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アナタの知らない映画チラシの世界#1
高いアーティスティック性があり、頻繁に更新され、ほどよいサイズで、しかも無料で手に入るのもの──。
映画のチラシ(フライヤー)ほど心躍るものはない。映画館で映画を見ると、本編の前にずらずらと流れてくる予告編が好きなタチなのだが、その時は「おもしろそう」「絶対に見よう」などと思っても、いざ本編が始まるとそんなことは頭から吹き飛んでしまう。そして映画鑑賞後はアレが良かったコレが良かったと、余韻にどっぷり浸かっているのだ。
他の客と一緒にわらわらと、数時間の集中や興奮による疲れで、多少おぼつかない足取りでシアタールームから出る。出入口にいる店員に見送られた先に、そう、ラックが設置されている。
そういえばあの映画なんだったかな。
頭の片隅にあった予告編のことを思い出し、自然とラックの前で足が止まる。右から左、上から下までがすべて映画の宣伝。洋画・邦画・アニメ、はたまたライブの上映まで。こんなにバラエティーに富んでいるものが一堂に会するとは圧巻だ。
公開を指折り楽しみにしている作品はもちろん、SNSのタイムラインで見かけたものや、存在をはじめて知る作品が多いのでチラシはおもしろい。この作品は映画化するのか、という驚きも楽しめる。題名、キャラクター、色合い、構図、キャッチコピー、などなど。たったB5サイズの一面には、人を惹きつける要素がぎゅっと詰まっている。
ハッキリとはしないが、映画のチラシは公開日の半年〜3ヶ月前に出始めている。洋画は公開日がずれることがあるので3ヶ月前から、邦画は人気のあるタイトルだと半年前から映画館にどっしりと構えている。ジャンルに限らず名のあるタイトルは絵柄が異なるチラシが2枚でることが多い。
登場人物やストーリーをまとめた冊子が、チラシにまぎれて置かれていることがある。これももちろん無料で持ち帰れるのでありがたい。
映画チラシに魅了され8年あまり。
今までコツコツ集めた計284枚のチラシの中から「これはすごい」とデザイン性に感動したものを紹介する。
キングスマン
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キングスマン/ゴールデンサークル
“イギリスのスパイ機関キングスマンの拠点が、謎の組織ゴールデン・サークルの攻撃を受けて壊滅した。
残された2人は同盟関係にあるアメリカのスパイ機関ステイツマンに協力を求めるが、彼らは英国文化に強い影響を受けたキングスマンとは正反対の、コテコテにアメリカンなチームで……。”
顔を映さない、という手法に脱帽。スパイだからなのだろか。
キャッチコピーの「秒でアガる。」のとおり、開始10秒でテンションが爆上がった。
いやはや、とんでもないものを見てしまった。
アベンジャーズ
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2019/4/26 公開
アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー
アベンジャーズ/エンドゲーム
“6つ集めれば世界を滅ぼす無限の力を手にすると言われる「インフィニティ・ストーン」を狙い地球に襲来した宇宙最強の敵サノスに対し、アベンジャーズが全滅の危機に陥るほどの激しい戦いを強いられる。”
アベンジャーズマークのみというシンプルさ。右のアベンジャーズマークが構築されていくさま(崩れる最中とは主張しない)が、消えた仲間が戻ってきたのを表しているようでいい。
チラ裏には各著名人のコメントがあるが、仮面ライダーらしい藤岡弘、のコメントは必見。
名探偵ピカチュウ
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名探偵ピカチュウ
“子どもの頃にポケモンが大好きだった青年ティムは、ポケモンにまつわる事件の捜査へ向かった父ハリーが家に戻らなかったことをきっかけに、ポケモンを遠ざけるように。
ある日、ハリーの同僚だったヨシダ警部から、ハリーが事故で亡くなったとの知らせが入る。父の荷物を整理するため、人間とポケモンが共存する街ライムシティへ向かったティムは、自分にしか聞こえない人間の言葉を話す“名探偵ピカチュウ”と出会う。”
影がイナズマの形になっているのが最高にクール。隠れポケモンもたくさんいる。洋画に登場するサイバーパンク日本のようだ。
アメリカのマンホールは湯気?が漏れだしているものが多い。そこにミステリアスなかっこよさを感じる。
ジョーカー
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ジョーカー
“「どんな時でも笑顔で人々を楽しませなさい」という母の言葉を胸に、大都会で大道芸人として生きるアーサー。
しかし、コメディアンとして世界に笑顔を届けようとしていたはずのひとりの男は、やがて狂気あふれる悪へと変貌していく。”
暗闇にスモークがたかれているような緑色のモヤが漂う。恐ろしいのに惹きこまれる見事なバランス!
バットマン
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ザ・バットマン
“青年ブルース・ウェインがバットマンになろうとしていく姿と、社会に蔓延する嘘を暴いていく知能犯リドラーによってブルースの人間としての本性がむき出しにされていく様を描く。
権力者たちの陰謀やブルースにまつわる過去、ブルースの亡き父が犯した罪が暴かれていく。”
よく見ると「?」になっていて驚いた。
赤と黒のバランス。バットマンらしい重厚感あるテーマ曲も最高である。
ドラゴンボール
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ドラゴンボール超 スーパーヒーロー
“かつて孫悟空によって壊滅させられた悪の組織「レッドリボン軍」の意志を継ぐ者たちが現れ、新たに最強の人造人間ガンマ1号、2号を生み出す。
彼らは自らを「スーパーヒーロー」と名乗り、ピッコロや悟飯たちを襲い始める。”
印刷技術がすさまじく下地が金属っぽく見える。全員がこちらを向いているキャラクター配置になっているのがミソ。
チラシにはのっていないが、左側もしっかり描かれているので公式サイトなどで見てほしい。
仮面ライダー
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シン・仮面ライダー
“1971年放送開始の特撮テレビドラマ「仮面ライダー」を、「シン・エヴァンゲリオン劇場版」「シン・ゴジラ」の庵野秀明が監督・脚本を手がけて新たなオリジナル作品として描き出す。”
庵野監督のこだわりを感じるようなチラシが、なんと5種類もでた。
最後のチラシの表紙が大量発生型相変異バッタオーグだが、涙袋になぜか本郷の目が映っているというギミックがある。
スタッフロールではぜひ、庵野監督の名前が何回登場したか数えよう。
マリオブラザーズ
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ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー
“ニューヨークで配管工を営む双子の兄弟マリオとルイージが、謎の土管を通じて魔法に満ちた世界に迷い込む。
はなればなれになってしまった兄弟は、絆の力で世界の危機に立ち向かう。”
色味がどこかノスタルジック。マリオと視聴者の眼前に広がる、見たことがある世界のワクドキ感がいい。
バイオハザード
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バイオハザード:デスアイランド
“クリスの妹クレアが勤めるNGO団体「テラセイブ」の調査により、ウィルスの感染者全員が、かつて刑務所として使われていたアルカトラズ島を訪れていたことが判明。
クリスたちは調査のためフェリーで現地へと向かう。”
けぶる色味がクール。ジルとクリスが銃を向けているポージングがいい。さすがは初代。どんなクリーチャーが襲ってきても返り討ちにしそう。
歴代主人公たちが文句なしにかっこいい。
ミッション:インポッシブル
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ミッション:インポッシブル
デッドレコニングPART ONE
“IMFのエージェント、イーサン・ハントに、新たなミッションが課される。それは、全人類を脅かす新兵器を悪の手に渡る前に見つけ出すというものだった。
しかし、そんなイーサンに、IMF所属以前の彼の過去を知るある男が迫り、世界各地で命を懸けた攻防を繰り広げることになる。”
CGかと思ったら当然のようにCGではなかったシーン。
当時はこのデザインのパネルも展示されていた。このバイクジャンプ、1200メートルの断崖絶壁から13000回ほど行ったらしい。どういうことなんだろう…。
映画を見て血圧を下げよう!
哀れなるものたち
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哀れなるものたち
“不幸な若い女性ベラは自ら命を絶つが、風変わりな天才外科医ゴッドウィン・バクスターによって自らの胎児の脳を移植され、奇跡的に蘇生する。
大人の体を持ちながら新生児の目線で世界を見つめるベラは時代の偏見から解放され、平等や自由を知り、驚くべき成長を遂げていく。”
二度見しておかしいことに気づいた。
まるで肖像画のような、映画の雰囲気がわかる素晴らしいデザイン。18禁でもあるので見たらトラウマになりそうだ。
クレヨンしんちゃん
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クレヨンしんちゃん オラたちの恐竜日記
“現代によみがえった恐竜が生息するテーマパーク「ディノズアイランド」が東京にオープンすることが決まる。
同じ頃、カスカベの河原では野原家の愛犬シロが小さな恐竜ナナと出会う。愛くるしい見た目のナナは野原家やカスカベ防衛隊ともすぐに仲良くなり、一緒に夏休みを過ごしてたくさんの思い出を作っていくが、ナナには大きな秘密があった。
そんな中、ディノズアイランドから恐竜たちが脱走する事態が起こり……。”
グロいほどリアルタッチな恐竜、真っ赤な背景。今までのクレしん映画とは違う角度の切り込みだ。
予告編でマイホームを壊されたひろしが「ああ〜!!ローンがあとまだ32年も残っているのに〜〜!!!」と叫ぶシーンは申し訳ないが絶対笑う。
最後に。
映画館に置いてあるチラシなどはもちろん無料で持ち帰れるのだが、大量に持ち帰ってあまつさえ転売する人がいるらしい。「このフライヤーが欲しい方はカウンターまで」という張り紙を見かけたことがあったので、なぜこんな措置を、と思ったが大量に持ち帰る人がいるからだ。
転売なんて言語道断!チラシは1人1枚まで!
その作品を愛してやまない人もいるので、多くのファンに行き届くようにこれからもやっていきたい。