メンバーシップ執筆者紹介 #5 峰守ひろかず
峰守ひろかずと申します。滋賀県在住の小説家で、主に妖怪や伝承を扱った作品を手掛けております。
オリジナルの小説の他、TVアニメ「ゲゲゲの鬼太郎」(第6期)の児童向けノベライズや映画「妖怪大戦争ガーディアンズ」のスピンオフを書いたり、アマビエのような予言する妖怪たちを解説した「予言獣大図鑑」に共著者の一人として関わるなど、お化けがかったものならおおむね何でも書いています。
石川や北陸との関連ということでは、これまで、金沢を舞台にした小説を2シリーズ計6冊刊行しました。「金沢古妖具屋くらがり堂」と「少年泉鏡花の明治奇談録」というシリーズで、どちらも発売中です。
また、これらの執筆に際して調べたご当地の妖怪譚を事典形式でまとめた同人誌を作ったこともあり、この調査を通じて、石川県の妖怪伝承の面白さ、奥深さを知りました。
引き合いに出して申し訳ないですが、私の住む滋賀県ではおおよそ800種あまりの妖怪譚が確認できたのに対し、金沢では一つの市町村の範囲内だけで600を超える話を見つけることができており(調べようによってはまだまだ増えると思います)、また、その周辺の地域にも数多くの伝承が残っていることを知りました。
これらの調査は本業というより趣味に近い活動なのですが、そのご縁があってか、先ごろ石川県立図書館で複数回開催されたチャリティイベント「能登半島ふしぎ話チャリティ・トーク in 石川県」に登壇者の一人として参加させていただいたり、2024年の夏には金沢にて地元の妖怪を解説する市民講座に登壇させていただいたりもしました。
私が住んでいるのは滋賀県といっても北の方、福井県との県境のあたりなので、気候的にも位置的にも北陸に近く、福井以北のエリアには昔から近しい場所という印象があります。
北陸各県を舞台にした文学作品やアニメなどにも好きな作品が多く、親近感は強いのですが、先の震災に関して言えば、部外者であることは確かです。
実際、先の地震では私の住む滋賀は被害を受けておらず、被災地で起こっていた(起こっている)ことも、報道やインターネットを通じてしか存じ上げません。お前は安全圏にいる人間ではないか、と言われれば返す言葉もありません。
ただ、私を含めた人間には想像力があります。思いを巡らせ、共感することができます。何てことだ、何とかしたい、という感情を抱いたのは自然なことだと思います。
先述の通り私は金沢の妖怪譚を集めるのが趣味で、震災の前も後も伝承が残ったスポットを何度か回ったのですが、震災後、倒れたまま放置されている古い墓石や塚をあちこちで見ました。以前は誰でも入れた墓地や、風情のある石段が敷かれていた山道が立入禁止になっていることもありました。
倒壊の危険性は理解できますし、復興に振り向けられるリソースが有限である以上、古い石塚にまで手が回らないこともよく分かります。まずは元通りの生活を取り戻すことが最優先であるというのは分かります。分かるのですが、それでも、という気持ちを感じたのも確かです。
ここからは若干手前味噌な話になりますが、私は妖怪や伝承を扱う中で、「時代の流れとともに忘れられ、消えていくものも多々ある」という話をずっと書いてきました。ですが同時に「そういう時代の流れがあるにしても、ただ忘失されるのを看過するのは嫌だ」「記録していこう」「覚えておこう」という、時代の流れに抗う気持ちも書いてきたつもりです。これは自作の主人公たちの思想ですが、私自身の思いでもあります。倒れたままの塚や墓石を見て、このままというのは寂しすぎるだろうという思いを強く感じました。
加えて、金沢を始めとする北陸は、何度も自作の舞台にさせてもらった場所です。平たく言えば飯のタネにさせてもらった土地です。そんな土地が惨状に見舞われている以上、何かできないか、という思いは年始以来ずっとありました。なので前述のチャリティーイベントに参加したり、同人誌の売上などの収益の一部を義援金に寄付したりはしていましたが、それはそれとして継続的に何かできないかとは思っており、そんな時、こちらの企画のことを知りました。
繰り返しになりますが私は滋賀県民という部外者です。参加条件の「能登半島地震の被災地(石川、富山、福井、新潟の4県)に居住、またはゆかりがある」に該当するかどうかは不安でしたが、主催のparubooksさんに問い合わせたところ認めていただきました。ありがとうございます。
というわけで、私・峰守もこの企画、能登半島復興支援メンバーシップ「つなぐSupport NOTO note」に参加します。
今のところ、小説ではなく、北陸や能登に伝わる独特で興味深い妖怪譚を
コラム形式で紹介していくつもりです。先述の通り集めた話はたくさんあり、その中にはぜひ知ってほしい話や掘り下げてみたい話もいくつもあります。気軽に読むことができ、土地の歴史や文化に興味を持っていただけるような、そんな話を語っていければと思っておりますので、よろしくお願いいたします。
良き青空を!(好きな別れの挨拶です)
※最後に自著リスト公開用のブログを紹介しておきます。