の1以上の企業。また、個人投資家がすでに投資したエンジェル税制適用企業の株式を売却して起業する場合も、設立時の出資額に相当する額について、20億円を上限として非課税とする。
◆ 令和6(2024)年度 税制改正
【★7】住宅取得等資金の贈与の非課税
(2023/9/23 Part II、2024/2/11 Part II、2024/6/9 Part I、2024/6/15 Part I、2024/6/16 Part I、2024/9/22 Part I、2024/9/29 Part I)
直系尊属から住宅取得等資金(先行する敷地の購入資金等も対象)の贈与を受けた場合、省エネ等住宅は1,000万円、その他は500万円までの贈与税が非課税となる制度です。
適用期限は2026年12月31日まで。(改正前:2023年12月31日まで)
非課税限度額1,000万円となる省エネ等住宅の要件が厳しくなった。
→断熱等性能等級5以上かつ一次エネルギー消費量等級6以上。
住宅取得等資金の贈与を受けた場合の相続時精算課税の特例
贈与者が贈与の年の1月1日において60歳未満であっても、相続時精算課税を適用できる特例です。
適用期限は2026年12月31日まで。(改正前:2023年12月31日まで)
上記の贈与の非課税と相続時精算課税の特例は、二世帯住宅への建替えの論点と絡めてよく登場します。
建築資金のうち一定額を、住宅取得等資金の贈与の非課税と相続時精算課税を活用して子に贈与し、建て替えた二世帯住宅を子との共有名義で登記するという提案が可能なシチュエーションが頻出しています。
この場合、区部所有登記しなければ、子は同居親族として、敷地全体について小規模宅地等の特例の適用を受けることもできます。
【★6】法人版「事業承継税制」特例措置
(2023/9/23 Part I、2023/9/24 Part I、2024/2/11 Part I、2024/2/ 17 Part I、2024/6/8 Part I、2024/9/28 Part I)
円滑化法の認定を受けている非上場会社の株式等について、一定の要件のもと、贈与税・相続税の納税が猶予・免除される制度の特例措置です。
特例承継計画の提出期限は2026年3月31日まで。(改正前:2023年3月31日まで)
適用期限は現行のまま2027年12月31日まで。
【★1】個人版「事業承継税制」
(2024/6/15 Part I)
円滑化法の認定を受けている青色申告事業者の後継者が特定の事業用資産を取得した場合、一定の要件のもと、贈与税・相続税の納税が猶予・免除される制度です。
個人事業承継計画の提出期限は2026年3月31日まで。(改正前:2023年3月31日まで)
適用期限は現行のまま2028年12月31日まで。
【★3】マンション評価の改正(「居住用の区分所有財産」の評価の見直し)
(2024/2/8 Part I、2024/6/9 Part I、2024/9/22 Part I)
2024年1月1日以後に相続・遺贈・贈与により取得した分譲マンションの価額は、新たに定められた個別通達により次のように評価します。
マンションの理論上の市場価格を従来の相続税評価額×「評価乖離率」と定め、この理論上の市場価格に対する従来の相続税評価額の割合を「評価水準」(※)として、0,6を基準にその大小関係から、従来の相続税評価額を補正する「区分所有補正率」を決定する。
(※)「評価乖離率」は、①「マンションの理論上の市場価格」が、②「従来の相続税評価額」の何倍か(①÷②)を表している。
一方、「評価水準」は②が①の何割に当たるか(②÷①)を表している。
つまり「評価水準」は「評価乖離率」の逆数であり、1÷ 「評価乖離率」で求めることができる。
面接の際、採点ポイントになると思われるキーワードを盛り込んだ本論点の概要説明は以上で十分かと思います。
但し、これまでの面接では評価水準の大小や評価乖離率の指数に係る突っ込んだ質問も出ていますので、以下にやや詳しい解説を付加します。
2024年2月・6月・9月と3回連続で出題され、実務面でも関心が高いテーマです。「もう今回は出題はないだろう」と、安易に論点切りせずに、しっかりと向き合って、理解を深めておくことをお薦めします。
【解説】
「評価水準」が0.6未満の場合は、 「区分所有補正率」は「評価乖離率」×0,6とする。
→つまり、従来の相続税評価額×「評価乖離率」×0.6を新たな相続税評価額とする。「評価水準」が0.6以上1未満の場合は、 従来の相続税評価額のままとし補正はしない。
「評価水準」が1より大きい場合は、「区分所有補正率」は「評価乖離率」とする。
→つまり、従来の相続税評価額×「評価乖離率」(=理論上の市場価格)を新たな相続税評価額とする。「評価乖離率」は「築年数」・「総階数指数」・「所在階」・「敷地持分狭小度」(敷地利用権の面積÷専有部分の面積)の4つの指数をもとに計算する。
→4つの指数の合計+3.220
→ 「総階数指数」と「所在階」はプラスの係数を掛け、 「築年数」と「敷地持分狭小度」はマイナスの係数を掛ける。
→このため、例えば新築のタワーマンション(概ね高さ60m以上、地上20階以上)の高層階の専有面積の広い部屋などは、4指数ともに大きくなる。(築年数と敷地持分狭小度自体の値は小さいが、マイナス係数が掛けられるので指数としては大きくなる)以上より、例えばタワマンは評価乖離率が1.67を超える(評価水準が1÷1.67=0.6を下回る)場合が多く、従来の相続税評価額が評価乖離率×0.6を掛けることによって引き上げられることになる。
次のものは、この評価法の対象外となる。
→居住用でない事務用テナントなど
→区分建物の登記がされていないもの(1棟所有の賃貸マンションなど)
→地階を除く総階数2階以下のもの
→二世帯住宅や三世帯住宅
【★1】特定の居住用財産の買換え特例(100%課税繰延)
(2023/2/5PartⅠ)
適用期限は2025年12月31日まで。(改正前:2023年12月31日まで)
FP1級実技面接では、住宅買換えのケースで、居住用財産の譲渡所得の3,000万円特別控除+長期譲渡所得(10年超)の軽減税率(この2つは適用期限なし)との選択適用で問われることがあります。
居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除
適用期限は2025年12月31日まで。(改正前:2023年12月31日まで)
特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除
適用期限は2025年12月31日まで。(改正前:2023年12月31日まで)
特定の民間宅地造成事業等のために土地等を譲渡した場合の1,500万円特別控除
適用期限は2026年12月31日まで。(改正前:2023年12月31日まで)
この特例の適用には、宅地造成事業を行う事業者側で満たすべき以下のような要件があります。(土地そのものには要件はなし。認定は国土交通大臣が行います。)
宅地の造成が市街化区域内の土地区画整理事業として行われるものであること。
造成に係る一団の土地の面積が5ヘクタール(50,000㎡)以上あること。
宅地の分譲が公募の方法により行われるものであること。
分譲される住宅の敷地面積が170㎡以上であること。(地形の状況その他の特別の事情によりやむを得ない場合にあっては150㎡以上)
以上のような要件を満たす設例が出題される可能性はあまり想定できませんが、宅地造成事業に絡んでこのような特例があることは、頭の片隅に入れておきましょう。
尚、この特例は優良住宅地の造成等のための土地等の長期譲渡所得の課税の特例とは併用できません。
「住宅ローン控除」(住宅借入金等特別控除)の改正
住宅ローンを利用して住宅を新築・取得・増改築する場合に、毎年の住宅ローン残高の0.7%を最大13年間、所得税から控除できる制度です。
借入限度額について、子育て世帯(19歳未満の子を有する世帯)または若者夫婦世帯(夫婦のいずれかが40歳未満の世帯)が2024年に入居する場合には、2022年・2023年入居の場合の水準(認定住宅:5,000万円、ZEH水準省エネ住宅:4,500万円、省エネ基準適合住宅:4,000万円)が維持される。
新築住宅の床面積要件を40 ㎡以上に緩和する措置(合計所得金額1,000 万円以下の年分に限る)について、建築確認の期限を2024年12 月31日までとする。(改正前:2023年12 月31日まで)
上記の措置はいずれも2024年12月31日が期限です。2025年以後どうなるのかについては、2024年12月中旬以降に公表予定の令和7(2025)年度税制改正改正大綱で明らかになるはずです。
※追記(2024/12/25)
両措置共に、令和7年度税制改正大綱にて1年延長が明記されました。
税制適格ストックオプションの要件緩和
ストックオプションとは、会社が従業員や取締役に対して、自社の株式をあらかじめ定めた価格で取得できる権利を付与することです。
税制適格ストックオプションは、権利行使時の株式の時価と権利行使価格との差額に対する給与所得課税を株式売却時まで繰り延べ(※)、株式売却時に売却価格と権利行使時の株式の時価との差額と合わせて、譲渡所得課税されます。
(※)税制非適格ストップオプションではこの時点で給与所得課税されます。
◯税制適格ストックオプションの要件
【付与対象者】会社及びその子会社の取締役・執行役・使用人。一定の要件を満たす社外高度人材(大口株主及びその特別関係者は除く)
【権利行使期間】付与決議日後、2年〜10年。設立5年未満の非上場会社は2年〜15年。
【権利行使価額】発行時の時価以上
【権利行使限度額】年間1,200万円まで。
→令和6年度税制改正で要件を緩和(下記参照)【譲渡制限】譲渡禁止
【発行形態】無償であること
【株式の管理】証券会社または金融機関等による保管・管理信託等
→令和6年度税制改正で要件を緩和(下記参照)
令和6年度税制改正では、税制適格ストックオプションについて、以下のように適用要件が緩和されました。
設立の日以降の期間が5年未満の株式会社(上場・非上場を問わず)が付与する税制適格ストックオプションについては、1年あたりの権利行使の限度額を現行の1,200万円から2,400万円に引き上げる。
設立の日以降の期間が5年以上20年未満の株式会社(上場会社の場合は上場から5年未満に限る)は、限度額を現行1,200万円から3,600万円に引き上げる。
交付される株式が譲渡制限株式であり、かつ当該株式を株式発行会社自身により管理するという要件が満たされる場合は、証券会社などの金融商品取引業者等の営業所等に保管委託するという要件が不要となる。
中小企業事業再編投資損失準備金(中堅・中小グループ化税制)の延長・拡充
「経営力向上計画」の認定を受けた中小企業者等が、子会社化によるM&Aで株式等を取得した場合、取得価額10億円までは、その取得価額の70%を限度に準備金として積み立てると、その全額を損金に算入できます。
但し、5年間の据置期間経過後は均等に5年間で準備金を取り崩し、毎年益金に算入されます。また、減損や株式売却等を行った場合は、準備金を取り崩して益金に算入しなければなりません。
※ つまり初年度に損金算入された額は、いずれ益金に算入されるので、トータルでの納税額は変わりません。(つまり事実上の課税繰延べ措置と言えます)
令和6年度税制改正では、本税制の3年間の延長と、M&Aによる中小企業のグループ化をさらに促進するための拡充策が措置されました。
「経営力向上計画」の認定期限を2027年3月31日までとする。(改正前:2024年3月31日まで)
過去5年間にM&Aを実施した中堅・中小企業が「特別事業再編計画」の認定を受けて、子会社化によるM&Aで株式等を取得した場合、取得価額100億円までは、認定後1回目のM&Aにおいては取得価額の90%、2回目以降は100%を限度に、その金額を準備金として積み立てると、その全額を損金に算入できる。
また、益金算入までの据置期間を10年とする。
Part Iでは、M&Aの論点が時々出題されます。このような準備金による税制優遇措置があることは押さえておきましょう。