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【セカンドブライド】第17話 カエルさんの離婚報告

ゴールデンウィークを過ぎ、緑が濃くなって日差しが強くなった。半袖でも過ごすことが出来、一気に景色が鮮やかになるこの季節が私は好きだった。

その日は娘の小学校がオープンスクールで、好きな時間に参観することが出来た。だから、娘の好きな音楽の授業を目指して学校に向かって歩いていた。

カエルさんの宣言を聞いた日から、離婚の話題を私からは触れない様にしていた。それでも、カエルさんからは毎日メールが入ったし、メールの頻度も増えていた。この時も、鞄の中で「ブブブ」と携帯が震え、いつもの様にメールが入ったことが分かった。足は止めずに片手をバッグに入れて指先で探り、スマホを取り出して確認すると、やはり、カエルさんからメールが入っていた。

「件名:オレのファインプレー!
オレやりました!離婚が成立しました~🐸お祝い希望~!」

思わず立ち止まる。
私の人生において、今までもらったメールの中で一番衝撃なメールだった。

「え?」と画面に向かって、思わず声が出た。足も止まった。

「離婚ってこんなに簡単に出来るものなの?」
カエルさんが離婚を宣言してから、まだ一か月ちょっとしか経っていなかった。

カエルさんの奥さんはカエルさんよりも5つ年上で、結婚したのは17年前だと聞いていた。
「嫁さんに出会った当時、ペンキ屋さんで働いている彼女は元気印って感じでさ、気になってたんだ。ある日、ご飯に誘ったら「良いよー」って言ってくれて、すぐに意気投合して交際が始まった。毎週末、日光とか伊香保とか、温泉に泊まりに行くのがデートだったよ。オレ、友達らしい友達が居なかったからさ、家族を作るのが夢で。それで1年くらい付き合って結婚したんだ。すぐに子供が出来たんだけど、子供は年子だったから大変で、オレも子育て一生懸命手伝ったよ。嫁さんは色んなとこでみんなと揉めて来るから大変だったよ。」

奥さんはどんな気持ちで離婚を承諾したのだろう?
そもそもお互いに離婚したかったってことなのかな?

私自身の離婚が頭の中で再生された。お互いに修復しようとして、上手く行かなくて、お互いを責めて。調停になって裁判になって、私も夫もボロボロになって離婚した。お互いの強みも弱みも熟知しているから、相手の「痛い」場所を知っている。味方が敵になる悲しさを実感した。とっても疲れたし、人の心の澱が見える様になってしまった。2年ちょっとの時間をかけての離縁、それが私にとっての離婚だった。

だから、どうしてもカエルさんのこのメールのテンションが理解出来なかった。どう返信して良いか分からないので、メールに気付かなかったことにしてしまおうと思った。

立ち止まっている私の、一つに結んだ首の後ろに太陽の光が当たって、ジリジリした。



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