「ハイコンテクストって、かっこ悪くない?」というおはなし
久しぶりに重めの喘息になったのだけれど、気合で直して原宿で買い物してから原稿に取り掛かったものの、なんだかおなかの調子が悪くて頭痛がひどくなったので、今日のお仕事はおしまい~という感じになったところ。皆様のご機嫌はいかがでしょうか?
……以前、私が書いていたブログエントリーではだいたいこんな感じの出だしではじめていた。それがBLOGOSに転載されていたというのは蛮勇にも程があるような気がしないでもないけれど、あまり反省はしていない。ああ、そういえばヤプログがサービス終了して一応移行先にしたサイト、ぜんぜんいじれてないや。はやく何とかしないと……。
さて。BLOGOSでは大変お世話になっていた、松浦茂樹さんのnoteを読んで、「まさに!」となったので、簡単にメモしておきたい。
松浦さんのいう「元上司」界隈については自分も大して関心なかったりするし、「あ~いつもの元上司さんですね」と面白がって見るぐらいのことしかしてないのですが、有料部分で「ハイコンテクスト」と「ローコンテクスト」というお話をされていて、自分も前から似たような感覚を持っていた。というか、ブログをはじめた2004年当時から、「ハイコンテクスト」との戦いだったような気がする。
2000年代のブログ黎明期には、例えば佐々木俊尚さんみたいなジャーナリストから、切込隊長こと山本一郎さん、新聞社勤務の人からテック界隈の人まで、多士多彩な人たちがこぞってエントリーを上げていた。ブログをはじめた当時、自分は某アダルト系の出版社に入ったばかりで人生で初の正社員というものになった頃だったので、はっきり言って「何者でもない」存在だった(それは今も大して変わってないけど)。それでも、何かエントリー書けば、雲の上と思われる人ともコミュニケーションが取れてしまう。「何これスゴイ」となるわけです。
で。その中でも特に特定の業界の裏側の知見を持っている人たちは、とにかく「ハイコンテクスト」で、それをもとに「議論」のような「炎上」のようなことが毎日繰り広げられていた。自然とこちら側も理論武装したり、自分の領域での「前提知識」を持ち出して、何とか伍していこうとしていくのが日常だった。
自分の場合、副業ライターから本業ライターにならざるを得なかった頃、特に「全て無料閲覧が可能なメディア」でお仕事を続けていくには、「誰も彼もが自分が当然だと思っていることは当然ではない」ということを肝に銘じないとやっていけないと思い知ることになった。可能な限り短い文章で、わかりやすい内容にしないと、そもそも読まれないということに嫌でも気が付かされた。
そして、SNSのユーザーが増えるにつれて、「ハイコンテクスト」な文章を少しでも入れると、炎上リスクが格段と上がるようになった。思えば、黎明期に「ハイコンテクスト」なブログを書いていた人たちは次第にFacebookに籠もるようになっていったし、業界の外からはよくわからない理屈を持ち出したり、「わからんのならそれでいいよ」的な態度のままだったりして、だんだん影響力を落としていったように感じられる。
最近、「どこどこのオンラインサロンではこういうやりとりをされていました」的なことが問題視されたり、「閉じた」コミュニティのいざこざが顕在化するケースが目立つようになっている。オンラインサロンに関して言えば、岡田斗司夫氏がやっていた『オタキングex』とそれほどモデルは変わらないし、あそこもムラ社会的なコミュニティに終始していた。だから、オンラインサロンがどこかで破綻するというのを繰り返しているのは、たいていは「ハイコンテクスト」のインフレが起きて、それについていけなくなる人が外で発信しだして、「なにそれひどい」と騒ぎになってというパターン化しているのだと思われる。
で。ネットで起きている「炎上」なり「対立」は、ほとんどの場合は価値観や考え方の違うコミュニティ同士のぶつかり合いに過ぎなくて、そこを繋ぐ「ローコンテクスト」なコンテンツなり「翻訳者」、あるいは「司会」が存在しないからいつまでたっても交通整理されないのだと、自分は感じている。それが政治経済社会に影響を及ぼすようになっているのだから「タチが悪いなぁ」と思うわけなのだけど。
自分も松浦さんと同様に「ハイコンテクスト」なコミュニケーションが嫌いでないし、そういったコミュニティの内部にいるのが圧倒的に居心地がよくてラクだということもわかる。とはいえ、可視化された「分断」を外から見ていて置いてけぼりにされている人が多数派だということもさまざまな研究によって明らかになっている。そのあたりは先日書いた自分の記事をよければ参照してくれるとうれしいな~!
そんなわけで。「そんな餌で俺様が釣られクマー」という表現はもう過去のもので絶滅危惧種なはずなのに、釣り餌を垂らす人が多すぎると思うし、そもそもひとりの人間の知識量なんてたかが知れている。閉じたコミュニティで「無知」を嗤うような人たちは決してマジョリティに響かないし、「単にメインストリームを外れただけじゃね?」という穿った見方もできるので、まぁ自分としても「やりたいならやってください」というスタンスではあっても、内心では「かっこわる!」と思っているということだけは明言しておきたいと思った次第です。
あ。トップの画像は少女主義的水彩画家たまさんデザインのマスクを着用した著者近影(笑)。キュートかつ厚みがある割にそんなに蒸れないので、美意識の高い人にはおすすめです!