見出し画像

【セカンドブライド】第9話 フルマラソンの前日は子供達デー

生活に良いスパイスが加わったと言うのは、こういう気持ちを言うのだろうか?フルマラソンに挑戦しようと決めてから、何となく生活が楽しくなった。

年が明けてからは仕事が忙しく、また大雪が降ったこともあり、思う様に練習することは出来なかった。カエルさんがメールしてくれた練習計画も、正直全然できなかった。でも、当初から子供達を犠牲にしない、無理しない範囲で頑張ろうと思っていたのでそれで良かった。

クラブの練習会に行けば、誰かしらが息子や娘の相手をしてくれた。そして、「ほら。フルマラソンまでもう少しだぞ。」と私のことを走らせてくれた。ランニングを通して出来た仲間のサポートが嬉しかった。

気付いたら、3月も半ばを過ぎてフルマラソンが明日に迫っていた。そんな穏やかな春の土曜日、私はお弁当箱に子供達の好きなものを詰めて、娘と息子を連れて大きな公園に出かけた。子供達はその公園が好きだったし、次の日は一日母に子供達をお願いするので、「自分の好きなこと」をさせてもらうことへの罪滅ぼしの様な気持ちもあった。

ゴルフに行く前の日に家族サービスするお父さんってこんな気持ちなのかも知れないと思った。お父さんは居ないのに「お父さんの気持ち」なんて思った自分が何だかおかしかった。

その公園は、キャンプ場が併設されていて、馬に餌をあげることも出来たし、芝生広場は、野外イベント用にステージも設置されていて広かった。ステージの反対側の一角に船の形の大きな遊具やアスレチックがあり、芝生広場にレジャーシートを敷くと子供達がどこにいるかも確認しやすかった。お弁当を持ってピクニックするのにちょうど良いので、休みの日には家族連れで賑わってっていた。

シートの上にお弁当やお菓子を置いて「陣地はここね!」と三人で確認が終わると、子供達は遊具で遊び始めた。

船の遊具を登る息子のお尻を下から支えていたら、斜め掛けにしたカバンの中で携帯が震え、カエルさんからメールが入った。

「とうとう明日だねー。今日は炭水化物多めに食べて早く寝てね。明日は、一緒に走るよー!」
「ありがとう。頑張るね!明日はマイペースに行きたいし、一人で走るから大丈夫だよ。気持ちだけ、ありがとう。」
「え?!一緒に走る気満々だよー。」
「え?!いーよ。地元だし。誰が見てるか分からないでしょ。音楽も聞きながら走りたいし。」
「音楽聞いてて、大丈夫だよ。並走するよー。」

娘と息子は5歳年齢差があり、公園に連れて行っても同じ目線で遊ばせることは難しかった。まだ年中さんの息子は目が離せなかったし、娘が「ママとバトミントンする!」と言って私のところに戻って来ていた。

公園にいるこの時間に「メールで押し問答するのは嫌だな。」と思った。だから、それ以降は返信しなかった。本当は、後で返そうと思っていたのだけれど、何となく返信するのが面倒になってしまった。

一人で走るのか、カエルさんに並走してもらうのかは、「成り行きで良いや。」と思った。

家族サービスデーのこの日は、娘と息子が「帰ろう」と言うまで三人で目一杯遊んだ。

いいなと思ったら応援しよう!