狼と香辛料と農業②「新農法」とは?#25 台本
さて、前回の解説で、ヤレイの言った「新農法」とは、三圃式農法でも、ノーフォーク式農法でもないことが分かりました。
では、300年の間に何が起きたのか?
解説します。
新農法とは?
新農法とは「穀草式輪換農法」ではないか
パスロエ村に取り入れられる「新農法」の本命は、「穀草式輪換農法(こくそうしきりんかんのうほう)」ではないかと考察しました。
聞きなじみないかもしれませんね。ちょっと解説します。
■穀草式輪換農法とは?
休閑地→麦→麦→麦→牧草→牧草→牧草
7つを輪作して、牧草地では家畜を放牧させる。
図をよく見ると、三圃式にあった、共同所有の永久放牧地が無くなっている。これは何を意味するのか。
穀草式の導入によって、永久放牧地を利用しなくても農民が生活できるようになった。つまり、共同体に属さなくても営農できる農家が出現する。これを、独立自営農民(ヨーマン)と呼ぶ。
この農法の発明により、共同体が弱体化していく。
■世界史の教科書を補強するよ
ヨーマンって言葉はでてくるのに!なぜ穀草式輪換農法がでてこない?なぜ共同体の弱体化が出てこない?
ヨーマン=三圃式農法ではないよ!
共同体意識が強い三圃式農法で、ヨーマンは生きづらすぎる。
資本主義社会に必要である、囲い込み(エンクロージャー)を進めることができた背景として、穀草式での共同体の弱体化、そして信仰の形骸化がある。穀草式輪換農法を経たからこそ、エンクロージャーが成功したと考えた方がいい。
ちなみに、ノーフォーク式農法では、資本家に土地を囲い込みされた後だから、地主と借地経営者と農業労働者という関係になります。だから、ノーフォーク式ではヨーマンたちは労働者になるよ。
■穀草式農法でした!
以上を要約します。
三圃式農法の共同放牧地がなくなり、共同体が弱体化する。共同体の維持に、神話や宗教が使われていたのだが、穀草式農法に変化することで、独立自営農民(ヨーマン)が出現する。それにより、共同体意識が弱体化し、信仰が必要なくなる。
そうして、豊穣の神ホロの存在が必要なくなった。
これが、私の「新農法」仮説です!
くやしい、修正したい…
ローマをギリシャと言う大失態
私、二圃制農業の時代をずっと「ギリシャ」って言っていたんですよね。アホ丸出し…
正解は古代ローマです。
でも!間違えたのは理由があってですね~、
加用農法論では、ギリシャの「焼畑農業」から農法論の歴史が書いてあるのです。でも、焼畑までやると情報過多なので、podcastでは省きました。しかし、頭の中には「はじまり=ギリシャ」が残っていて、口が滑ってしまったわけです。
悔しいからnoteで書く。
日本は米の国?
「日本は米の国!」と言い切っていましたが、麦も古来から育てていたようですね。恥ずかしい…
ただ、メインは米と言って良いかもしれません。
補足説明
中世ヨーロッパっていつ?
中世ヨーロッパは、およそ西暦500年から1500年までを指す。ゲルマン民族大移動の時期である4世紀末から始まり、14世紀に文芸復興運動が起こるころまで、およそ1000年間にわたる。
囲い込みとは
ググっちゃった。
本源的蓄積=原始的蓄積とは?
農民が土地から追い出されて、二重な意味での自由(人格的な自由、生産手段からの自由)な労働者となる。この過程を本源的蓄積という。
これにより、農民層分解が発生、都市部に農民が流れた。
二重な意味での自由な労働者とは?
・人格的な自由:農奴は、職業選択の自由がない。
・生産手段からの自由:土地、機械、馬、全てなくなる。
組合について
『狼と香辛料』では、商業組合などが出てきますが、
商人の組合は、ギルドと呼ばれた。狼と香辛料に出てくる組合は、「ギルド」だと思う。
参考文献
【参考文献】
※動画中に不正確な参考文献の引用がありました。正しい表記は以下のとおりです。お詫びして訂正いたします。
支倉凍砂『狼と香辛料』電撃文庫,2006年.
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マンガはこちら
【参考文献】
加用信文『農法史序説』御茶の水書房,1996年.
鯖田豊之『肉食の思想』中公新書,1966年.
監督・脚本エルマンノ・オルミ『木靴の木』1978年公開.