【セカンドブライド】第6話 3人で歌ったジングルベル
最初の結婚をしていた頃、旦那さんと不仲になってからはイベント事が続く冬が好きではなかった。
クリスマスのチキンやケーキは、4人分用意して、3人で食べていた。サンタクロース役も一人でこなした。子供達のプレゼントを買ってきて押し入れに隠し、イブの夜に子供達を寝かしつけてから枕元に置いておいた。
クリスマスの朝、子供達の喜ぶ姿は微笑ましかったが、その瞬間を誰とも分かち合うことは出来なかった。せめて旦那さんに家族の大切さを思い出して欲しいと言う気持ちで、子供達がニコニコしておもちゃを抱く姿を写メに撮って送った。
パパが参加しない分「子供達に寂しい想いをさせてはいけない」と言うプレッシャーを感じていた。そして、「いるはずの人が居ない」と言う埋めようのない想いが心のどこかに貼り付いて、心から楽しむことが出来なくて寂しかった。
だから、離婚が成立した後は「叶わないのに期待する虚しさ」から卒業出来てスッキリした。
チキンやクリスマスケーキは最初から3人分を用意して、3人で食べた。
その年のクリスマスは、クリスマスケーキは買わずに子供達と作ることにした。作ると言っても、スポンジから焼くのは大変なので市販のスポンジケーキに、生クリームとフルーツとお菓子で飾り付けをした。
スーパーマーケットに三人で行き、子供達に「ケーキ、好きなものをいっぱい飾り付けしたいから材料を買おう!」と言ったら、
子供達は各々に好きなフルーツを言い合いながら歩き始めた。そして、かごの中に好きなものを入れた。
買い物かごの中には、イチゴやバナナ、キウイのほかに、カットパイン、ミカンのシロップ漬け、生クリームのホイップ、きのこの山やグミ、お誕生日用のチョコレートプレートに、白やピンクデコレーションペン、チョコスプレーが入った。砂糖で出来たサンタクロースやろうそくも買った。
そして、お家で子供達とケーキを飾り付けていった。
子供達が果物も「自分たちで出来る!」と包丁でカットし、ホイップの生クリームを味見だと口いっぱいに頬張ったり、チョコスプレーを豪快にこぼしたりしながら、賑やかに飾り付けていった。台所は思いもしないところにチョコレートがついていたし、子供たちの手も顔も漫画みたいにべたべただった。
そして、少しいびつで、カラフルなケーキが出来上がった。
そこにろうそくを立てて、合同のお誕生日会の様にみんなで吹き消した。
3人で食べたケーキの味は、生クリームにカットパインは酸っぱさと生クリームの食感がマッチしてるとは言い難かったし、グミはケーキに全然合わなかったが、満足そうな子供達の顔が嬉しかった。3人の満足するものを3人で一緒に考えて過ごせることが幸せだった。
「満たされる」って言うのは、ここにいる人の満足を考えると言うことなんだと思った。
本当は、クリスマスにはサンタクロースの恰好をして、「ふぉっふぉっふぉー」なんて言いながら、プレゼント渡してくれる様な人と結婚したかった。けれど、そんなのは「高望みだよね」と思い直し、子供達が寝た後、枕元にプレゼントをセットした。
遠くに鈴の音が聞こえそうな、穏やかなクリスマスイブの夜だった。