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【本棚】#14 ペンギンが教えてくれた物理のはなし

本棚14冊目

ペンギンが教えてくれた 物理のはなし 渡辺佑基

ペンギン×物理? バイオロギングで解き明かす生物学

バイオロギング、というものをご存知でしょうか?
生物に取り付け、飛行や潜水等のデータを取り、生態を解き明かすための機械とその手法。

筆者は生物学の研究者で国立極地研究所、というところにお勤めの方で、このバイオロギングという手法を使って、主に鳥類・海生哺乳類の生態を調べているとのこと。

研究者の悲喜交々

この本はおそらく物理学/生物学の科学本・学術本にカテゴライズされるものですが、小難しいものは0。

むしろ研究するにおける失敗のあれこれ、嬉しいことのあれこれ、極地研究でのご飯のあれこれ、等渡辺さん自身の体験が書かれているので、小説感覚で読める。

特にバイオロギングの機械を回収するための涙ぐましい努力は読んでいるだけなのに応援したくなるし、絶対にやりたくないと思ってしまう。

もちろん、科学のことはしっかり書いてあり、「なぜ体が大きい方が深く潜れるのか」「なぜアホウドリは羽ばたかずに飛び続けられるのか」など、物理学に基づき、解説してくれているので、知識欲も満たせる。
(ただし、解き明かされていないことも多いらしく、まだまだ生物が未知であること見えてその点も面白い)

マグロは平均時速7キロ

さて、とりわけ興味深かったと話がいくつかあった。
まず衝撃的だったのがこれ。
…あれ?時速80kmとか100kmじゃなかった?平均だから?とか思ったのだが、どうやらこの80kmやら100kmというのは計測方法に問題があって、この速度となっているらしく、実態の平均速度は時速7kmらしい。つまり人間のランニング程度。マグロおっそ。

とはいえ、他の生物はもっと遅いらしく、マグロだけが誤っているわけではない。
加えて、平均なので最高速度はどうか?というのは不明なので、もしかしたら瞬間最大速度は80kmぐらい出るのかもしれない(本の中ではせいぜい3〜4倍で、20〜30ぐらいと言われているが…)

代謝速度は3/4乗

また話の中で、いくつか共通して出てくるキーワードでで体の大きさが出てくる。
大きい方が深く潜れる。大きい方が速く泳げる。大きい方が縦移動が苦手…。

自分も理系人間だからか、こういう「不変の法則」に惹かれてしまう性格なのだが、これらは全て、代謝速度は体重の3/4乗比例という計算式で説明されている。

つまり、潜るを例とすると

体重(体の大きさ=酸素の保有量)が1・代謝速度(酸素の消費速度)が1の生物に対し、

・体重が2倍になると、
酸素の保有量は2倍
酸素の消費速度は2^3/4=1.7倍


・体重が4倍になると、
酸素の保有量は4倍
酸素の消費速度は4^3/4=2.8倍

にしかならず、その差分がアドバンテージになる。

なるほど。だから大きい方が有利に働く、ということか。と納得したと同時に、なんで3/4乗比例になるか、というメカニズムは不明らしく、理由はわからないけど事象が分かる、というのは科学らしくて好きだなぁと思ってしまった。
そのうち解き明かされるだろうから楽しみにしている。理解はできなさそうだが笑

オワリ

この本を知ったきっかけはゆる言語学ラジオ、というYouTubeです。

うんちくおじさんがひたすら話す、という少コストチャンネル。めっちゃ面白いです





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