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待ち合わせ失敗のおかげで出会えたおすすめのエッセイ本の話

 待ち合わせをする機会が減ったな、とふと思います。中学高校、そして大学初期はよく「何時にどこどこ集合ね」のやり取りをしていたように感じるのですが、最近は大体このくらいにこの辺にいて暇をつぶしているから都合のいいように来てね、という風に連絡するようになりました。単に私だけの変化なのか、私の周辺の変化なのか、それとも何か若者の間での流れなのかはわかりませんが、一つ事実としてあるのは、その状況に胡坐をかき、私が待ち合わせ下手になっているということです。

 先日、大学の軽音楽サークルで出会った友人が、就職活動中で余裕がなくできていなかったから、2ヶ月以上遅れたけど誕生日を祝わせてほしい、と連絡してきてくれました。その友人に会えること、そしてその気持ちがこの上なくうれしく、そんな律義さが愛おしくもありました。13時にお店を予約してあるから、12時50分くらいに中目黒に集合しようという友人からのラインに、ミッフィーのスタンプで高揚感をアピールした私でしたが、待ち合わせリハビリ中の私は、なぜか11時50分に駅に到着してしまいます。
これは余談ですが、13時、でなく、12時50分のような半端な時間設定は心理学的に遅刻や時間の勘違いを減らすうえで効果的なようです。記憶に残りにくいからこそ、覚えようとその時刻を大切に刻むからだとか。心理学ガン無視の私の行動にはさすがにがっかりしてしまいました。

そこで、1時間の時間をスターバックスでどうにか有意義に過ごそうと、読み物を探すことにしました。待ち合わせが中目黒で助かりました…
ラッキーなことに席も空いており、「1時間で読み切れる」
をテーマに本を探し、なぜか目についた一冊のエッセイ本を購入しました。
私が手に取ったのは、江國香織さんの「とるにたらないものもの」という本です。
もともと小説が好きで、特に大学では近代文学を専攻していたこともあり、エッセイにはあまり明るくない私ですが、この本には感動しました。
日常とはこんなにも美しく、目の前のものを愛するのはこんなにも素敵なことなのかと、江國さんの丁寧で上品な言葉たちが綴る身の回りのなんでもないものたちへの愛を読み、心が温かくなりました。

さて、例の待ち合わせしてからこの投稿をしている今日まで実に2年近くの時間が立っているのですが(汗)、
あれ以来、この本は自宅の寝室に置き、いつでも読み返せるようにしています。
私も、周囲のものを愛せるように。
目の前の、なんでもないもの、とるにたらないものたちへの愛情や感謝を持ち続けられる人間であるように。

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