見出し画像

新・<人工知能>開発ロマン Vol.4

執筆:ラボラトリオ研究員 杉山 彰

人工知能システムの開発における新しい定義

事実、コンピュータにおいては、我々人類は、初めにハードウェアを開発し、その後でソフトウェアのことを考え始めている。かつて絶対的なモノはハードウェアであったが、今日、絶対的なモノはソフトウェアに代わりつつある。そして、そのソフトウェアも、次の絶対的なモノに代わりつつある。ソフトウェアの次に登場する絶対的なモノとは何だろうか?

 人工知能システムとは、“人間のように自発的に考えることができる領域を確保したシステムである”という定義をここらで変更しない限り、どうも人工知能のシステム開発の新しい展開を望むことは難しいのではないか。では、どう定義を変えるのか?

 『人間は、その行動結果のすべてを考えたり創造したりはしてはいない』とする定義の設定が、まず、不可欠であるとしたい。

 この新定義を裏付ける事実として、以下のという文章を挙げたいと思う。

“医者は、目の前の患者をみながら、自らの頭のなかにある症例と比較しているわけで、名医といわれる人ほど頭脳のなかに蓄えられている症例は数多く、それへのランダムアクセスのスピードは速いといっていいだろう。時には難病であってよく分からないことがあると文献を調べたり、専門医に判断を仰いだりする。しかし、これも対象とする知識の量を広げているだけで、先に述べたプロセスの外にあるものではない”

 上記の医者は、少なくとも創造的な診断行為を主たる業務としてはいない。過去に蓄積した診断サンプルデータと、今の瞬間に診断している患者のデータとのパターンマッチング(置換)をしているにすぎない。該当する診断パターンマッチングデータが存在しないときには、新たな診断パターンマッチングデータを、自己ファイル以外の別システムの他人のファイルにアクセス(文献を調べたり、専門医に判断を仰いだり)しているにすぎない。

 腕のいい医者は、この新たな診断パターンマッチングを入手するノウハウが優れているのに加えて、診断サンプルパターンそのものの生成と蓄積と検索ノウハウが優れているに違いない。そしてさらに、分からないものは分からないという自覚と、分からないと自覚した時点で、次に為すべき行動が迅速にできるに違いない。

 人間は、その社会的な地位が高くなればなるほど、“分からない、知らない”という事実を認めることを嫌うモノである。分からないこと、知らないことを恥とする感情である。

 新しい人工知能システムは、前述の“医者”の在りようを機能化するだけで、どうやら今までとは異なる人工知能システムのプロトタイプが簡単にできてしまうのである。

 ちなみに人間のDNAの総データ量は約30億といわれている。しかし、実際にタンパク質を生成するために機能するDNAは、1億を切るといわれている。つまり、人間の頭脳からつま先の爪までを形作るために必要な遺伝子のデータ個数量は1億弱、わずか10MBである。今日、コンピュータを頻繁に使用している人間は、1GBぐらいのデータ量を何の苦もなく処理している。

 考えてみれば、我々人間は、DNAが肉体を形成するために駆使する遺伝子データ量をはるかに凌駕するカタチで、文化を形成するために駆使する文字データを自由に使いこなせるようになったのである。

(つづく)

・・・・・・・・・・

【杉山 彰(すぎやま あきら)プロフィール】

◎立命館大学 産業社会学部卒
 1974年、(株)タイムにコピーライターとして入社。
 以後(株)タイムに10年間勤務した後、杉山彰事務所を主宰。
 1990年、株式会社 JCN研究所を設立
 1993年、株式会社CSK関連会社 
 日本レジホンシステムズ(ナレッジモデリング株式会社の前身)と
 マーケティング顧問契約を締結
 ※この時期に、七沢先生との知遇を得て、現在に至る。
 1995年、松下電器産業(株)開発本部・映像音響情報研究所の
 コンセプトメーカーとして顧問契約(技術支援業務契約)を締結。
 2010年、株式会社 JCN研究所を休眠、現在に至る。

◎〈作成論文&レポート〉
 ・「マトリックス・マネージメント」
 ・「オープンマインド・ヒューマン・ネットワーキング」
 ・「コンピュータの中の日本語」
 ・「新・遺伝的アルゴリズム論」
 ・「知識社会におけるヒューマンネットワーキング経営の在り方」
 ・「人間と夢」 等

◎〈開発システム〉
 ・コンピュータにおける日本語処理機能としての
  カナ漢字置換装置・JCN〈愛(ai)〉
 ・置換アルゴリズムの応用システム「TAO/TIME認証システム」
 ・TAO時計装置

◎〈出願特許〉
 ・「カナ漢字自動置換システム」
 ・「新・遺伝的アルゴリズムによる、漢字混じり文章生成装置」
 ・「アナログ計時とディジタル計時と絶対時間を同時共時に
   計測表示できるTAO時計装置」
 ・「音符システムを活用した、新・中間言語アルゴリズム」
 ・「時間軸をキーデータとする、システム辞書の生成方法」
 ・「利用履歴データをID化した、新・ファイル管理システム」等

◎〈取得特許〉
 「TAO時計装置」(米国特許)、
 「TAO・TIME認証システム」(国際特許) 等

この記事は素晴らしい!面白い!と感じましたら、サポートをいただけますと幸いです。いただいたサポートはParoleの活動費に充てさせていただきます。