家のなかはあたたかい
ペットの話。飼うならば悪魔がいいよ、死ぬまで構ってくれる。
暗い路地で薄汚い犬に手製の首輪をつけている老人を見て、タニシをペットにしていた小学生時代を思い出してしまった。
小学生の時に友達が飼っているハムスターをみせてくれるというので、遊びに行った。二階建てのアパートで、部屋は汚いからという理由で階段に座ってハムをなでていた。「わたしの言うことがわかるの、返事もしてくれる」。次第に私の話は無視してハムとの会話に没頭し始めた。「うみちゃんにもさわらせてあげようか」とハムを手のひらにのせられた。「俺の女を抱けば?」と言われているようで腹がたつ。落ち着きのないハムだ。一度も静止しない。そっと背中をやさしくなでてみた。やわらかい毛が指の間をすり抜けていくのが気持ちいい。もう一回、と背中に手をかけた時、ハムがうんこをもらしていることに気づいた。節度のないハムだ。うんこごと友だちに返して帰った。
高校の時に見習いの先生がいた。(魔法使いでもないのにそんなポジションあったのかな)
ふにゃらけた人で誕生日には31のアイス券をくれたり、「女子が好き」と危ない発言をしていた。そんな格好つけない性格のため生徒からの人気は高く、先生の話になると高確率で話題にのぼった。ある日の休み時間、とっておきの笑いを手に入れたような顔でクラスメイトが近づいてきた。「なあ知ってる?〇〇先生、家では一緒に暮らしている彼女のこと、みゃーちゃんって呼んでいるんだって」。笑い、よりも衝撃が先に来た。なんでやねん。「なんでみゃーちゃんですか?」と先生に質問しに行った。(先生に質問する生徒)「それは、猫みたいにかわいいからだよ」とふにゃらけた回答をいただいた。猫は形容詞だったのか。日常会話はどうなっちまうんだ。広がらない空想は猫が吐き出した毛玉のようだった。
それからしばらくたって、見習い先生は不祥事でとばされた。詳細は知らされていない。