見出し画像

「東京こそが情報過疎」に思ったこと

 ブログ『ガ島通信』の頃からお世話になっている法政大学社会学部の藤代裕之先生がやってらっしゃるローカルジャーナリズム論、なかなか時間が取れずに参加できなかったのだけど、その場で「東京こそ情報過疎なのではないか?」という話題になったそうなので、思ったことをメモがわりに記しておきたい。

 東京生まれで10~18歳まで埼玉、それ以降も首都圏で生きている自分にとって、地方の社会問題に触れる機会と言われて真っ先に思いついたのがTBS系列の『噂の東京マガジン』でやっている「噂の現場」。あのコーナーでは各地の「困りごと」を掘り下げて取材していたし、イノシシなどの獣害などについて身近では感じられない切実な「問題」を知る機会になった。なので、東京の人間も地方の「ニュース」に触れる機会はそれなりにあったと言えるように思う。

 翻って、現在のメディア環境を見ると、各地方紙の記事がYahoo!ニュースに配信されているし、『みんなの経済新聞ネットワーク』も同様だ。スマートニュースにも各都道府県のニュースチャンネルがある。そのほかの地方のフリペなどもWebで展開しているケースもあり、情報を「取りに行く」という行動ができる人ならば望むものが手に入る環境といえるだろう。

 自分の場合、例えば2020年に入ってからだとアマビエのお菓子を作った富山の引綱香月堂の店主の取材記事を出したり(参照)、北海道・名寄の夜の様子を「天然ロックダウン」とツイートした国忠崇史士別市議のインタビュー記事(参照)を出したり、「ネットで話題」という切り口で配信して、どちらも想像以上に読まれた。これは、Twitterで数万レベルのRTや「いいね」があっても知らない人は知らないという証左という見方もできるのだけど、自分の感覚だと地方の情報を見つけて取材してコンテンツ化する「距離」や「コスト」が気にならなくなっていたりもする。

 あと、私がしつこく追っている福井・照恩寺の朝倉行宣住職による『テクノ法要』の記事を見てくださった北陸三県をカバーする情報誌『ZOUSS』の担当の方からご連絡を頂いて編集協力をさせて頂いたことがあった。もともと朝倉住職が『READYFOR』でクラウドファンディングをされていたのが目に留まったところからはじまったご縁だ。

 一方で、「興味のない人に関心をもってもらう」という観点でいえば、確かに藤代先生が指摘するようなことはあると思う。

インターネットでもYahoo!ニュースのトップに「東海道線が事故」といった首都圏の事故が掲載されており、地域に関連することによほど興味がなければ、ソーシャルメディアでもつながることはなく、ローカルで起きている面白い事象へのアンテナを失わせ「情報過疎」が生じてしまうメディア環境がありそうです。

 首都圏の場合、自宅から職場までの通勤通学で「地元」の意識がない人が多いという特殊性があるだろうし、現在「ウチ消費」という流れもあって、「住む街」への興味関心が下がっているような実感はある。例えばゴミ収集日が変わるということに、「え、そうなの?」となる人も多いだろうし、後からSNSで文句を投稿しても正直「1年前に言えよ」という話じゃん、と冷たく思うこともよくある。

 ここでメディアの話にすると、閣議後の大臣記者会見以上に、地方行政の取材のハードルが記者クラブ加盟社以外だと高い。自分は神奈川県・川崎市・横浜市の首長会見への参加を模索したことがあったが、記者クラブ側は「県or市の広報に言ってください」となり、県・市側は「記者クラブを通して(加盟して)」となって埒が明かない。なので、自ずと取材の優先順位が下がる。まぁ、本気になった時は各担当部署や議員クラスに片っ端から連絡して取材するので、「別にいいや」という感覚なのですけれどね。

 なので、藤代先生が指摘する下記のような問題については、「記者クラブ加盟社が頑張ってください」もしくは「自治体側が会見オープンにしてください」という話になる。

東京は人口の割にマスメディアの数が少ないため東京ローカルの情報は乏しく、関心を持ちにくい状況です(県紙なら掲載されている市や区政レベルの話題、自治体や議会情報とかも非常に少ない)。

 ちなみに。自分が住んでいる川崎市中原区だと、『武蔵小杉ブログ』があって、ここを見れば行政情報や再開発、店舗の開店・閉店などの情報は網羅されている。それより東急東横線で南だと『新横浜新聞』も同様の役割を果たしている。

 なので、「情報過疎」というのは受け手の興味関心が狭くなるようなメディアやプラットフォームがダメという話に帰結するように思うし、声の大きな「情弱」がSNS上に多すぎる問題ということにも繋がるような印象を持つ。前述のように、必ずしもメジャーではないネットメディアでも地方の情報を出すと関心を持ってもらえて「交わる」機会はあるわけだし、私も自分なりに「ローカルジャーナリズム」に取り組んでいきたいな~と思ってます。

 最後に。以前に自分が「ローカルジャーナリズム」に取り組んだ成果が下記の重冨達也川崎市議のインタビュー記事。

 そういえば、今年に入ってからもゴールデンウィークの元住吉商店街の様子を記事にしたりしていた。まぁ、だから「みんなやれるはずなのにやってないだけなんじゃないですか?」という感覚になっちゃいますね。



 

いいなと思ったら応援しよう!