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『withnews』の『弁護士ドットコムニュース』編集部取材記事を読んだ感想をメモしてみる

 ネットでの売文業が長くなって、いろいろなメディアでお仕事をさせて頂いて、それぞれに良さがありつつも「ちょっとどうなの?」と思うところがあったりもするのだけど、基本的には「全てのメディアや記事には何らかの公益性がある」というのが、自分のスタンス。何も取材した記事だからと言って「えらい」わけでもないし、コタツ記事だからと言って「手抜きしている」とぜんぶ切って捨てるべきでもない。とはいえ、そのバランスをどのようにするのかで、編集部のカラーは出ると思う。

 そういう意味では、『withnews』の『弁護士ドットコムニュース』の新志有裕編集長と山口紗貴子副編集長のインタビュー記事は読み応えがあったし勉強になった。

 個人的に驚いたのが、弁護士による解説記事と独自取材のニュースの比率が1:1だという事と、以前は完全分業制だったところから1人が全工程を担うように変えたという事。9人のスタッフで、それだけの取材記事をこなせるというのは、簡単ではないはずで、どのようなサポート体制を構築しているのか気になった(ので、今度聞いてみようと思う)。後者については次のように理由を説明している。

「すべての工程を一任するのには、一人ひとりの自律的な行動を促す意味もあります」と新志さん。記事を一人で担当することで当事者意識を持って取り組むことができ、また読者へきちんと届く記事を作るためにどんな工夫が必要なのか、全工程を見通しつつ考えられるからです。
「一通りのスキルを身につけた編集部員がそろえば、あるときは大きな裁判の取材記事を同時並行で作ったり、あるときは解説記事を量産したりと、読者のニーズにあわせて柔軟に対応することが可能になります。ネットの世界でチャンスをものにするには、ある程度のスピードで時流に乗ることも必要ですから」(新志さん)

 これは割とネットメディアでは「ありがち」な体制で、自分も基本的にネタ探しや企画から取材の有無、執筆まで担当するところがほとんどだったりするから、一長一短がある。「自律的な行動を促す」というのはその通りなのだけど、特定のジャンルや取材対象がだんだんと固定されていくというデメリットもある。ただ、『弁護士ドットコムニュース』ではそれほど取材記事に偏りがあるという印象はないので、編集部内での運営やコミュニケーションが上手くいっているのだろう。

 もうひとつ。「メディア運営のどこでお金が発生し、どう流れて自分の報酬につながっているのか、考えている編集者やライターは意外と少ないのではないか」という新志編集長の言葉はその通りで、「コスト感」を持って記事作りできない人はネットメディアには馴染めないと思う。一方で、編集者・ライターが「記事を出した後の成果」や「経営的視点」を持つことが良いことばかりではなく、「この案件はこの程度の労力でいいや」という発想になってコタツ記事ばかり出すといった感じになりがちだし、「営業」と「編集」がごっちゃになった記事を出しがちになる(この点はオウンドメディアの場合、若干「予算」の心配がクリティカルでなくなるのかもしれないけど)。そのあたりも、編集部のバランスが大事になってくる。

 あと、新志編集長の「もっと暴れたい」という言葉も心に残った。というか、「最近あんまり暴れてないな」と自省した。まぁ「暴れる」には熱量が要るし、タイミングもあるので四六時中「暴れる」ことは無理ゲーなのだけど(笑)。自分に限らず、ここのところのネットメディアは「お行儀がよくなっている」と感じることが多々あるので、隙をついてやってみようという気持ちを新たにした。


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