【セカンドブライド】第8話 カエルさん提案のマラソン練習計画
年が明け、私は仕事、娘は学童、息子は保育園とそれぞれの日常が始まった。
保育園は通常通りだが、小学生の娘は始業式までは学童に通うため、毎日お弁当の用意や学童への送り迎えが必要だった。だから、通常営業よりも少しだけ忙しかった。
ランニングクラブの練習会は、新年もカレンダー通りに土日の朝に行われていた。ただ、1月は木枯らしが吹いて寒い日も多く、練習会に子供達を連れて行って、年始早々子供達が風邪をひいたら嫌だなと、何となく積極的に行きたい気持ちになれなかった。だから、三連休の中日の日曜日が年明け初めての練習会の参加になった。
みんなに、「遅ればせながら」と新年の挨拶をした。皆に混じってカエルさんとも挨拶をした。そしてみんなで「今日の寒さはいつもよりはマシだね」とか「来週は雪が降るらしいよ」なんて話しながら、いつもの様にゾロゾロと走り出した。
クラブに所属して走るランナーは、ほぼ毎日走ることを日課としている人が多く、新年には初日の出をみるために走って見に行くと言う人も珍しくない。私の様に「練習会の時しか走らない」と言うのは珍しかった。
私は、年末から年明けにかけて丸二週間、走っていなかった。
50代ランナーのタカさんに「最近走れてっかい?」と聞かれたので、「クリスマスの練習会以来走ってないよ。今日が走り初めだよ。」と言うと、ひどくびっくりされた。
タカさんが「本当に3月にフルマラソンなんて走れんのかい?30キロくらいのとこで泣き出すんじゃねーか?って思っちゃうんだけど!」と北関東訛りで言った。
30代ランナーのコジマさんが、
「せめて月間100キロくらい走れると良いですね。」と言った。
40代ランナーのハリーさんが、
「ちょっと、計画立てて練習した方が良いね。」と言った。
「そんなに積極的に練習できるかな?」と思ったが、皆が私のために色々考えてくれるのが嬉しかったので、言われるままに聞いていた。私の斜め横を走っていたカエルさんもみんなの話をただ「うん。うん。」と聞いていた。
タカさんもコジマさんもハリーさんも皆、フルマラソンを3時間ちょっとで走る人たちだった。カエルさんは、フルマラソンを完走したことはあるけれど5時間くらいかかると言っていた。だから、皆みたいにはアドバイス出来ないのかもしれないと、勝手に想像していた。
和やかな雰囲気で練習会は終わり、私は宿題をもらった様な気持ちにはなっていたけれど、無理のない範囲で頑張ろうと、そんなに構えて考えてはいなかった。
ある日、仕事帰りの電車の中でメールが入った。カエルさんからだった。今から7年前の当時、彼はスマホでなくてガラケーを使っていたため、連絡はメールで来た。受信トレイに表示されたメールは、件名が長すぎて途中で切れていた。
件名:ぱるちゃん笑顔ではなももマラソンフルゴールするゾ!やったー大作戦
長いだけでなく、あまりセンスを感じない件名ではあったが、メールを開くとそこには、私がフルマラソンをゴールするまでの計画が綴られていた。
① 月間100キロはしるゾ!
子供たち遊ばせながら公園ぐるぐる。
子供達が遊べる様な公園の周回コースでぐるぐるして走ってみよう🐸
② ハーフを走るゾ!
1月はハーフ(21.0975キロ)を頑張って走ろー🐸
③ 30キロ走頑張るゾ!
2月に子供をお母さんにお願い出来るかな?
カエルが並走するから一緒に30キロ走ろー🐸
④ はなももマラソン大会がんばるゾ!
カエル、ぱるちゃんをひっぱって走るよ!一緒にゴールしよう🐸🐸
ヤッター!ニコニコ笑顔でゴールだよー!
文面はともかく、一生懸命考えてくれたことが嬉しかった。
だから、「考えてくれてありがとう。はなももマラソンに向けて精一杯頑張る所存です!」と返した。
すぐに「オレ、いつでも練習付き合うよ。だから、一緒に頑張ろうね!」と返信が来た。
「ありがとう!がんばるね(*^^)v」と返信した。
平日は、都内まで片道1.5時間の通勤と仕事、帰ってきてからの家事と育児で100%の力を使っていた。だから、週末にまた少し「頑張って走ろうかな」と思った。
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