見出し画像

マナー講師と徳島から米名門校に進学した女子大生炎上と悪役令嬢もの

近所にあるイタリアン居酒屋が、入っているビルの建て替えが決まって閉店するというので、飲み納めに行ってきた。元気な店員さんと、日替わりの鮮魚がウリで、ついつい食べすぎてしまうようなお店なのだけど、化粧室にその日のオススメが貼られていて、少し胸に来るものがあった。

さて。NHK『チコちゃんがおこられる』で、テーブルマナーを鬼指導した講師がネットで批判されまくった件が記憶に新しい中、J-Castニュースがマナー講師の西出ひろ子氏に取材している。

興味深かったのは、テレビ番組側からの要望で、「それはダメ」「それは失礼」といった言い切りが求められたというくだり。さらに、マナー講師に批判が集まってもメディア側は守ってくれないといい、視聴率を上げることに利用されているとして、「ただ面白おかしく伝えるだけ?数字を取るためだけですか?と問いたいです」と述べている。

この話と前後するのだけど、徳島出身でスタンフォード大学に進学した女性が刊行した本が炎上した件について、経営コンサルタントの倉本圭造氏が、「みんな怒りを向けるべき対象を間違っているんじゃないか?」と問いかけている記事が配信されていた。

倉本氏は、怒りの対象は閉鎖的で息苦しい日本社会でもなく、故郷に後ろ足で砂をかける恩知らずな女子学生でもなく、「古い考え方に固執する無理解で前時代的な周囲に抑圧されながらも、それを跳ね飛ばして独力で飛躍したというストーリーで売り込もうとする東京のマスコミのマーケティング文化」だと主張している。つまり、過剰な地元disは編集・出版の要請であって、当人の意識からはひとり歩きしているのではないか、という見方をしている。
この仮説について、自分は本を未読だし、炎上も横目で見ていただけなので何か言うことは出来ないのだけど、メディアが設定するわかりやすい「ストーリー」が、「何かズレてる」というのは感覚として分かる部分はある。ユーザーへの受けや、数字(売上とかPVとか)を得るために、過剰なマーケティングをするケースはずーっと変わってないし、「尖った」ものを尊ぶカルチャーがメディア業界に横たわっているのも、「まぁ、確かにあるかもなぁ」と思い当たる節がある。

西出氏にしても、倉本氏にしても、「伝え方」次第で炎上を防げた可能性を示唆しているという点は共通しており、メディア側がある意味で火種に油を投入する真似をしていることに問題意識を抱いているという事も似ている。メディアが発端となる炎上については、「どうすればよかったのか?」という事を考えてみる必要があるかな、と思った。

「伝え方」という点で話を飛躍させると、『小説家になろう』で一大ジャンルになっていて、漫画化・アニメ化も珍しくなくなった「悪役令嬢もの」は、「お作法を守らずに王侯貴族に取り入るヒロイン」に対するアンチテーゼとして発達したわけなのだけど、「ルール」を体現する側である悪役令嬢がどう味方を増やして立ち回るか、というのがストーリーラインの幹にあるわけで、西出氏のいう「自分を守るためのマナー」という定義に通じるものがあると思う。
そう考えると、多様化する社会でこれまで通じていたルールやマナーが曖昧になっている中で、跳ねっ返りを叩くという現在の世相を反映しているという意地悪な見方さえ出来るような気がしてくる。
「米名門大に進学した女子」というのも、「俺TUEEE」という物語の一側面をフォーカスしすぎた結果なのかもしれないし、創作の世界と社会がリンクする事象として批評することができそうだ。

とはいえ、今回は時間切れなので、またの機会に!


いいなと思ったら応援しよう!